第三十二話 10年前
(マラリア)マローナ、怖くない大丈夫だから登っておいで
(マローナ)お姉ちゃん怖いよー
マラリアはいつも街の中央に1本だけ生えている巨大な木に登っていた。この木は街が作られる前から生えており、今はこの木を囲むような作りになっている。そして街のシンボルでもある。民たちの服にもこの木が記されている。高いところから眺める景色はとても美しかった。ここからが唯一国の外が見える場所だ。だから今日誕生日のマローナにも見せたかった。世界はこんなにも広いのだと...
(マラリア)大丈夫、途中からお姉ちゃんが手を掴むからおいで
(マローナ)ほんと?
マローナはお姉ちゃんを信じ、大事に持っていたクマさんのぬいぐるみを木の根元に置いて木に登り始めた。最初は木の枝が太くて足を掛ける場所も多かったが段々と木の枝は細くなり木の枝との間が広くなってきた。
(マラリア)マローナもう少しよ
マローナは途中で落ちそうにもなったが必死に登った。
(マラリア)マローナ、掴まって
マラリアは上から覗き込むように手を伸ばしている。
(マラリア)もう少し、もう少し
(マローナ)きゃっ
(マラリア)よっと、危ない危ない
なんとか落ちかけたマローナの右手を掴み引っ張りあげた。
(マローナ)お姉ちゃん怖かったよ、うわーーん...
(マラリア)よしよし、よく頑張ったね、ほら見てごらん
マラリアは西の方に指を指した。
(マローナ)わあぁぁーーー
(マラリア)マローナいい景色でしょ
(マローナ)お姉ちゃん、ありがとう
マローナにとって初めて見る外の世界、そこに見えたのは広大な砂漠だった。景色を見た事により何かが生まれたのかも知れない...
「バキッ」
話しているうちにマローナの座っていた細い枝が折れてしまった。
(マローナ)きゃあーーお姉ちゃんっ
(マラリア)マローナあぁぁぁぁ
マラリアは必死に手を伸ばすが微かに指先が触れただけで掴むことは出来なかった。この高さなら死んでいるだろう。急いで巨大な木から降りマローナへ駆け寄る。
(マラリア)マローナ、マローナ
マローナの体を必死に揺する。
(マラリア)嘘、私が登れって言ったから...
(マラリア)ねえマローナお願い目を覚まして...
(マローナ)んんっー
(マラリア)マローナ!?
マローナは微かに言葉を発した。
(マラリア)マローなあぁぁぁぁ
マラリアはマローナを抱きしめる。
(マローナ)苦しいよお姉ちゃん
マローナの下を見ると沢山の落ち葉が敷いてありそれがクッションとなって無事だった様子だ。
(マラリア)無事でよかった、でもどうして落ち葉が…
確かにマローナが落ちる前は落ち葉なんてなかった。そもそもこの巨大な木はシンボルなので毎朝おじいさんたちが落ち葉を掃除して綺麗にしている。
それからだった。度々マローナは怪我をする場面があってもいつも無傷だ。あの巨大な木に登ってからなにかがおきたのかもしれない...




