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第16話 ハーミヤ領北門まで帰還す

 私たち三人はウィルス王国に帰還する。

 結局、どうやって王と秘密裏に話をするのか、答えは出なかった。誰が切り出すのか。魔王に会ったことを話すのか。魔王が魔の存在ではないことを伝えるのか。自国に帰る道すがら話をしたけれど、何も答えは出なかった。最終的にハリーを通して王との謁見を申し込むという無難な案だけが決定事項となった。話の内容はその時考えることにした。

 話をする時はなるべく三人で話をする。テオだけだと熱くなる可能性があるし、私だけだと要領を得ないかもしれない。リックだけだと言いくるめられて終わるかもしれない。ハリーにお願いして三人で王と謁見できるように計らってもらう予定だ。

 ハリーは私の頼みに弱い。そこに漬け込む予定だ。

 私の魔王化に関して、話題に上ったけれど今は置いておくことになった。魔物災害の件が落ち着くまでは考えても仕方ないと三人で結論つけた。


 帰路について十日目の太陽が真上にいる頃、私たちはウィルス王国ハーミヤ領の北門に到着した。

 魔王に出会った魔の森は大陸の北側に位置する。大陸の北側は、魔の森と古代遺跡とホー帝国がある。古代遺跡を挟んで東からホー帝国、古代遺跡、魔の森となる。

 ウィルス王国から魔の森へのルートは古代遺跡への入り口であるハーミヤ領北門である。もちろん帰りもハーミヤ領北門を通る必要がある。

 三メートルはありそうなレンガ作りの壁が左右に広がる。国境に沿って壁が築かれている。レンガの壁に大きな鉄製の観音開きの門が設置されている。門にはハーミヤ領の紋章が大きく描かれていた。鉄を流し込んで作られたその紋章は少し浮き出ている。

「何度見ても、不思議。門の上に門をモチーフにした紋章って変な感じよね」

 ハーミヤ領には他国のものも入ってくる。つまり、ハーミヤ領はウィルス王国の入り口としての機能を要している領地になる。そんな領地の紋章は門だ。そこに古代からあるとされる百合に似た花「リリア」と蔦性の植物の「アイリ」があしらわれている。どちらの植物も魔石を持つ植物だ。植物の中でも魔石を持つものは少ない。リリアは球根部分が魔石になっていて、アイリはたまに種の中に魔石を紛れ込ませる。不思議な植物。リリアの魔石は見た事があるけれど、アイリの魔石はまだ見たことがない。小さな小さな宝石のようにキラキラとしているらしい。

 私たちが門に近づくと、大きな鉄製の門の下に人が通れるほどの小さな門が見えてくる。何人か、旅人が古代遺跡に続く道から門を目指しているのが見える。門から人が出て来る様子はなかった。太陽が高い位置に移動した今、古代遺跡に向けて出発する人はあまりいないのだ。今から古代遺跡を目指せば帰りは必ず日が沈む。冒険者以外で日の沈んだ森を歩くような人はいない。

 私たちも門へ続く道に合流する。

 横道から出てきた私たちを古代遺跡の観光帰りの人たちはジロジロと見てくる。

「ちょっと、勇者様たちじゃない」

「うぉ、ギプソフィラ様が美しい」

「キャー、初の生テオバルト様よ、素敵」

「ちょっと、あんたテオバルト様派だったの?通りで私のセドリック様の話を聞き流してた訳だわ。ふふん、私は生セドリック様は初じゃないんだからね」

「何よ、いいでしょ!あのスマートな感じ。テオバルト様、やっぱり最高」

 古代遺跡の観光をしていた若い女の子たちがテオとリックの話題で盛り上がっている。たぶん、本人たちは私たちまでその話が聞こえてるとは思ってないんだろう。

「テオもリックもモテるね」

 私が揶揄うように二人をみると、リックは当然のような顔をして、テオは少し顔を赤らめている。

(こう言うところが、リックは王族でテオが平民なんだと感じるところだよね。あんなに自信に満ちてるのに、テオはアイドルみたいに騒がれるのが苦手だよね)

「フィラも美しいって言われてたよ」

 テオが苦し紛れのように、リックが私に気を使うように、同時に同じことを言う。私は二人の心情が違うのに発する言葉が同じことに笑いが込み上げる。

 私の笑いに釣られるように二人も笑顔になる。

 三人は笑いながらハーミヤ領の北門の前にできていた行列に並んだ。

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