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両家会食

「アルノルド殿、メグといっしょに領地をまわられていたとか?」

「はい。この王都にいる官僚や貴族だけでなく、領地を統べる領主たちも不正や横暴を当たり前のようにやっています。どうにか出来たらな、と。皇太子として、多くの皇民がよりよき生活を送れるよう是正したいのです。どうせおれはうざがられていますから、だれにどう思われようと平気ですので。ですが、実際は是正するどころか縦の物を横にすることすら難しい状況です」


 皇太子殿下は、自分ではヤル気がなくって厭世的で日和見主義みたいなことを言っていた。でも、全然違うじゃない。


 見直したわ。自分の境遇や現状を悲観したり諦観したりするのではなく、ちゃんと夢や希望を抱いている。


 それがかなうかなわないは別にして、すくなくとも彼はそれに向けて行動を起こしている。


 そんな彼に、お姫様抱っこを強要した自分が恥ずかしいわ。


「わかりました」


 ややあってお父様が大きくうなずいた。


「わたしたちは、あなたの政敵に招待されました。彼らがメグともどもわたしたちを利用しようとしているのは明白です。そういうことですので、わたしたちはそれを利用します。何をしようが勝手だろうということです。すくなくとも、あなたの差し金であったり目論見ではないということだけはわからせたいものです」

「そうです。アルノルド殿とはまったく関係がなく、メグと四人でなんでもやってやりたいですね」

「これは面白くなりますよ。楽しみでならない」


 お父様とお兄様たちの顔には、いたずらっぽい笑みが浮かんでいる。


 ええ。わかっているわ。


 そんな笑みが浮かんでいるっていうことは、とんでもない計画を思いついているってことよね?


 ほんと、楽しみでならないわ。


 四人で心から楽しみましょう。


 皇太子殿下は何がなにやらわからない表情で、わたしたちを順番に見ていた。



 皇帝陛下と皇妃殿下とはその夜会った。


 皇太子殿下とわたし、それからお父様とお兄様たちとで食事をした。


 驚くべきことに、すこし会わない内に皇帝陛下も皇妃殿下もスリムになっている。しかも、肌はスベスベでずいぶんと血色がいい。


 以前、便秘の解消のことや健康的な生活を送るよう不愉快きわまりないアドバイスを叩きつけてやったことがあった。

 彼らは、それを実践しているのだとか。


「早朝、皇宮の森を二人で散歩しているのよ。あれやこれや話をしながらね。朝食はたくさん食べ、それから、庭園の手入れを手伝ったりしているわ。陛下は公務ね。昼食はサンドイッチやフルーツを持って森の中で食べたりしているの。夕食は軽くすませ、お風呂やストレッチをして就寝。この生活にかえてから、お通じが劇的によくなったし、体は軽くなったわ。そうすると心も晴れてきてね。なにより、陛下と仲良くなったの。以前は一日まったく言葉を交わさないことの方が多かったのに、いまはしょっちゅう話をしているの。つまらない話題が多いし、ケンカもしょっちゅうしているけれど」


 皇妃殿下は、そう言って笑った。


 彼女、美しくなったわね。


 もともとすっごい美人だったらしいけど、すっかり若返ってキラキラしている。


「メグ、おまえのお蔭だよ。体調がすこぶるいい」


 そして、皇帝陛下もである。頬の肉がこそげ落ちた顔は、驚くほど美形である。


 皇帝陛下は、健康の為に剣の稽古をはじめたとか。


「よかったですわ。心も体も健康でいること。これが一番です」


 ニッコリ笑って断言した。


 お父様とお兄様たちは、宰相が準備してくれたタキシードを着用している。


 客室で着替え終わった三人を見た瞬間、身内贔屓だということを差し引いても素敵すぎると感動してしまった。


 人の多くが外見で判断してしまう。


 宰相たちは、初対面で三人をどう判断したかしら。そして、いまこの素敵すぎる恰好を目の当りにしたら、最初の判断がかわるかしら。


 とにかく、三人は素敵なのである。


 皇太子殿下とカミラとベルタも驚いていた。


 そして、皇帝陛下と皇妃殿下も。


 皇妃殿下は、「まぁ素敵」と思わず感嘆していた。



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