④超能力一家の真実
この回で最終回です。
それからしばらくして、波留は瑠偉斗に別れを告げた。
瑠偉斗は縋ることなく淡々と別れを受け入れた。今まで付き合ってきた元カノたちと同じように、超能力を持つ自分を受け入れてもらえなかったんなら仕方ないと、達観しているのだ。
だが、波留はそもそも瑠偉斗とその家族が超能力者という話を信じてはいなかった。ポンコツ超能力一家の作り話をして、相手に涙まで流させたのに、悪びれず飄々(ひょうひょう)としている瑠偉斗の人間性に嫌気がさしたことが別れを決めた理由だった。
思い起こせば、波留は瑠偉斗との日々の会話が微妙にかみ合わないとも感じていた。
瑠偉斗は決定的に相手を怒らせるような発言はないものの、会話中の相手の心情を推し量りながら会話する力が決定的に欠落して、時に相手を苛立たせるのだ。
いわゆるKY(空気読めない)ってこういう人のことを言うんだ、と波留は心の中で思った。
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波留と別れて時間を持て余している瑠偉斗は、大学近くのファミレスで独り過ごしながら呟いた。
「やっぱり俺も、父さんが母さんを選んだように、能力者の相手を見つけた方がいいのかもな…」
超能力は確かに遺伝だが、瑠偉斗の母が超能力を持っている理由は、もともと保谷家とは別の能力者の家系に生まれたからだ。
超能力一家は保谷家だけでなく、それなりの数がいるらしい。
世界中にいる能力を持った人たち中には、政治や経済の世界で影の実力者として暗躍したり、映画のように巨悪に立ち向かうヒーローになったりしている人もいるかもしれない。ただ、大部分が、世界を救い得る超能力を持ちながら、ひっそりと暮らしている。
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保谷家の秘密として、瑠偉斗が波留に話したことは全て本当の話だ。
では、なぜ死んだはずの姉は生きているのか?
それは姉が激突死したときに、瑠偉斗は能力を使って時間を戻したからだ。
あの日、姉の訃報を担任から聞いたのは、遠足のバスが出発してしばらくしてからだった。
その時点で、姉が激突死してから、瑠偉斗が戻せる30分をとっくに過ぎていた。だが瑠偉斗は諦めず、必死に時間を戻そうとした。
姉を生き返らせなければいけないという追い詰められた精神状態が、瑠偉斗の能力を開放したのだろう。そのときに能力が覚醒し、一日程度時間を戻せるようになったのだ。
そして一日時間を戻し、再び遠足の日の朝を迎え、瑠偉斗は水筒をしっかりと持って家を出たのだ。
だから姉は何事もなかったかのように、今も生きている。
時間が戻されたことによって、姉が禁断の瞬間移動の能力を使ったことはリセットされた。だから姉自身は自分が一度も能力を使ったことがないと今も思いこんでいる。
なぜ能力を使うと命に関わるのか、ばあちゃんがすでに亡くなってしまった現在、保谷家でも瑠偉斗しか知らないのである。いや、ばあちゃんだって知っていたかどうか、今となってはわからない。
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「あのときの父さんと母さん、かっこよかったな」
瑠偉斗は母がA国国王を狙撃犯から守ったときのことを思い出していた。
あのとき、父さんが未来予知で国王の暗殺計画を知った。誰かに通報したとしても相手にはされなかっただろうし、現場で自ら犯人を抑えても、きっと未来が変わってしまうだろうから、暴漢として父さんが逮捕されることになっただろう。
そこで、母親が銃弾を回避するために、狙撃される直前にテレパシーで銃弾を避けるように声をかけた。その結果、国王の命は助かったのだ。
あのとき国王が暗殺されていたら、A国と日本は戦争になっていたかもしれない。こうやって父も母もひっそりと世界平和に貢献している。その姿を、自分の親ながらかっこいいな、と瑠偉斗は思う。
自分も、能力を生かして社会にいつか貢献したいと思いながら、瑠偉斗は目の前に運ばれてきたチーズハンバーグを頬張る。
「美味い!もう一回食べたいから時間を戻そう」
姉の死をきっかけに類まれな能力を持つことになった瑠偉斗だが、こうやって今日も能力を浪費する。
失敗してもやり直しができる人間には危機感も成長意欲もないだろう。
だから一生懸命勉強をすることもないし、会話で相手の心情を推し量ろうと努力することもない。
戻した時間を足せば、もう同い年の人間の倍近い時間を生きているが、人間的に成熟しないのは、超能力を持った弊害かもしれない。
だが、そんな瑠偉斗と保谷一家が、後日、世界を救うことになるとは、このとき誰も想像できなかったであろう。
ただ、それはもうしばらくあとの話である。
<つづく?>
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