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「頭の毛がかなり残念な人」たちへ暴言を吐きましょう

「みなさんも知っての通り、わたしはまだ若かった頃に若ハゲと自覚して以来、ずっとずっといろいろ試していたのです。が、どれも成果が上がらず……。自分の中で、『もう諦めよう。時間と労力のムダだ』と何度も言いきかせておりました。が、なかなか踏ん切りがつかなかったのです」

「宰相、おおいにわかりますぞ」

「さよう。こういうことは、頭で理解できても心が受け付けぬ」

「たしかに。その通りですな」


 怒りで顔を真っ赤にしている宰相の演説に、彼同様「頭の毛がかなり残念」な人たちが声を上げた。


 まぁ……。


 たしかに、「かなり残念」な頭をさらしている人たちは少なくない。よくよく見ると、ウィッグでごまかしている人もいる。


 これは、好機ね。


「皆様、きいて下さい」


「かなり残念」な頭のことで怒りの声が上がり続ける中、居丈高にさえぎった。


 上から目線で、ハゲ頭やウィッグでごまかしている頭を見回してやる。


「あなたたちは、根性なしです。意気地なしです。もっと強い心と信念を持って下さい。たかだか毛、でしょう?この皇国を動かしていると言っても過言ではないあなたたちが、自分の頭の毛くらいどうにか出来なくってどうするのです?毛、くらいなんとでもなります。心一つです。意地です。たしかに、何をやってもダメな場合もあります。ですが、あなたたちは何もしないまま降参しています。諦めています。それがダメなのです。どうせドン底まで失われているのです。これ以上、失うものはありません。勇気を持って挑むのです。いいですね?諦めるな、です。死力を尽くしてハゲに立ち向かって下さい。それでもダメなとき、そのときはきっぱり諦めてハゲをさらしてハゲ生活を謳歌すればいいのです。ハゲは、けっしておかしくありません。みっともなくありません。むしろ、クールです。テカテカ具合によったら、明るく感じられます。神がかっている印象を与えることが出来ます。ねっ、それもけっして悪くないでしょう?というわけで、ハゲにきくレシピと頭皮マッサージ方法を記した用紙をお配りします。カミラ、これをお願いね」


 一方的に誹謗中傷しまくったので、また酸欠でクラクラしてきた。それでも、準備しておいた用紙の束を近づいて来たカミラの胸元に叩きつけた。


「希望者に渡してくれるかしら」


 第三者がいるときには、カミラとベルタに対して横暴な女主人のふりをしているのである。


「は、はい、妃殿下」


 きっとカミラは、いまのわたしの演説に感動しているわよ。


 カミラだけじゃない。ベルタや隣にいる第三皇子、その向こうにいる皇太子殿下も、いまのわたしの宰相たちへの「いわれなき誹謗中傷」を感心してくれているはず。


 そして、お父様とお兄様たちも。


 ちらりとお父様たちに視線を送ってみた。


 三人とも、満面の笑みで親指を立てている。


「グッジョブ!」


 それは、わたしたち家族の中で最高を示すジェスチャーなのである。


 やったわ。三人に褒めてもらえた。


 酸欠になりかけた甲斐があったわ。


 これだけハゲについて言及してバカにしまくったのだから、ここにいる「頭の毛がかなり残念」な人たちはもちろんのこと、それ以外の人たちも不愉快にさせたはずよ。


 というよりかは、本筋から脱線しまくっていることも気を悪くさせているはずよね。


「わたしにもくれ」

「おれにも」

「こちらもだ」


 彼らは「頭の毛がかなり残念」であっても、公の場で過剰に反応したり取り乱したりということはないのね。


 彼らは、わたしからの「ほっといてくれよ。いらんお世話だ」的なことばかりを記した用紙を、カミラから受け取っている。


 よしよし。あの用紙も、手書きするのが大変だった。

 

 確実に努力は実ったみたいね。

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