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褒められた

 わたしが理解するのに苦しんでいると、右隣に座っている第三皇子がプッとふきだした。その向こう側に座っている皇太子殿下も、手で口許を隠して笑いを必死で噛み殺している。


「おお、メグよ。わたしは鼻が高いよ。おまえがこんなに褒められるなどとは」


 左隣に座っているお父様が、感動のあまりささやいてきた。


 ちょっ……。


 お、お父様、感動する論点がズレまくってはいませんか?


 そうツッコみたかったけど、褒められていることにかわりはない。それに、これまでこんな公の場で褒められるなんてこともなかった。


 お父様が感動したりうれしくなってくれているのなら、たとえその内容が微妙すぎてもよしとしましょう。


「そこで、今回は皇太子妃殿下のお気持ちをおきかせいただきたいと、皇太子妃殿下もお招きしました。そして、いまだに会わせていただけなかった皇太子妃殿下のご家族もお招きしております。いまの説明で、皇太子妃殿下の悲惨な現状をご家族の方々も理解いただいたかと。是非とも、ご家族のご意見やお気持ちもきかせていただきたいものです」


 宰相は、わたしたち四人に目顔で挨拶をしてから着席した。


 開け放している大窓から、さわやかな風が入ってくる。もしかして、その風は彼の赤ちゃんの産毛みたいな毛をそよがせているかしら?


 そこまでになったら、彼もうれしいでしょうね。


 いいえ。うれしいにきまっているわ。


 宰相の赤ちゃんの産毛みたいな毛が気になって、集中出来なかった。だけど、彼が言ったことはだいたい予想がつく。 


 全員が、わたしに注目している。


 みんなは、わたしの発言を待っているのかしら?

 それとも、ヒステリックにラウラを誹謗中傷したり、皇太子殿下のことを責めたり恨み言を言い立てたりするのを期待しているのかしらね。


 ふふん。そんなみんなの期待を裏切るのが、悪女たるわたしの使命の一つよ。


 とりあえず、席を立ってみた。


 いよいよ発言するのか、というような期待に満ちたみんなの瞳を一つ一つ見つめてゆく。


 第四皇子こと「夢みるバカ」などは、わたしが皇太子殿下を罵倒した後に彼に懸想しているような素振りをみせるかと勘違いしているみたい。


 その証拠に、第四皇子かれがウインクしてきた。

 それとも、片目にゴミでも入ったのかしら?


 でもまぁウインクだと判断し、思いっきりセクシーにウインクを返しておいた。しかも、三度もである。


「メグ、どうした?目にゴミでも入ったのか?急に顔面神経痛のような症状が出て……ううっ、い、痛い……」


 すぐ隣で第三皇子がささやいてきたから、「静かにした方がいいわよ」という意味をこめて彼の肩をそっと握っておいた。


「お集りの皆様、まずはこのような神聖かつ厳粛な集まりの場にお招きいただきありがとうございます」


 まずは、軽く嫌味を一発。


「宰相閣下、発言の機会をお与えいただいて感謝いたしますわ」


 宰相の赤ちゃんの産毛だらけの頭を見つめつつ、二発目の嫌味を放つ。


 さぁ、これからよ。


「宰相閣下、その頭のですが……。赤ちゃんの産毛みたいな毛が増えていませんか?それも、もともとあった産毛より色が濃いですよね?」


 ほら、どうよ。これだけの人たちの前での個人攻撃よ。わたし、今日も最高だわ。


「あ?」


 宰相は、真っ赤になりながら手で自分の頭を触りはじめた。


「ダメですよ、そんな触り方。マッサージならともかく、むやみやたらに触れると毛根が死んでしまいます」


 わたしってば、調子がよすぎて怖いくらい。


 ほらほら、宰相の顔がますます真っ赤になったわ。


「そうなのです。個人的なことなので、皇太子妃殿下にはこの後お礼を申しあげたかったのですが……。その話題になりましたので、この場をお借りしてお礼申し上げます」


 彼は、怒りに震えながらも自分の気持をごまかす発言でもって返して来た。


「皇太子妃殿下のお勧めのレシピで食事をし、こんなにはえてまいりました。しかも、濃い色の毛がです」

「そう言われてみれば、毛が増えたような気がしますな」

「さよう。じゃっかん色も濃い」


 近くの席の官僚たちの指摘に、宰相はさらに顔を真っ赤にした。


 いい恥さらしよね。


 ちがう意味で、宰相かれをさらし者にしてやったわ。



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