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第12話 使命

 和やかな雰囲気。だけど、本当の本題はそんなことじゃない。それをみんな分かっていた。

 笑い声が自然に収まり、静寂が訪れる。

 森の中、木々が風に吹かれる音や動物の鳴き声が聞こえてくる。決して静かな場所ではない。ただ、私たち三人には遠いところから聞こえてくる音のように感じていた。

 口火を切ったのは、珍しくリックだった。

「なぁ。フィラ魔王になるのか」

 ストレートな問いだった。

 洞窟での魔王との対峙。魔王との対話。情報量が多すぎた。でも、結局魔王、いや、ロビンが一番言いたかったのは多分、私への次代魔王勧誘。

 私は何も答えられない。なぜかテオも喋らない。

「色々魔王が言ってたし、魔物災害が天災ではなく人災だったことも、王をどうするのか、考えないといけない。でも、一番はフィラの魔王化だと思う」

 珍しくリックが話を進めようとした。

「いや、それは違うよ。一番は王が魔物災害を引き起こしていたことだ。フィラの魔王化は後でいいんだ。ロビンはフィラを無理やり魔王にしたりしないよ」

 リックはテオの反論に体を震わせた。

「でも、フィラが魔王になるかどうか、考える必要はあるだろう。フィラが孤独になるから支えてほしいって言われたし……」

 リックの声がどんどんと小さくなっていく。最後は私をチラッと見て、頭をテーブルにつけてしまった。

「僕の見解を言うよ。フィラもリックも、フィラの魔王化に選択権があるように思ってるみたいだけど、たぶんないんだ。フィラの魔王化は決定事項だと思う。魔王になるまでの間に人間として勇者として何ができるのか、どんな経験をするのか、魔王になると普通の人間としての暮らしはできなくなるから十分に楽しんでねっていうロビンの優しさなんだと思うんだよ」

 なんとなく私も感じていた。次代の魔王にと言われ、断れるわけがない。私が断れば他の誰かが魔王になる必要がある。その誰かはいつ現れるのかわからない。見つからないままにロビンが消滅してしまったら、この世界も消えてなくなることになる。

「多分だけど、フィラは魔王になるため、この世界に生まれてきたのかもしれない。僕はね、生まれる前に神に会ってるんだ。それで勇者になりなさい。この世界を救ってほしいと言われてきたんだ。この世界を救うために魔王を倒そうとしてたけど、どうやら、魔王は神に近い存在で魔の存在じゃなかった。この世界を救うって言うのはもしかしたら王を倒すことなのかもしれない」

 二人は思わず、テオを見た。テオの水色の目は今まで見たことがないほど真剣だ。

 生まれる前に神に会っていたとは言っていたけど、そんなことを言われていたとは知らなかった。私の場合はただ肉体を持たず何もない場所で長いこと浮遊していたところに「もう一度生きて、愛を感じたいか?」と聞かれて頷いたらフローラルママのお腹の中にいた。浮遊していた時間は孤独だった。たくさんの人間の魂が溶けて混ざり合い、ゆっくりと生まれ出ていくのを横目に見ていた。なぜか私の自我だけは無くならなくて、加賀美かすみのままそこにいた。

 ロビンはその経験を知っている。だから、私なら千年この世界を見守れると言ったんだろう。

 リックがガタンと椅子を倒しながら立ち上がった。

「王を倒すって言ったのか?」

 テオも私もリックを見上げる。リックは顔を俯けている。表情が下から見えそうで見えない。

「なぁ、テオバルト、今、王を倒すと言ったか?」

 固い声だ。リックがテオを正式な名前で呼ぶ。これはかなり怒っている。

「あぁ、言ったよ。セドリック、君も聞いただろう。各国の王が魔物災害を起こしているのだと」

 テオもリックを煽るように正式な名前で呼ぶ。そして、「君」と言った。テオは怒っているわけではない。でも、リックを挑発しているように見える。

 私はどうするか。

 こんな時、私は何も言えなくなる。ただ、テオとリックの顔を交互に見ただけだ。

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