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泣かしてやったわ!

「えっ、どうして?」

「どうしてじゃありません。以前、晩餐会でわたしが話したことをきいていらっしゃらなかったんですか?」

「きいていたさ。あのとき、なぜかわからないけど食事の続きよりきみの方が気になったからね」

「だったら、どうしてそんなに暴飲暴食をするんです?」

「減らしたよ。いまは、最低限の食事や間食にしている。内容も、出来るだけヘルシーにしてもらっている。運動だって、寝室から執務室、執務室から食堂というようにちゃんと歩いているよ」

 

 ある意味すごすぎるわ。あらゆる意味でレベルが違いすぎる。


「殿下、周囲の人の食べる量はわかっていますか?他人がどれだけ食べているか気にかけていますか?あなたの血管は、確実に詰まっています。脳の血管や心臓の血管です。長年の暴飲暴食で、詰まったり弱まったりしています。いつ心臓が止まってもおかしくないですし、脳の血管が詰まるまくって破裂してもおかしくありません。歩くのだって、それっぽっちじゃ歩いているうちに入りません。とにかく、いますぐにでも食べることだけじゃなく、生活そのものをかえてください。しばらく皇宮ここから去り、皇妃殿下や兄皇子たちの目の届かないところで生活されることをお勧めします。あなたがこんなことになっているのは、ストレスからです。あなたは、幼い頃からあなたのお母様である皇妃殿下やお兄様である第一、第四皇子たちからいろいろ言われたり圧力をかけられたりしていますよね。あなたは、そのストレスで暴飲暴食をしているのです。最初はきついと思いますが、ストレスがなくなれば食べる量も少しずつ減ってゆくはずです。景色のいいところで散歩してください。あとで執事の方や侍女、それから専属の料理人に役に立つ情報を書き記して渡しておきます」


 息継ぎなしで言いきった。


 酸欠で頭がクラクラするわ。


 すると、彼が泣きはじめた。


「そ、そうなんだ。だれも、だれもぼくのことなんてわかってくれない。はじめてだよ、こんなことを言ってくれたのは……」


 テーブルの向こうでグスグスと泣き崩れている彼を見ながら、内心でガッツポーズをしてしまった。


 わたし、ナイスーーーーーッ!


 泣かしてやった。泣き崩れるほど傷つけてやった。


 いますぐにでも皇太子殿下や第三皇子を呼んで来て見せてやりたい。


 しまったわ。カミラとベルタは連れてこなかった。こんなことなら、いっしょに来てもらったらよかった。


 諜報員に褒められたかもしれないのに。


 それでも、気分は最高。


 さらに大泣きしている第五皇子に一瞥をくれ、颯爽とテラスを去った。


 

 第四皇子とは東屋で会った。そこへ行くと、彼もちょうど来たところのようである。


 カミラとベルタに同道してもらいたかった。

 またナイスーーーーーーッな事態に陥らないともかぎらないから。


 いっしょに感動してもらいたいわよね、やっぱり。


 だけど、第四皇子との約束の時間までに二人を見つけることが出来なかったのである。


 残念だけど仕方がない。


 というわけで、一人で会った。


 東屋にはお茶が準備されていた。


 向こうの侍女や執事は、すこし離れたところに立っている。

  

「やあ、メグ。久しぶりだね」


 第五皇子とは違い、第四皇子は長身痩躯である。神経質そうな三角顔で、頬はくぼんで瞼は重そうに垂れている。


 不眠症であることが見てとれる。


 そして、いい意味ではなく悪い意味で細かすぎてネチネチな性格であることが感じられる。


 つまり、嫌味や可愛げのないことを平気で言ったり、能書きや持論ばかりのたまうタイプだということね。


 実際、彼の侍女や執事たちは神経を研ぎ澄ませてピリピリしているみたい。


「お久しぶりです」


 つくり付けの椅子に腰かけながら応じると、彼は神経質そうにつくり付けのテーブルを指先で叩いた。


「急に皇子様たちからお誘いを受けまして」


 呼びつけやがってこの野郎って感じの笑みを浮かべた。


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