10話 生きるために
「ステータス」
薬を飲んだ悠希は、ステータスを確認した。
残りの命が35日になった。
「あーあ、30日しか増えなかったわね」
「何でなの?」
「おそらく、たくさん飲んでるから薬の効きが悪くなってきたのでしょう」
「どうすればいいんだ?薬ももうないでしょ?」
エミリアは腕を組んでうなっている。
「そうね…私の体ももう限界だし、旅に出て魔物退治するしかないかしら」
「体?どういうこと?」
うっかり口を滑らしたエミリアはたどたどしい。
「べ、別になんでもないわよ。さぁ旅の支度をしなさい」
エミリアは自分の部屋へと逃げていった。
1時間後。
支度を終えた悠希は、エミリアの部屋を訪れた。
ノックした悠希に返事が返ってきた。
「どうぞー」
「なんだ、元気そうだね」
「心配してくれてたのー?嬉しい!」
抱きついてきたエミリアの顔を押さえた。
「離れてくれ」
「つれないなー、最後の抱擁だっていうのに」
エミリアは泣きそうだった。
「魔法のことは一通り教えたし、
立派な青年になってくれて私は嬉しいよ。
あとは、魔力と固有スキルのコントロールを極めてちょうだい」
「…エミリアは最後まで呪いとか言わないのな。
こんな気持ち悪いスキルだっていうのに」
「別に、呪いでもなんでもないでしょ。
ただのスキルだよ。使いこなして見せな!」
「…時間だね。私はもうじき死ぬから、
何か言うことがあれば今のうちにだよ」
エミリアに唐突に死の宣言をされた。
「え?どういうこと?」
「薬を作るときに力を使いすぎちゃってね。
私の固有スキル[時間管理で自分の時間を止めてたから、その反動がやってくるのよ」
「だからそんなに若いのか。
生きてた時のマリオン知ってたし」
「まぁそういうことよ。
なんでマリオンを知ってるのか聞きたいところだけど、もうだめなようね」
椅子に座っているエミリアが、
だんだん歳をとっていく。
「じゃあ、頑張るのよ?
ここにあるものは全部あげるわ。好きなのを持って行ってちょうだい。
それと、何があっても諦めちゃだめ、たくさん考えて進み続けなさい」
「…わかったよ」
「悠希と出会えて楽しかったわ、ありがとう」
そう言って息を引き取った。
悲しんだが、悠希の目に涙はなかった。
以前のように泣いていた悠希はそこにはいなかった。
「ありがとう、エミリア。大事に使わしてもらうよ」
「アイテムボックス」
エミリアの遺品を空間にできた収納箱に入れ始めた。
悠希のアイテムボックスは小さい。
しかし、5つまでアイテムボックスを使うことができる。
通常はどんな大きさでも1つしか使えないが、
悠希には複数起動できた。
エミリアの部屋のものを詰め終わった悠希は、
食材を詰め、旅立つ準備を終えた。