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わたしたち家族の究極の嫌がらせ

「先日、閣議にて皇都での不正や政策の弱点などを申し上げました。それらも鑑みれば、この皇国の将来はけっして安泰ではありません。怖れながら、皇帝陛下からしてそれらを知らぬふりをされています。臣下に好き放題させ、ともに甘い蜜を吸われています。陛下を始め、ここにいらっしゃる方々はこの国の民に生かされているのです。この国の民のお蔭で生活が出来ているのです。彼らがいるからこそ、ハゲやらデブやら白髪やらのことなどを、呑気に心配したり悩んだり出来るのです。わたしの推測では、近い将来反乱が起こります。軍事力もさほどなく、平和ボケしている皇国軍にその反乱を抑える力はございません。そうなれば、まず各領地の領主が殺されます。それから、皇都にいる官僚や上流階級の人たちです。最終的には、皇帝陛下と皇妃殿下です。民衆の前に引き摺りだされ、断頭台で首をバッサリです」


 お父様は、手で首を切り落とすジャスチャーをした。


 皇帝陛下と皇妃殿下の顔ったらもう。


 お父様、究極すぎるわ。


「それをかねてより憂慮されているのが皇太子殿下です。だからこそ、メグを連れて自ら各領地をまわって調査をされたのです」


 つい先程首を切り落とすジャスチャーをしたそのおなじ手が、皇太子殿下を示した。


「殿下ご自身はつまらぬ権力争いの中で罠を仕掛けられ、孤立無援の中で必死に闘っていらっしゃいます。それもひとえに、この皇国と皇国の民の将来を憂えてのこと。こういう思いは、みずからの欲や地位や栄華のことしかかんがえておらぬ者とはまったく異なりますな」


 お父様の嫌がらせ発言は、まだまだ続く。


「陛下、わたくしめの非礼をどうかお許しください。此度、宰相閣下より機会を与えられました故、僭越ながら娘を取り巻く現状を語らせていただきました。この現状にどう対処されるかは、陛下のお心一つでございます。そうそう、参考になるかどうかはわかりませんが、わたしの祖国モンターレ王国の現状は把握されておいででしょう?わたしの父は、皇太子殿下とおなじような信念の持ち主でした。それを見ているわたしも同様です。それが為に、父やわたしたちは命を狙われ、最終的には追いだされました。そして、とってかわったのが欲と権力に魅入られた連中です。連中の末路がどうなっているか……。もう間もなく、現国王は断頭台に引きずり出されるでしょうな。皇帝陛下には、モンターレ王国の轍を踏まぬよう熟考されることを願います」


 お父様は言い終えると着席した。


 だれもがお父様の話を理解しているとはかぎらない。


 だけど、彼らもわたしたちの祖国モンターレ王国の現状は知っているはず。そこではいま、各地で反乱が起こっていて反乱軍が王都に攻め込んでいるのである。


 大広間内は、静寂に包まれた。


 最初のハゲやら白髪やらの話題のときの雰囲気とは、まったく正反対の雰囲気がヒタヒタと歩きまわっている。


「あらまぁ……」


 静寂と微妙な雰囲気を打ち破ったのは、当然悪女であり悪妻でもあるわたしである。


 つぎはこのわたしが、お父様とお兄様たちから引き継いでとどめの嫌がらせを行うつもり。


「田舎者の家族の戯言ですが、心当たりがありすぎてぐうの音も出ないようですね」


 居並ぶ人たちに視線を走らせてみた。ほとんどの人が視線を合わせようとしなかった。


 が、視線を合わせてきた人もいる。


「第四皇子、いかがですか?あなたは、わたしと組んで皇太子として権勢をふるいたがっていますよね?こんなチャンスはありませんよ。父や兄たちの予言ともとれる推測をきき、だれもが怖がっています。皇太子殿下を殺すなり失脚させるなりして、その座に即位すればいいのです。競争相手はいませんからね。わたしにいい思いをさせてくれるんでしょう?先日、わたしを呼びつけてそう約束してくれましたよね?」


 悪女に「ヒ・ミ・ツ」の話は厳禁なのよ。だって、羽毛よりも口が軽いはずだから。わたしの口は、ラウラのお尻より軽いはずなんですもの。


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