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第25話 変わってきた魔物災害

 勇者塔に帰って5日後、いつものように魔物災害に備えての出動が命じられる。魔王探しの旅から帰ってきた勇者たちに休息はない、と思っていた、今までは。

「最近多いんだよなぁ、魔物災害があるかもしれないから行ってくれっていう要請が」

 勇者塔の広間でマッケンローが小さくぼやく。要請があっても実際に起こることは少ないらしい。

「前は魔物災害が起こると言われて行くとほとんどの場合て魔物災害が起こった。でも最近はほとんどないし、規模も小さいんだ。お前たちが魔王になんかしたのかと思ってた」

 私たちは顔を見合わせる。リックの顔が青白くなり、テオの顔が赤くなる。私の顔は多分青白いはずだ。頭から血の気がひいていくのがわかったから。

 ハリーとは帰って3日目の夜に少し話をした。彼も忙しいようでゆっくりと時間を取るのが難しかったようだ。その時に王への謁見もお願いしてある。私たち勇者三人と王で話をしたいのだと。

 それから、すぐにこの魔物災害への援助要請。魔物災害があれば勇者とて必ず生きて帰って来れるか分からない。王が何か勘付いて仕掛けてきているのか。

 それにしても規模の小さい魔物災害が多発しているという状態も引っかかる。

 私は顔を青くしながらも頭を働かせる。

 マッケンローが私たち三人の異変に気づく。

「最近の魔物災害も少し変わってきているが、お前たちのその反応もおかしいぞ。魔王討伐の旅で何があったか?」

 真剣なマッケンローの顔。やけに顔の傷が目に入ってくる。この傷も、もしかしたら王が魔物災害を引き起こしたせいかもしれない。頭にそんなことが浮かぶとマッケンローに申し訳なさを感じる。もちろん、私のせいではないのだけど、それでも感じてしまう。

「なんでもないです」

 テオの声が低い。何かあったことを隠そうとはしていない。隠すつもりならいつも通りのテオを演じるはずだ。

「言いたくない。もしくは言えないってことか。まぁ、聞かねーよ。ただそんなんで大丈夫か、お前ら」

 私は軽く頷く。リックは真っ青な顔のまま頷くことさえ出来なかった。テオが「もちろん」といい、リックに声をかける。

「マッケンローもいるし、残っててもいいけど、どうする」

 リックがゆっくりと目だけを動かし、テオを見た。テオの顔は平静さを取り戻している。怒るでもなく、笑うでもなく、無表情な顔は凄みがある。

「行く」

 リックはそれだけ言い黙り込んだ。

 マッケンローが静寂を叩き破る。

「何があったか知らんが、行くぞー」

 大きな声だった。

 私たちは立ち上がり勇者塔の広間を後にする。


 訪れるのは王都の西側に位置する領地。海に面したマカミヤ領の中でも内陸部、キリキ(ざん)(ふもと)のキーリオという村だ。そう大きくはない。最初の旅で一度通った場所だけど、人がみんな大らかで朗らかで明るい村だった。キリキ山には魔物も多く棲息しているけれど、奇跡的にその村に魔物災害が起こったことはなかった。今までは不思議に思っていたこの現象も王がコンロトールしているとわかれば、何か意図があるのだろうと考えてしまう。そして、今回そんな一度も被害のないキーリオに魔物災害を起こす理由は何だろう。何か、法則があればいいのに。

 今まで魔物災害について、多くの学者が研究してきた。学者達は法則を導き出し、人類が魔物災害に遭わないように予防したり対策を立てたりしていた。しかし、研究者が法則を見つけそうになると必ずと言っていいほどに例外が起こる。それの繰り返しだった。王によってコントロールされているのならば当然のことだ。法則を知った王が例外的に魔物災害を起こすというのを繰り返してきたのだから。

 私はキーリオに向かう馬上で手綱を握る手に力を入れる。馬で駆ければ大体3日でキーリオまで行ける予定だ。魔物災害はそれまで起きないだろうか?実行犯は誰なんだろう?今、魔物災害を起こしているのがハリーだったら?もう立太子も終り、王としての教育も始まって数年が経つ。

(王より先にハリーに話をした方がいいだろうか?)

 私は馬上で一人思考をグルグルと回していた。

 キーリオまでの途中休憩の野営、だれも何も多くを語らなかった。マッケンローは何か大変なことが起こったのだろうと予想をつけているようだ。私たちの雰囲気が尋常じゃないから。ただ、彼もまた口を(つぐ)んでいる。

 キーリオまでの道のりは私たちが出会って旅をした中で一番静かで一番緊迫していた。

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