【15】失敗体験と苦手意識
失敗体験というのはその名の通り上手くいかなかった体験の記憶である。
失敗は成功の元なんて言葉もあるが実際は多数の成功体験を得てきた者がいくつかの失敗を乗り越えた話に過ぎない。失敗が成功をもたらすのではなく多数の成功を元に失敗を乗り越えただけのことだ。
失敗だけを経験してきた人間がそれを乗り越えて成功したという話は創作の中でしか筆者はほぼ聞いた記憶にない。
自力で失敗を乗り越えた者は何らかの多数の成功体験をそれ以前に得ていて、それがあるから失敗という否定の恐怖に立ち向かうことができる勇気があるのだ。
失敗だけの状態から成功を得る人間がいるとしたらそれは他者の後押しがあってある程度強制された状態からである。ただその成功体験は他者の力を借りるという前提がつくために肯定感としては弱い。その後に多数の成功体験を自力で得なければ自信とはならない。
基本的に多数が失敗体験を占める事柄に対しては人は苦手意識を覚え、挑戦することすら避けようとする。それは否定の記憶であり新たに否定を得る可能性が高いものに向かうリスクを回避するためだ。
先にも述べたことから分かるとおり苦手意識の排除はひとりで行うには困難である。
苦手なものが苦手でなくなれば良いことには自覚的ではあるが、苦手をなくす努力のために得るだろう否定の予測に対し恐怖して率先して対処しようとは考えないからだ。
苦手なものをなくす努力で生じる否定より大きな肯定を得られるメリットがなければ自発的に動くことはできない。
また苦手意識を強調してしまうためにあまり良いやり方ではないが他者から強制されて仕方なくさせられる場合はそれを断るデメリットが大きければ努力させることはできる。
しかしながら一回成功すれば苦手意識を克服できるということはなく、完全な克服には成功体験の量が失敗体験を上回る必要がある。
それにはそれ相応な時間を要する上にずっと成功体験のみを得ることは難しく失敗体験も増えることも想定しなくてはならないので気の長い戦いとなる。
失敗体験への対処は非常に難しく限られた人生の中で考えると非常に効率の悪い作業である。
どうしても排除しなければならない苦手意識でない限りは排除するのにかける時間は無駄であると筆者は考える。
そんな時間があるなら得意分野で実生活に役に立ちそうな成功体験を増やして能力や実績を増やした方がかなり効率的で有意義だろう。
これは他人を対象とする場合でも同様だ。
苦手意識のある人間に対して仲良くしようとするよりすでに友好的な相手と仲良くした方がメリットが大きい。
また基本的に苦手意識のある相手を潰そうとする行為もある意味で克服しようとする行為に等しく労力に見合わない。そういった相手には極力関わらないようにした方が無難であるが、関わらず放置した場合にデメリットが発生する場合は個別の対処が必要となる。
話を戻すが失敗体験はわざわざ克服しようとする必要性はない。
人間はある程度時間が経てば忘却する生き物でもある。
あえて挑戦せずに失敗体験を増やさず放置していればいつか忘れかけて記憶が薄らいだときに挑戦して成功体験を得て肯定的に見られるようになることもあるかもしれない。
苦手意識のあるものは気にしないのが一番人生を無駄にしない方法である。