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第二王子からの告白を断った公爵令嬢は追放先で本物の愛と再会する

作者: 四条奏

 王国の第二王子、アレン・ユークリッド様の誕生日パーティには国中の大貴族が集い、お祝いムードで会場は包まれていた。


 そんな中、ソフィアは壇上へ上がるように言われて階段を登っている。壇上にはここ数ヶ月ソフィアを何かと気にかけていた本日の主役、アレン王子がいる。


 階段を登り切り、中央へと連れてこられたソフィアの前でアレン王子が(ひざまず)く。


「ああ、愛しのソフィア姫。貴女と出逢えたのはきっと神の思し召し。我が妃となって生涯をふたりで過ごそうではないか」


「ごめんなさい」


 ソフィアがアレン王子の告白を断ると、誰も予想していなかった......とは言い難い。


 ソフィアは金髪碧眼、博識であり幼い頃から婚約の話が途切れたことはない。今まで名だたる名家の令息が彼女に婚約を申し込み、散っていった。


 そんな彼女が今なお結婚していない理由は単純明白。全員をフってきたのである。


 しかしまさか、容姿端麗で剣豪を唸らせるほどの剣術を身につけているアレン王子をフるとは。


「なぜだ、俺は今まで散々貴女に尽くしてきた。贈り物も、父上殿のための裏工作もすべては貴女のために...なのになぜ!」


 激昂するアレン王子に対して、ソフィアは表情ひとつ変えることなく答える。


「理由は言えません。でも、私は王子と一緒になる気はないのです」


 ソフィアは王子にそれ以上何も言わずに壇上から下っていった。


「待て! ザカリウス公爵令嬢。貴様はこの俺を大勢の前で(はずかし)めた。貴様を国外追放の刑に処す! 騎士ども、さっさと連れて行け」


 ソフィアのまわりを屈強な王国騎士たちが囲み、ソフィアの華奢な両腕を鷲掴みにする。


「離して! お父様、助けてください! こんなの理不尽ですわ」


 どれだけソフィアが足掻いても騎士たちの力には勝てず、いつも味方をしてくれた優しい父親は黙ってソフィアが連れて行かれるのを見ていた。



 生まれてから18年、この歳になって2度目の挫折をソフィアは経験することとなった。


 この王国における国外追放はいわゆる流刑である。


 ソフィア自身、自分がどこに連れてこられたのかはわかっていない。


 乗ったこともないようなボロボロで、多量の荷物が積んである幌馬車(ほろばしゃ)で数時間。その後見たことないほど大きな船に乗せられ2日間。


 船の中でソフィアを見つけた男たちはソフィアに様々なことを求めた。


 大貴族の令嬢として皆に可愛がられてきたソフィアにとって、身分もわからない汚い男たちに辱めを受けたのは心に大きな傷をつける。


 もう生きる気力もない彼女は、荷下ろしされた漁港のすぐ近くで横たわっていた。


 住民たちからは冷ややかな視線を浴び、一部の男たちは彼女を見せ物を見るようないやらしい目で見てくる。


「私......ここで無様に死ぬのね」


 食べ物も飲み物も何も貰えない。あの時王子の告白を断るべきではなかったのだろう。


 いや、そもそも妥協できる相手はもっと前にもいたはずだ。


 好きな人と結婚をしたい。


 そう考えていた自分が馬鹿だったのだろう。


「ねえ君、こんなところでどうしたの?」


 ひとりの男がしゃがんでソフィアに話しかけてくる。その男は赤髪で、顔こそ整っているがお世辞にも綺麗な服装とは言えない。


 どうせこいつも自分を辱めようとしているに決まっている。


「放っておいてよ」


 言われて男は少し嬉しそうな顔をした。


「まだ喋る元気があるなら放っておけないな。立てるかい?」


「あっちに行ってください...」


 はぁ。ため息をついた男は諦めた顔をするとソフィアを持ち上げる。


「離してください! 誰か...助けて......」


 ああ。どうせあの時のように誰も助けてはくれない。


 だったらもうこの男に好きにされた方が生きながらえるチャンスがあるのか。


 したこともない農作業をさせられるかもしれない。売り飛ばされてどこかの貴族の奴隷となるかもしれない。はたまたいやらしい仕事に...。


 ソフィアの中で不安は膨らむばかり。



「ただいま戻りました」


「あらテレンス、おかえり...ってえ! 何その子拾ってきたの?!」


 恰幅のいいおばさんが、テレンスと呼ばれた男の方へと近寄ってくる。


「漁港前に横たわってまして。このドレス、破れてますがきっと大貴族のお嬢様です。国外追放されたのではと思ったらいたたまれなくて」


「あらあら、それは可哀想ね。汚れてるから先にお風呂に入れてあげて」


 おばさんが先に家の中へ入って行った。


 テレンス...どこかで聞いたことがある。もしかしたら悪い人ではないのかもしれない。


「あの...私自分で歩けますわ」


 ソフィアの言葉にテレンスは黙ってソフィアを降ろした。


「じゃあお風呂に入ってくれ。こっちだ」


 テレンスに手を引かれてお風呂場へと案内される。


 ソフィアの手をそっと優しく握るテレンスは、紳士のようだ。


 当然、ソフィアがいつもはいっていた公爵邸のお風呂と比べればもはや桶同然の代物。


 しかし湯船に浸かってしまえば天国のように気持ちがいい。傷は染みるが。


「お着替えはここに置いてるからね! サイズは大丈夫だと思うけど、ダメだったら言って」


 おばさんの元気な声が聞こえる。


「あ、ありがとうございます!」


 着替えを用意してもらって感謝したのなんて初めてかもしれない。ソフィアにとって、大貴族にとってそれは当たり前だったからだ。


 お風呂を出て、体を拭く。タオルの感触がゴワゴワとしていてお世辞にも気持ち良くはない。


 用意してもらった着替えは...ソフィアの慎ましい胸には少々大きい下着と、全体的に野暮ったい見た目の服。


 お父様の付き添いで狩りに行った時ですらもう少ししっかりした服でしたのに。


「おーい。飯作ってるから早く出てこい」


 テレンスの声。早く着替えないとっ?!


「返事ねえけど大丈夫か......すまない!!!」


 み、見られた。絶対に、絶対に見られた。誰からも隠し通してきた柔肌を、船の中でも守り切ったというのに、こんなところで。


 ソフィアは自分の顔が熱を帯びているのがすぐにわかった。


 いや、情けないわ。公爵令嬢たる者堂々としないと。ワンサイズ大きい服たちを着てて、顔の赤みが取れたことを確認して扉を開ける。


「お、おう。さっきはごめんな」


 その一言で、ソフィアは卒倒した。



 起きると、どうやらベッドに寝かされていたらしい。


「起きたか。さっきはすまない、覗く気はなかったんだが」


 テレンスが恥ずかしそうにしている。


「み、見ましたか」


「え、いや、そのー。少しだけな」


 ソフィアは布団の中へ潜った。


 何故かはわからない。でも彼に見られたことが異様なまでに恥ずかしいのだ。


「お腹空いてるだろ? 持ってきたから温かいうちに食べてくれよ」


「......わかりました」



 野菜まみれのシチューに固いパン、申し訳程度の薄い紅茶。今までソフィアが食べてきた料理からすれば不味いに決まっている。


 しかし、今の彼女にはすべてがおいしく感じられた。横でソフィアが食べているのを見ているテレンスも、満足げだ。


「そう言えば名前を言ってなかったな。俺はテレンス、お前は?」


「私はソフィア・ザカリウスです」


「ソフィア...ソフィアか。そうかそうか」


「え、ええ」


「すまないが、ソフィアがここに来た理由って」


 ソフィアは一瞬、テレンスに真実を言うべきか考える。いや助けてもらったのだ。せめて情報だけは言うべきか。


「第二王子の告白を断りましたの」


「え? それだけ??」


「ええ」


 テレンスの顔がどんどん険しくなる。


「ソフィアは俺のこと、覚えているか?」


 少し考えてみたが、ソフィアの頭の中にそれらしい人物は浮かんでこない。


「まあ無理もない。最後にソフィアと会ったのはもう12年も前の話だからな」


 ソフィアが6歳の時、そうだ初めて父親から婚約の話を持ち出された時だったかな。


 相手の名前はほとんど覚えてないけど確か一緒にピクニックに行って、その帰り道で告白されたのだ。


 赤髪で小太り、お世辞にもカッコいいとは言えなかったけどすごく嬉しくて、でも恥ずかしさがうわなって逃げ帰ったのを覚えている。


 それからその殿方には一度も会えていない。そして今まで、彼と結ばれるためにすべての婚約を断ってきたのだ。


「思い出してくれたかな? 君が6歳の時に婚約を申し込んだ王国の旧第一王子、テレンス・ユークリッドだよ」


 小太りでソフィアの扱いが少し雑だった王子は知らぬ間に紳士になっていた。


「テレンス様、どうしてこんなところに」


 ソフィアの目から自然と涙が溢れ落ちる。


「俺の父親は母の、王妃の不倫相手だった。それが国王にバレ、俺はソフィアに告白した1年後に廃位されてここに追放されたのだよ」


「もっと綺麗になったね、ソフィア」


「テレンス様こそ、私ずっと貴方を探していましたのに。どうして手紙の一通も出してくださりませんでしたの!」


 テレンスは言われて驚いた顔をする。


「俺はてっきり、ソフィアにフラれたのだとずっと思っていたのだ。だって貴女は、俺に告白されて逃げたじゃないか」


「違います...あれは嬉しくて、自分でもどうしたらいいのかわからなかったのです。今でもテレンス様を思う気持ちは変わりません」


 ふたりは抱き合い、お互いの愛を確かめ合う。


「ソフィア、貴女のことが大好きだ。私と結婚してくれないか」


「はい! 私でよければ喜んで」





 あれから数年、ソフィアとテレンスは楽しい生活を送っていた。


「リン! 危ないから台所には行かないで」


 ソフィアは腕の中のレンをあやしながら娘のリンに注意をする。


「ただいま! ソフィア、君のご両親から大きな荷物と手紙が届いているよ」


 テレンスと結婚したことを一応両親に報告してからというもの、何かとお父様はお金とか日用品を送ってくれている。


『拝啓ソフィアへ。息災ですか? 王国ではアレン王の失政が続き、父は前よりも仕事が格段に増えました。民衆の反乱で屋敷の物を盗られるのは癪なので、ソフィアにあげます。情勢が落ち着いたら家にも遊びに来てください』


 なんだかんだでお父様は優しい。


 いっそのこと、お父様たちにこっちに住むよう言ってみようかしら。



 ソフィアは追放された土地で、最愛のテレンスたちと楽しく暮らしましたとさ。


初めましての方ははじめまして、そうでない方はお久しぶりです。四条です。


追放もの?を書くのは初めてでテンションに任せて書きましたので、皆様の想像に頼る点も少なからずあると思いますが、楽しんでいただけたなら幸いです。


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