6話 夢の共同生活
「…なんか違う」
エミリアと一緒に住むことになった翌日、
洗濯物を干しながら悠希は呟いた。
「エミリアさ…」
エミリアの笑顔が怖い。
「エミリー、これは一体?」
「洗濯した物を干してるんだけど?」
頭がおかしい人を見るような目で悠希を見ている。
「そのあとは掃除ね!」
「まじですか…」
完璧に掃除を終えた悠希は、
椅子に座って一息ついた。
「お疲れ様!ピカピカだね!これ飲みなー」
飲み物を差し出したエミリアは、
満足そうだった。
「ぶっ!」
飲み物を飲んだ悠希は、
吹き出してしまった。
「これ、お酒じゃないか」
出されたジョッキには冷えたエールが入っていた。
「動いたあとはこれだよね!」
「いや…」
この間成人になったばかりの悠希には、お酒の良さがわからなかった。
エールを残し部屋に戻った。
「はぁ…疲れた」
ベッドに倒れこんでため息をついた。
「…弟子にでもしてくれるのかと思ったのにな」
楽しい魔法の修行が待っていると思って珍しくテンションが上がっていた悠希は落ち込んでいた。
エミリアの家から出て行こうかと考えた。
「とは言っても、どこ行っていいかわからないし」
「村に戻るか…?」
それはないだろうと首を横に振った。
「…よし」
悠希は急いでエミリアの元に向かった。
「あれ?いないな」
さっきまでエールを飲んでいたところにエミリアはいなかった。
キッチンにもいない。
「どこだ?」
ガタン。
物音がした部屋のドアを開けた。
「エミリー!俺に魔法を教えて欲しい!」
「…っ!?」
部屋の中には1人の女性が
メイド服を着て鏡の前でポーズを決めていた。
「これはね…いや…あれだよ…」
「ぷっ…」
悠希は笑ってしまった。
はっとして笑いをこらえた悠希の顔は青ざめていく。
エミリアの手を雷がビリビリ覆っていた。
「…悠希、何か言うことは?」
「うん…似合ってると思うよ」
「謝りなさい!!紫電の槍!!」
「うわぁぁ!」
悠希は焦げた。
「部屋に入る時はノックをしなさい!わかったね!」
「…は…い」
悠希は今日見たことは墓場まで持っていくことを誓った。