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「白髪お悩み組」にも暴言を!

「あの、皇太子妃殿下。白髪は?白髪はいかがでしょう?わたしも妻も、長年白髪に悩んでおりまして」


 すこし離れた席から、ゴマ塩頭が尋ねてきた。


 名前は知らないけれど、たしか何とか大臣だったかと思う。


 ふふふっ。カモがやって来たわ。


 思わず、ほくそ笑んでしまう。


「白髪?」


 ことさら大きな声できき返し、その大臣を不躾に見つめた。


「ハゲと同じよ。心がけ一つで改善出来る可能性はあるわ」


 嫌味ったらしい笑みとともに言葉を叩きつけてやる。


「予防が大切ね。頭皮を陽の光から守ってあげて。睡眠不足や夜更かしも厳禁。生活習慣を見直すこと。食生活もそう。食べた方がいい食材、避けないといけない食材があるんだから。そういう食材をバランスよく摂ることが大切よ。あとはストレスね。ストレスもまた、天敵だから。奥様だったら、妊娠や出産が必要な栄養素を奪ったりするし、妊娠や出産の環境の変化でストレスを増加させちゃう。だけど、これは仕方がないわね。もちろん、遺伝であったり年齢のこともあるんだけど。でもね、自分でどうにか出来ることはたくさんあるわ。ハゲ同様諦めちゃダメってことかしら」


 白髪のことで悩んでいそうな人たちを睨みつけながら言いきった。


 白髪の持ち主たちは、わたしの睨みに堪えかねたらしい。いずれも顔を上気させて怒り狂っている。


「そうか。そういうことか」

「くそっ!もっとはやく知るべきだった」

「いや、まだまだいける」


 彼らは、口々に何かつぶやいている。残念ながら、なんて言っているかはわからなかったけれど。


「そんなに口惜しかったら、あなたたちにもメモを作成して渡すわ。覚悟しておいて」


 いつの間にか言葉がかなりざっくばらんになっているけれど、この方が無礼だから効果的よね。


 もっとも、丁寧すぎる言葉でも慇懃無礼って感じでクールかもしれないけど。


 わたしの嫌がらせ予告に、「白髪お悩み組」がハッとわたしを見た。


 その彼らの視線がまた、屈辱にまみれまくっているように見える。


「待っています」

「わたしも」

「妻とともに待っています」


 彼らは、わたしの嫌味を綴ったメモ書きを受け取ろうというのね。


 けなげだわ。


 だったら、わたしもはりきって書こうじゃないの。


 そう決意しつつ、彼らに鷹揚にうなずいて見せた。


「そういえば、宰相閣下は何かおっしゃっていましたよね?」


 ふと思い出したように尋ねてみた。


 それから、「あなたが尋ねたことなんて、別にどうでもいいんですけどね」って思っていることを示す為に目玉をぐるりと回してみた。


「でもまあ、どうせわたしのことですよね?わたしのことだったら、あとでもいいですわ」


 さすがに宰相にフランクな喋り方はしたくない。だから、ちゃんと喋ることにした。


「わたしのことより、わたしの家族が「せっかく招いてくれたので、是非ともお役に立ちたい」と申しております。先にわたしの家族に、発言の機会をいただけますか?」

「もちろん。先日もいろいろとご意見やご指摘をいただいて恐縮しております」


 宰相に許可をもらってみた。すると、彼は無意識に違いないわね。頭に手をあててからハッとした。


「そうでした。むやみに触ってはいけませんな」

「ええ、そうです。せっかく産毛がはえかけているんですから」


 最高すぎだわ。言葉の端々に嫌味を入れるなんて、わたしもかなりの悪女よね。


「お父様、お兄様、どうぞ」


 わたしは小休止よ。


 わたしなんかよりいろんな意味で凄い三人が、いよいよやってくれるわよ。


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