第九話 救出作戦(桜編)
ーーーーーーー南の門にてーーーーーーーーーーーー
ニック王は南の門まで数時間でこれた。普通の馬と違いこの国で1番速い馬である。
「ヒヒィーン」
(ニック王)うわっー
ニックは止まろうと手綱を引っ張ると馬が急に暴れだし飛ばされた。
(ニック王)いてて、ワシも歳を取ったものだな
落ちた先には門兵の遺体があり、臓物がグチャグチャで飛び散っていた。
(ニック)凄い臭いだ。鼻が曲がる
門の周辺は強烈な異臭が漂っていた。
(ニック王)こいつらも暗黒界の奴にやられたんだな、気の毒に
ニックは周辺を見渡すと大きな門も粉々に破壊されていた。
(ニック王)こんなやつがこの国の外に何人いるのやら
1人にこんなやられては絶望しか感じない。そのまま門の外を見たが人がいる気配がなかった。
(ニック王)くそ、遅かったか
ニックは馬にまたがり門の外へでた。外へ出て何時間か走った頃にようやく人影のようなものが見えた。
(ニック王)まさか、あいつなのか...
ニックは馬からおり、ゆっくりと後ろから殺すことを考える。
「ドンッ...ドンッ...ドンッ...」
そいつの足音は響き歩く度に馬が跳ね上がるくらい振動が凄かった。
(ニック王)これは...凄い振動だ
ニック王は元々騎士で国では公式戦30年以上負けなしだ。だが今回の相手は人間ではない化け物だ。勝てるかわからない。
(大男?→怪物)なにか気配を感じるぞ、肉だ、肉の臭いがする。ゲヘへ
(ニック王)しまった気づかれたか
大男は振り向きニックを見た。後ろから殺す作戦は失敗したようだ。
(怪物)どうした人間。ゲヘへへ
歪な笑い声をあげながらニックに問いかけていた。ニックは肩に乗っている桜を見つけた。
(ニック王)私を知らないとはな、この国の王だぞ。さあその子供を返してもらおうか怪物
(怪物)王だと?つまりお前を殺せばこの国は俺のものってわけか、たまらないな肉食べ放題じゃないか、ぐへへへへ
(ニック王)ワシを殺すだと?簡単に言うな怪物、とりあえず、その汚い手から桜を放せ
3m近くある怪物は桜の顔をまた舐めた。
(怪物)はぁーたまらないこの臭い、この味、肉肉肉ー、グへへ
(ニック王)怪物、桜になんてことを...
ニックは我慢できず腰の鞘にある2本の剣のうち1つを選んだ。
(ニック王)今夜は、この月の光剣が役に立ちそうだ
今夜は月が綺麗に見える。満月だ。ニックは剣を月に向けた。すると剣は月の光を吸収し閃光弾のように光った。満月は暗くなる。
「ピカーン」
(怪物)ぐわあああああーーーま、眩しいなんだその剣は
怪物は眩しさのあまり、手を顔に抑えた。体を揺らした。肩に乗っていた桜は地面に落ちた。生憎砂漠なのでケガはしていないようだ。
(怪物)あぁー肉が落ちたレック様に捧げる大事な子供の肉がぁぁぁーーー
怪物は未だに目を開けられず手探りで砂を漁る。漁っている間にニックは月の光剣で足を切り落とした。血が吹き飛ぶ。この月の光剣は光が元になっているからどんなに硬くても綺麗に柔らかく切れる。しかし欠点があり満月の夜にしか使えない。
(怪物)あぁぁー、人間ごときにこの硬い足が切断されるなど...
(ニック王)たいしたことなかったな、お前にこのワシを倒すことはできない。
(怪物)肉、肉、肉、肉、グワアアーー」
怪物は叫び左の拳でニックをめがけて打つ。しかしニックはその拳の上を走り、左腕を切り落とした。さらに首の後ろに回り右腕も切り落とす。そのまま怪物は地面に倒れた。
(ニック王)桜は返してもらうぞ
(怪物)お、お前たちは所詮、肉でしかないんだ...餌だ、なのに...
言葉を言い終える前にニックは体を切り刻む。怪物からは血と消化しきっていない人間の内臓や肝臓などいろいろな臓器がでてきた。斬られた部分は光が通っていた。
(ニック王)吐きそうになるくらい凄い臭いだな、こんなに喰ってよくも...
その後、ニックの月の光剣は、光を失い、満月は綺麗な輝きを見せた。すぐさま倒れている桜に近づき声をかける。
(ニック王)さ、桜、しっかりしろ!
ニックは桜に何度も呼び掛けた。
(桜)マ、ママ...ママどこなのいかないで、ママ―...はぁはぁ
桜は悪い夢でも見ていたのか凄い汗をかきながら起きた。
(ニック王)桜、目が覚めたのか。ここは国外だ、どんな敵がいるかわからないから急いで国に戻ろう。街の反乱は、騎士長パルンに任せてあるからきっとパパも無事だぞ
(桜)王、王様?どうして王様が?あのね私ね怖くて怖くて...
桜は泣き顔でそう答えた。
(ニック王)もう大丈夫だ、あの大きな奴はもういない
(桜)ほんと?
(ニック王)ああ、そこを見なさい
ニックは倒れている怪物を指さした。
(桜)王様ありが...と...
桜はありがと、と言うと同時にまた気を失ってしまった。
(ニック王)さてと、王都に帰るか。我々の希望も救ったことだし
ーーーーーーーーーーーーー数週間後---------------------
あれから騎士長パルンは街での出来事全てを王に報告した。王はそれを聞き新しい法律を完成させたのだ。その法律は毎日、一人の民を生贄とし生きたまま焼くことだった。それにより反乱を防ぐのだ。槙場はあれから回復し今は王都に安全に暮らしていた。一時は妻を失ったショックでおかしくなっていたが桜が助かったことにより少しは良くなった。桜は精神的ショックが大きいので現在病院で入院中だ。そして今日は3人で会議が行われた。
(ニック王)今後どうするか、桜には怪物の存在を知られてしまった。
(槙場)ニック、娘は記憶を失っていた。だから頼む、殺さないでくれ
(ニック王)わかっておる。
(騎士長パルン)とりあえず様子を見ましょう。ところでニック王一人であの怪物を倒されたのですか?
(ニック王)そうだパルンよ、弱すぎるくらいだったぞ、あれに門兵がやられるとはなお前の部下は弱すぎる。鍛え直せ。
(騎士長パルン)はい、今度の入団試験では槙場が開発した新兵器を出します。
(ニック王)ウム、楽しみにしておるぞ、まあ今夜はワインを皆で飲もう
(騎士長パルン)ワインなど何年ぶりか感謝します。
生き残れた3人はワインで乾杯しあの夜の出来事を話していた。
ーーーーーーーーーーーー暗黒界ではーーーーーーーーーー
レックは非常に怒っていた。
(レック王)奴は死んだのか?
(使いの者)ニック王が殺した模様です
(レック王)ニックもやるではないか、処分する手間が省けた、子供は?
(使いの者)ニック王が連れ帰りました。
(レック王)そうか...子供の肉は食べたかったがまあよい...私としても勝手に人間界にいき勝手に殺したりしてもらっては困るのだよ。もし我々の存在が人間たちにばれたらどうなるか。パニックになりいい肉は育たないそうだろ?
(使いの者)その通りです。レック様
(レック王)そこでだ、今回のこのような状態を招いたのは誰だ?お前だよな、奴らの管理をしっかりしろといっただろ?
(使いの者)いえ、あの怪物です。
(レック王)だが奴は死んだ、誰か責任を取らないとな、お前は奴をしっかり見張っていなかったのではないのか?
レックの体から出るオーラは物凄く逆らえない。
(使いの者)申し訳ございません、実は腹がすいていまして...見張っていませんでした。
(レック王)そうか話にならん
(使いの者)れ、れ、レック様おやめください...
その言葉の後、使いの者はあとかたなく消された。