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アリとキリギリス

作者: 朝焼 悠

ずっと夢を見ているつもりだったんだ

明るく前向きな夢を

どんな時も挫けず俯かずに

そうやって追いかけていれば

全てはきっと後から着いてくると思っていた


だから 少しずつ仲間とはぐれても

最後の一人になっても

怖くはなかったよ


よく自分の事をキリギリスだと

昔読んでいた 童話と重ねていた

そしてきっとキリギリスのまま

あの冬を越えられると信じてもいた

彼とは違っ

本気なのだからと

この夢のために人生を振り切って

そのためだけに生きてきたのだからと


ただ後で気付いたのだけれど

僕はあまりにも

その夢だけに

本気で 地道で

それだけにしか向き合わず

他には一切目もくれないままだったから


そんな生き方が許されるのは天才だけ


そうして開けない冬の前に膝を付いて

吹雪の中で ただ寒さに震えるだけしかできなくなった僕を

アリたちは温かい場所から笑って見ていた

ああはなっちゃだめよってどこか楽しげに

いつ力尽きるのかと面白半分に


でも僕はまだ その冬の中で生きている

積み重ねてきたものは無駄だったんだと

何の価値も無いのだと

現実に突きつけられて 絶望してそれでも

もう明るくも 前向きでもない

それでも捨てられなかった夢だけを抱えて

虫の息で


惨めに震えるその姿を

自業自得だとみんな言うだろうし

自分でも叶えられなかった自分の責任だと思う

だけど元の原因を辿るとさ

僕が明るい夢だけを見て 叶えようと躍起になっていた理由は

どこにあると思っているんだろう?


今も遠巻きにこっちを眺めてにやついている

あのアリたちに

しこたま噛まれてできた傷と居場所を追われた事

僕はずっと忘れていないよ


数の暴力で傷付けられて追いやられた側でも

ちゃんと夢を叶えて幸せになれるんだって証明したかった

そうじゃないと意味がないとずっと思ってきたし

それはこれだけ卑屈で後ろ向きになってしまった今でも

忘れていないよ

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