待ちぼうけクリスマス
クリスマス
今日は仕事を休んだ。
こんな日に仕事をする人は立派だ。
だけど私はオフィスレディである前に乙女でありたい。
降り注ぐ雪はイルミネーションの光に染まっている。
私はクリスマスツリーの前で、コートのポケットに手を突っ込んで君を待っている。
駅前は見渡す限りカップルだらけで彼を待っている間は疎外感を感じ、段々どうしようも無く寂しくなってしまうのだ。
あぁ、早く私もあの人達に混ざりたいなと吐息をついた。
腕時計を見ると、約束の時間から10分経過。時計の秒針は刻々と進んでいく。
星の明かりを見上げ、独り言を呟いた。
――ねぇ。
ねぇ、早く来ないと。
嫌いになってしまうよ。ダーリン。――なんてね。
後ろから、聞き慣れたトーンで、ごめん、遅れたと激しい呼吸の音と共に聞こえた。
振り向いたとき、怒る振りをして、すぐに許してあげようと思った。
だって今から私も何時の時代の12月25日にも存在する、恋する生き物になれるのだから。




