8話 修行の成果
悠希がエミリアの家に来てから1年がたとうとしていた。
「誕生日おめでとう!さぁ食べて!」
豪華な食事がテーブルに並んでいる。
全てエミリアの手作りだ。
悠希は食べ物をどんどん口へ運んでいく。
「悠希、食べながらでいいから聞いて」
そう言ったエミリアの顔を見た悠希は食べるのをやめた。
あまりにも深刻そうな顔だったからだ。
「あのね…正直に言うけど…」
悠希は大きな音を立てて唾を飲み込んだ。
「今まで見てきて思ったけど、あなたは魔法の才能がありません」
悠希は一瞬固まった。
すぐに元に戻って反論した。
「いや、待って。才能はあるはずだ」
魔力量がたくさんあって、たくさんのスキルを覚えているはずの前とは違う悠希は、才能がないなんて思うはずがなかった。
「ほぼ1年間魔法の修行したわよね?出来た魔法は?」
「…全属性の初級魔法」
「そうね、全属性使えることはすごいけれど。そんなことできる人見たことはないわね」
エミリアは少し考え込んだ。
「…いや、あいつがいたわ。もうこの世にはいないはずだけど」
「それは置いといて、何回あの固有スキルで暴走しかけた?」
「ほぼ毎日…」
悠希は現実から目を背けていたのだ。
自分でも才能がないことを改めて感じた。
しかも暴走を抑える薬は残り1つとなってしまった。
どうやら薬の製造には特別な素材がいるようだが、悠希は教えてもらえなかった。
「そういえば、初級ポーションだけ作れるようになったわね…」
「1秒間に1個ね」
「それ普通はありえないから!1個作るのに5分はかかるからね!素材を使わないとかもってのほか!」
5分でも早いらしい。悠希は相当早いことになる。
普通は薬草からポーションを作るが、悠希は何も使わずにポーションを作ってしまう。
スキル「初級ポーション錬金」を使って魔力をポーションに変換しているのだ。
「それが出来てなんで魔力のコントロールが下手なのかしら…」
ポーション錬金は魔力を少ししか使わないため、特にコントロールしなくても使えてしまう。
悠希は魔力のコントロールを覚えてからスキルをいろいろと試したが、初級レベルのスキルしか出来なかった。
「もう薬もないし、これからはこれをつけて貰います」
「服と手袋?」
「そうよ…誕生日プレゼント。魔力を打ち消す素材なの」
悠希は驚いた。
そんなすごいものがあるなんて知らなかった。
「もちろんこの世に1つしかないからね。バレないようにしてね」
「これ作ったの?」
尊敬の眼差しでエミリアを見つめている。
「前に冒険者をしてた頃に手に入れた素材で作ったのよ!すごいでしょ!」
誇らしげにしているエミリアは可愛かった。
「冒険者してたんだ?」
「あー…うん。悠希に話すことがもう一つあってね。こっちが本題なんだけど」
再び真剣な顔になったエミリアは、
深呼吸した。
「ーあなたの固有スキルについて。私が賢者と呼ばれていることにも関係ある話」
悠希は今度こそ真面目な話だと期待した。