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第八話:トンネルの中

★恐怖度:7


彼女とのドライブ中、トンネルの中で見た幽霊のお話。

 助手席に彼女を乗せて、私は懐かしい町に向かって車を走らせていた。

 秋の海沿いの国道はよく晴れていて、エアコンの壊れた日産マーチはコンパクトながら車内はカー○ックスできるぐらいには広く、古い車ながらエンジンは快調、彼女も機嫌がよく、ドライブは快適だった。

 行き先は昔おばあちゃんの家のあったG市だが、そこまではずっと海沿いの田舎道だった。私の子供の頃の思い出が溢れている町を彼女が見たいというので出掛けたドライブだった。

 彼女が音楽嫌いなので音楽はかけず、エアコンが壊れているので窓を全開にして走っていた。


「『オレンジ色の夕陽』って、重複やんな?」

 詩人をやっている彼女がそんなことを言い出した。

「『青い青春』みたいな表現だから?」と私はふざけた調子で返す。

「ちゃうちゃう。長嶋さんが言いそうな感じやん? 『始まりのスタートだ!』みたいな感じや」

 私はよくわからなかったので、

「ああ。『ラッキーセブンの3』みたいな?」と返した。

「せやねん、せやねん」と彼女は意外にも頷いた。「あんたの好きなYUIの『真っ赤なブルーだ』みたいなんはまぁ、ありやと思うけど、変な重複っぽい表現いうのはあるねん」

「他には? たとえば?」

 私達はこういうたわいもない文学遊びみたいな会話をよくやっていた。

「うーん。『死んだ幽霊にお会いしました』みたいな?」

「『ファットなデブ』とか?」

「ええな、それ。じゃ、あたしは……『月夜の晩に月が出た』!」

「『俺みたいなハゲ』とか?」

「あんたハゲちゃうやん。自信持ちぃな」

「『君を愛するラブラブな俺』とか?」

「やー! もー! 恥ず……。あ、ここ、トンネル多いな」


 そのへんは小山がいくつもあるので、彼女の言う通りトンネルが連続していた。

 トンネルの中で彼女が言った。

「『暗いトンネル』いうのも重複やでな」

 私は否定した。

「いや、明るいトンネルもあるやろ」

「いくら明るうても外よりは暗いやん。せやから重複や」

 得意げに言った。

「『黒くて暗いトンネル』ぐらい言わんと重複にはならんわ」

「それやと『暗黒トンネル』と同じ意味になるやろ。むしろ重複でもなんでも……。うおっ!? なんで今、避けたん!?」


 私がトンネルの中でハンドルを緩やかに右へ切り、蛇行したような形になったので彼女がツッコんだ。


「だって今、人、おったやん」と、私は当たり前に答えた。

「は? そんなもんどこにおんねん」

 彼女がそう言うので車のサイドミラーを見てみると、確かにトンネルの中に人影はなかった。

「あれ? おったで?」私は見たものを見たまま伝えた。「スーパーの買い物袋下げたチェックのシャツ着た男の人が、歩いとったやろ?」

「見てないで、あたし……」彼女の顔が蒼白になった。「大体こないなとこ、人が歩いてるわけあるかいな」

「いや、おった。見間違うわけないわ。あんなはっきり……」

「大体、スーパーの買い物て……。この近くにスーパーあるん?」

 そう言えばと、私は言葉を失った。

 そのあたりには民家すらなかった。あとで調べたところ、そこから一番近いスーパーマーケットは15kmほど離れたところまで行かないとなかった。

 それに、そう言えば、あの男の人はチェックのシャツをジーンズの中にインしていた。どう見ても『昔の人』だった。


 私がそれを話すと、彼女が震え上がった。

「早よ! 早よ行こ!」

 彼女に急かされ、私のアクセルを踏む足も少し強くなった。


 まだ暑さの残る秋の日だったが、車内が急激に凍るように寒くなり、私達はエアコンの壊れたマーチの窓を閉めた。


実体験話を2つくっつけました。

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