【14】成功体験と依存症
もっとも肯定感が強く得られるものに成功体験というものがある。
成功体験とは「こうやれば良い結果を得られた」という体験の記憶だ。
人は選択肢が複数あるとき、より多く成功体験のあるものや成功体験に関連するを選ぶ。
それは肯定を求める人間にとって当然のことだ。
肯定を得たという記憶は失敗という不安の否定を生まず、不安のない肯定はより強い自信となる。
自信とはその対象で失敗する不安がないことによる思考停止命令である。
不安がないことをいつまでも考えても思考のリソースの無駄となるので考えるのをやめるように働く感情だ。
人間の脳は考えるだけでエネルギーを消費する。だから極力無駄なことは考えないようにする感情がいくつか存在する。
より成功体験に近いものを選べば脳は考えないで済むので、思考的にも感情的にもその選択肢を選びやすい。
問題はこれが実用的なことで実生活にメリットになることであれば良いがデメリットになることである場合、依存症と言われるものになる危険性がある。
成功体験に従って同じ成功を収めるたびに成功体験はより強固なものとなっていく。
同じ成功体験を繰り返すということは成功体験を強固にし続けるループへの道となっているのだ。
脳の記憶を占める成功体験の量がひとつの物事で大きく閉められたとき、人はその成功体験を繰り返すことを止められず依存となる。
その依存が生活の害となるものであればそれは依存症と言われる歴とした病気だ。
成功体験を味わっている間は自信により思考停止するので肯定感を得て気持ちよくいられるが、それが終わると実生活で発生する害により否定感により苦しめられ、その否定感を埋めるために成功体験へとすがる悪循環へと陥るのだ。
依存症の悪循環を絶つために本当に必要なのは依存先の否定ではない。
本当に必要なのは依存しているもの以外へのたくさんの成功体験である。
依存先に成功体験が多く偏っているからこそ、そこから抜け出せないのである。
だからこそ害のない別の成功体験をたくさん増やして依存先にすがる必要性をなくすことが依存症解決のための早道なのだ。
だからいくら依存先について駄目だと言い聞かせたところで依存症が治らないのである。
むしろ依存先の否定はより強い肯定への欲求を生み出し、依存を加速させる。
依存症になっている人間への対処には細心の注意が必要なのだ。
依存症は心が弱いからではなく依存先以外で大して成功体験を得られない現実の不遇によるものである。
生まれつきが良かったり幸運に恵まれた人間は実生活で役に立つ成功体験を多く有し依存症になりにくいだけなのだ。
その幸運に感謝せずに依存症の人間をただの愚か者と見下すのは筋違いである。
みんな誰でも成功したい。
だから成功体験へすがる。
偶然得た成功体験が違っただけで天国にも地獄にも変わるということは理解して欲しい。