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第十四話:最も怖いのは人間

★恐怖度:5


夜の廃校舎。拷問器具を手に追いかけて来る謎の男。☆ハッピーエンド保証。

 ゆうざぶろうは逃げていた。


「あいつ……何者なんだ……!?」


 姿ははっきりと見えている。黒いジャンパーを着てマスクをつけた男がしつこく自分を追いかけて来ている。黒い手袋をはめた手には何か拷問器具のようなものを持ち、それを自分の体に取り付けようとしているらしかった。

 幽霊ではない。明らかに人間だ。足音があり、荒い息遣いが聞こえて来る。


 こんなところに人間などいる筈がなかった。ゆうざぶろうは誰もいない夜の学校に忍び込み、スリルと自由を楽しんでいたのだった。

 しかもそれはもう通う生徒のいなくなった廃校舎であり、用務員すらいない筈だった。

 ゆうざぶろうが校内をゆっくり探検していると、教室の入口に隠れていたその男が突然姿を現し、襲いかかって来たのだ。


 走って逃げ続けた末、ゆうざぶろうは理科室に逃げ込み、机の下に隠れた。

 理科室の扉は角を曲がってすぐのところにあり、それはうまい具合に開いていた。

 逃げ込むところは見られていなかった筈だ。音さえ立てなかったつもりだ。しかし男はゆっくりと、理科室に入って来た。


 物音を立てないように、体を硬直させながら机の下に身を伏せて窺っていると、男の足が歩いて近づいて来る。

 早く行け、早くあっちへ行け、そう頭の中で祈るゆうざぶろうの近くに男の足がやって来た。黒い地下足袋のようなものを履いている。


 男の足が止まった。ゆうざぶろうのすぐ目の前で。それでも気づかれていないことを信じ続け、気配を消して見守っている彼の目の前にゆっくりと、男の顔が下りて来た。


「見ぃ~つけた」

 男はそう言って、ニタァと笑った。


 悲鳴を上げてゆうざぶろうは逃げ出そうとした。しかし男の手がその足を掴んでいた。手が床を引っ掻いて滑り、しかし体は後ろへ後ろへと引っ張られ、引きずられた。


「やめろ! やめてくれ! 誰か……助けて!」

 必死の叫びも誰にも聞こえない。ただ誰もいない廃校舎にそれは響き渡った。

「誰だ! お前誰だ! なぜ俺を狙う!? なぜこんなことをする!?」


 ゆうざぶろうの言葉など聞こえないように、男は手に持ってた赤い拷問器具を掲げると、ゆうざぶろうの首に無理やりはめた。

 ゆうざぶろうの顔が男の胸に強引に埋められる。男は優しい声で、言った。


「こんなところで独りで遊んでいたら、怖いおじさんに捕まって、怖いところに連れて行かれてちまいまちゅよ~? ぼくのおうちに来て、一緒に暮らちまちょうね~?」




 ソファーで昼寝をしていた田中ゆうざぶろうは目を覚ました。

 ゆったりとした平和な時間が部屋の中に流れていた。

 ソファーを下りると少し歩き、水を飲む。首には赤い首輪がはめられている。おじさんがニタニタとした笑顔で差し出して来たチューブからにゅるりと押し出される甘い香りの肉のゼリーに足が吸い寄せられて行く。

 田中ゆうざぶろうは幸せそうにとろんとした目で思った。こんなことなら抵抗なんかせずに、早く飼い猫になっておけばよかったな。



作者は猫に『ちゅ~る』をあげたことがないので、描写に誤りがあったならすいません。

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