第一話:異界からの合流
★恐怖度:8
実体験です。
もし情報をご存知の方がいらっしゃいましたら教えてください。
深夜の高速道路は空いていた。
私は大型トラックを運転し、山陽自動車道を広島から神戸方面へ向かっていた。空いているのでずっと走行車線を流していた。
ふと、まるで右側から入って来たように、いつの間にか追い越し車線にシルバーのK12型日産マーチがいるのに気がついた。しかし右側から合流して来るような道はない。
追い越された記憶はなかった。追いついたわけでもなかった。突然時空の裂け目からでも現れたように、その車はいつの間にかそこにいたのである。
疲れていたし、ぼんやりしていて気づかなかったのかな、と最初は思っただけだった。
現れるとすぐに、その車は左ウィンカーを出して私の前に入って来たが、たちまち車間距離が詰まりはじめた。
「おいおい。人のこと追い越しておいて、前に入るなり追い越した車より遅くなるレジャー車によくあるパターンかよ?」
私はそう思いながら舌打ちをし、すぐに右ウィンカーを出すと、ゆっくりと追い越し返しに出た。
ナンバープレートの数字は『1234』だった。
ルームランプが煌々と灯っており、追い越す時にどんな奴かと高い運転席から見た。運転席にはチェック柄のシャツを着た老人が座っており、助手席では腰の曲がった老婆が項垂れるようにして両手を膝についていた。
二人はまったく動かず、運転手の老人の腕もまったく動いていないように見えた。顔は二人とも何やら青白く、しかしまったく見えなかった。
追い越したマーチはヘッドランプの光を残し、すぐに後ろへ消えて行った。
しかしそれから暫く走っていると、またシルバーの同じ型の車に追いついたのである。
さっきのマーチと同様、やたらとゆっくり走っている。
背筋がぞっとした。ルームランプが煌々と灯っている。
ナンバーを見ると、『1235』だった。
追い越す時にまた確認すると、運転席にはチェック柄のシャツを着た若い男が座っており、助手席には誰も乗っていなかった。
私はほっとした。さっきの老夫婦の息子か孫なのだろうか、連れなのだろうかと思いながら、走行車線に戻ると、マーチのヘッドランプはまたすぐに後ろへ消えて行った。
山陽道に左右ルートの分岐などはない。
追い越した車がまた前にいるなどということは、あり得ない。
もしそんなことがあるなら追い越し返されたことに気づかなかったか、あるいは異界のトンネルを抜けてワープして来たか、しかないだろう。
自分がサービスエリアで休憩したことを忘れるほどに疲れていたということもあり得ないではないが、そんなことを忘れるまでに私は疲れていたわけではなかった。
しかし私は暫くして、またその車に追いついたのである。
走行車線をやたらゆっくり走るその車に。
シルバーのK12型マーチだった。
ルームランプが煌々と灯っていた。
ナンバーは『1234』だった。
チェック柄のシャツを着た老人が運転しており、助手席には腰の曲がった老婆が項垂れるように両手を膝についていた。
二人ともまったく動かず、青白い顔は追い越す時にサイドミラーで確認したが、目も鼻も口もなかった。老人も、老婆も。
トラックの車内に氷が張ったような冷気が走り、私は急いで追い越すと、もう二度と出会わないことをただ祈り、ハンドルを両手で強く握ってトラックを先へ走らせ続けた。
深夜の高速道路は異界とループしているとでも言うのだろうか?
幸い、あれきり出会うことはなかったが、山陽道上りの高屋ジャンクション~本郷ICの辺りでシルバーのK12型マーチを運転していた老夫婦が過去に事故死したことがあるとか、そういう情報をもしご存知の方がいらっしゃったら教えてほしい。
ちなみにナンバーは本当は覚えていない。『1234みたいな覚えやすいナンバーだな』と思ったことだけ確かである。覚えやすかったがゆえに次に見た同じ車もまったく同じナンバーだったことは間違いない。また、若い男が乗っていた車は下一桁が1番違いだった。暫くは覚えていたのだが、今は忘れてしまった。
実体験です。




