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メグは面白い人?

 大広間に大勢の官僚や貴族が集まっている。


 皇帝陛下や皇妃殿下や皇太子殿下も出席している中で、だれかがやり玉にあげられるわけである。


 もちろん、わたしは初参加。こんな楽しそうな会の存在じたい知らなかった。


 第三皇子に教えてもらい、はじめてその存在を知ったくらいである。


 皇太子殿下とお父様とお兄様たち、もちろん第三皇子も参加している。ベルタとカミラは、わたしの侍女として大広間の壁際で他の侍女たちといっしょに控えている。


 ラウラもいる。彼女は、皇太子殿下の横でおとなしく座っている。


 訂正。口は開いていないけれど、目がすごいことになっている。つまり、親の仇でもあるようにこの場にいる全員を睨みつけている。


 目は口程に物を言う、ってやつね。


 彼女に睨まれて視線をそらしたり、怖気づいている男性が何人いることか。


 人間ウオッチングをしている内に、皇帝陛下と皇妃殿下が奥の間から現れて玉座についた。


 さあ、いよいよね。


 どんな面白いことがはじまるのかしら。


 って期待していたのに、いざはじまってみると「何これ?」って驚いてしまった。


 ただ単純に文句や悪口の言い合いをしているだけである。しかも、永遠に。


 噂通りの内容に、呆れてしまった。


「こんなつまらないものをしょっちゅうやっているんですか?いったい何の為に?意味があるんですか?」


 隣に座っている第三皇子に、思わず尋ねてしまった。


「きみの質問の答えは、だれかが思いついたら行う、だ。そんなにしょっちゅうではない。それから、何の為でもない。さらには、意味はまったくない。つまり、だれかが思いついて暇つぶしにストレス発散、もしくはあらゆる感情のはけ口に行う、というわけだ」


 第三皇子は、ささやいてから軽く肩をすくめた。


 個人攻撃にはじまり、各機関が不甲斐ないとかヤル気がないとか、どうでもいいことを言い合っている。


 そしてついに、宰相がラウラのことを攻撃しはじめた。


 いえ、訂正。ラウラをダシに皇太子殿下に攻撃をしかけた。


 ラウラが出自を偽っていることや彼女がいろんな男性といい仲であることを知っているにもかかわらず、それにゾッコンになって正妃を蔑ろにした挙句に離縁、最終的にはそのラウラを正妃に迎えようとしている、というようなことを挙げ連ねている。


 ラウラがこの場にいる時点で、こうなることは予測出来ていた。


 だから、「いよいよきたわね」とは思っても驚きはしなかった。


 宰相は、次はラウラのことも非難をはじめた。


 彼女が出自を偽って皇太子殿下に寵愛を受けていること。皇太子殿下だけではなく、複数の男性と愛し合っていること。なにより、懐妊していてそれを皇太子殿下との子どもだと偽っていること。それらを言及しはじめた。


 そんなことは、この場にいる全員がすでに知っていることなのに。


 みんな、「いまさら?」って表情で熱弁をふるう宰相を見上げている。


 宰相はとくとくと語り、ネチネチと嫌味を連発した。


 そんな彼の顔を見ていてふと気がついた。


 いいえ。厳密には顔の上の頭部分ね。


 目を細め、呼吸を整え集中してじーっと見つめていると、赤ちゃんの産毛みたいな毛が増えている、気がする。

 しかも、じゃっかん色が濃くなっているかもしれない。


「皇太子妃殿下が不憫でなりません」


 彼の頭の産毛について自分なりに考察していると、その彼がわたしを手で指し示していることに気がついた。


 全員がわたしを見ている。


「皇太子妃殿下は、その、何と言いますか、皇太子殿下に蔑ろにされています。無論、皇太子妃殿下がとんでもなかったり、不適格者であったり致しましたら話は別です。ですが、ここにいるだれもが知っている通り、皇太子妃殿下の人となりは素晴らしいのです。これほど面白い方が、これまでにこの皇宮にいたことがありますか?彼女が皇宮ここに来てからというもの、皇宮ここがどれほど明るくなったか。それは、わたしたちだけではない。ここで働くすべての者が感じていることです。そんな面白い方を蔑ろにし、胡散臭い元侍女を寵愛するなどとは……」


 ちょ、ちょっと待って……。


 面白い?


「素敵な」という内容が、「面白いから」だけなの?


 そんな「素敵」ってあり得るわけ?


 だいたい、面白いって何なの?



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