第四話 勲章
前回は血を求めるものたち(吸血鬼)の話でした。今回は人間界のお話しになります。
(桜)わあぁー
桜は11歳になり初めて王都へ来たのだ。そこに広がる世界はまるでこの国とは思えなかった。
(桜)いろんなお店があるよママいこー
桜はぐいぐいママの手を引っ張るが我慢できずに先に走り出した。
(ママ)桜、走ったら危ないわよ
桜は見たことない物ばかりではしゃいでいた。
「ドンッ」
(桜)きゃっ
(男)おらっ気を付けろ!
桜は男にぶつかり倒された。
(ママ)桜ぁぁぁーー
ママは急いで桜のもとへ駆けつける。桜の足を見るが幸いどこもけがをしていないようだ。
(桜)ママぁぁーー
桜はとてもとても怖い思いをした。
(ママ)ほら言ったでしょ、走ったらね危ないのよ
ママは桜に手を差し伸べた。桜はそれをゆっくりと掴み立ち上がる。
(桜)いこ、ママ
(ママ)はいはい
桜もその後は落ち着き二人で、手を繋ぎながら仲良く歩いて行った。そもそもどうして二人は王都にいるのか、それは今日、年に一度の功績発表を行う日だからだ。功績発表の日は全国民休日となる。そして桜のパパは科学者なので科学賞を取れる可能性がある。もし科学賞を取れば、王都で働くことが出来て各職の代表となる。
(ママ)桜、あそこよ、毎年あそこで発表されるのよ
ママは指を指した。そこには既に多くの人々がおり賑わっていた。
(民)今年は誰が兵士賞取ると思う?
(民2)やっぱりパルン様じゃないか?今年も負けてないんだってよ。
皆、誰が賞を取るか予想したり賭けたりしていた。
(桜)ねぇママ、パパは科学賞取れるの?
(ママ)取れたらいいわね、今年こそは...
ママは毎年来るがパパが賞を取ったことは見たことがない。今年もだめだろうと少しは思っていた。でも今年こそはという願いの方がずっと大きい。
(桜)パパならきっと賞取れるよ!
桜はママにそう笑顔で言った。そうだ今年は桜もきているきっと取れるはずだ。
(ニック王)これより功績発表を行う。諸君、今年も1年良く頑張ったな。それでは呼ばれたものは壇上を上がりワシの前へ
民や王都の貴族、各職の人々が見守る中ニック王は発表を始めた。
(ニック王)騎士・兵士賞はパルン、科学賞は|槇塲《まきば》、教育賞はルーシア、料理長賞はサム以上だ。
各賞に呼ばれたものは王様から1人ずつ勲章が与えられる、勲章はただの勲章ではなく、それを胸に付けている者の部下たちは、勲章を付けてるものに逆らってはならないという法律がある、逆らった場合はもちろん牢屋いきとなり、王の判断により死刑もある。
(桜)パパ!?
(ママ)そうよ桜、パパが科学賞を取ったのよ
ママの目には少し涙が浮かんでいた。ようやくだ。何年も王都へきては賞を取れる日は来なかったが今日取れたのだから。どんな嬉しいことやら。
(桜)パパ凄い!
桜のパパとは科学賞を受賞した槙場のことである。きっと発明品が物凄くて王様の目に留まったのであろう。でも桜はパパの功績は凄く嬉しかったが、教育賞にルーシアが選ばれたのが不安でしかなかった。これまではただのクラスの担任という立場だったが、明日からの学校はどうなってしまうんだろうか。教育賞を受賞したとなれば学校全体がルーシアのものだ。賞に選ばれた理由も大体は想像がつく。ルーシアのクラスからたくさんの生徒を転校させたことだろう。きっとそうである。明日から肉小学校でルーシアに従わない者がいれば牢屋行きになり死刑になるだろう。
(ニック王)勲章を与えたお前たち期待しているぞ、この勲章は分かっていると思うが、ただの飾りではない、この国を守るため、法律が後ろにはついている。安全の為だ。よろしく頼む
ニックは真剣な顔でそう伝え一人ずつ胸に勲章を付けていった。
(騎士・兵士賞・騎士長パルン)これから一年、兵士育成に励み国の治安を守ります!
(科学賞槙場)今年一年以内に、最新機器の完成をめざし、我々の安全を守ります!
(教育賞ルーシア)もっとよりよい教育プランを作り、最高の教育を致します。すべては未来の為に
(料理長賞サム)これからも王様の為、美味しい食事を提供します。
一人ずつ皆の前で、各賞を受賞したものは意気込みを話した。
1年に1度、変わる者も入れば継続して勲章を手にするものもいる、それは貢献次第だ。特に国外に関することはとても重要となる。
それを見ていた皆は拍手を送っていた。しかし賞をもらった者の不満を持っている者もいる。
(科学者)なあ、どうしてあいつが賞をもらってるんだ。
(科学者2)さあな、俺たちは何十年もかけて頑張ってきたというのに
選ばれなかった科学者は不満そうにずっと槙場を睨みつけながら文句を言っていた。
その後、各賞を取った家族が呼ばれ王様から1年分の高級食材を頂いた。パパは忙しそうにしており話す時間がなかったので、ママは家に帰ってきたときに料理を食べながらゆっくりと話そうと考えていた。だから桜とママは先に馬で街まで帰ることにした。
(桜)パパと一緒に帰らないの?
(ママ)そうしたいけどまだパパは忙しいみたいよ。
(桜)そうなんだ、だってパパ凄いもんね、いいなー桜も賞を取ってみたい。
(ママ)桜も取れたらきっと凄いわ、皆でお祝いしなくちゃね
(桜)その時は桜ね新しい服が欲しいの
(ママ)桜は服でいいの?
(桜)うん、だって王都の人たちは皆おしゃれだもん
桜はママの後ろに乗り、賞の話をしながら街までゆっくりと進んだ。
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