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中編 ~魔王vs宇宙戦艦~

 調査船団はイトーラ上空に着いた。


 本来なら、衛星は調査対象外である。

 だが、電磁波を解析したところ、自然物ではありえない地形が散見されたため、立ち寄ることになったのだ。


 アルゴスの乗組員が光子解析カメラ(理論上は無限にズームできるカメラ)で地上を映し、調査を始めようとした、その時である。 


『はーい、そこの地球の船っぽい宇宙戦艦5隻、貴方たちは何も見なかった。そういうことにして、この空域から立ち去りなさい。じゃないと、落とすわよ』

 船内に少女の声が流れた。他の艦でも同じことが起きていた。


 声の主は大魔王。日本人の知識を持つ彼女にとって、魔法で艦内のスピーカーを鳴らすのは容易いことなのだ。


 そんなことなど知る由もない調査団の面々は、突然流れた日本語のメッセージに戸惑うばかりだった。


 最初に再起動したのはガイアの艦長。調査団の団長だ。

 彼はハンドマイクを手に取り、全艦に告げる。

狼狽うろたえるな! 我々の目的を忘れたか! 異文明の調査だ! 相手から接触してくることも当然ある!」

 今度は少女に告げる。

「聞いているのだろう? 我々は、星々をめぐり、文明を保護している。お嬢さんとも話がしたい」

「いやいや、戦艦で乗り付けてる時点で、友好的じゃないわよね。武力で言うことを聞かせる気満々じゃない。お断りよ」

「そこまで分かっているなら話が早い。滅ぼされたくなければ、交渉に応じたまえ」

「はい、ぶっちゃけトーク頂きましたー。じゃあ、交戦開始ってことで。後悔しないでね」

「よかろう。では、先に撃ちたまえ。我々の科学技術の力、思い知らせてやろう」

「それじゃ、お言葉に甘えて。サティー、一番デカい奴を全力で殴って」

『了解。マユ様、魔王使いが荒いよ』


 新たな声の主は、魔王城から派遣された魔王の1人サティー。外見は女子高生だが、魔界きってのパワーファイターである。

 彼女の声は、大魔王にしか聞こえていない。調査船団の面々は、自分たちが何を相手にしているのかを、まだ知らない。

 彼女のターゲットは空母オケアノス。既に時空断層防御幕を展開済みだ。


「それじゃ、やりますか」

 サティーは飛行魔法で飛び立った。衝撃波無しでマッハを超え、オケアノスの前に到着。

 魔力を高め、魔法の力を込めて、全力で右ストレートを放つ。 

魔王全力撃ノヴァブラスト!」

 艦首に放たれた一撃は、時空断層防御幕を素通りした…。


 魔王にとって、各種防御結界は、無意識に常時複数展開しているものである。

 対物理、耐熱、耐寒、耐電…etc.

 時空断層は確かに強力で万能だが、そんな結界の一つに過ぎない。

 それらの結界を貫く一番簡単かつ確実な方法は、結界の源である魔法の力を乗せた、拳や蹴りなのだ。

 

 魔王全力撃は爆発を起こしながら艦内を貫通。

 爆炎を伴って艦尾を突き破った。

「はい、一丁上がり」

 当然といった顔のサティー。

 オケアノスは前後から火を噴き、爆発した。



 一方、残った調査船団の面々は、ほとんどが思考停止していた。

 彼らの目では、飛んでくるサティーも、彼女のパンチも見えなかった。

 彼らの目には、こう映っていた。

 えっ、オケアノスに異変!? ええっ、オケアノスが爆発!? おい、何か浮いてるぞ。人か?

 その結果が、このありさまである。

「なあ、あの女の子…、空飛んでないか?」

「あの子が…何かした…のか?」

「ば、馬鹿な…。時空断層防御幕が…。700メートル近い大型艦が…」

「これは夢だ…悪い夢なんだ…」


 そんな中、大魔王の声が無情に響く

「次、ヴァーチ。一番小さいのを凍らせちゃって」

『はい。マユ様のご期待に応えて見せますわ』


 ヴァーチも魔王の一人。外見がお嬢様系女子大生な彼女は、魔法に秀でた魔王である。

 彼女のターゲットは調査船アルゴス。時空断層防御幕は展開済み。凍結を防ぐためなのか、大砲や対空砲を上下左右に動かし、弾を撃ち続けている。


「参ります」

 ヴァーチは飛行魔法で飛び立った。あくまでも優雅に。髪も、服も、そよ風で揺れているように見える。

 だが、スピードはサティーと同等。魔法の使い方がうまいのだ。

 ヴァーチはアルゴスの前に立ち、魔法を使う。

氷結地獄コキュートス


 ダイヤモンドダストがアルゴスを包む。

 時空断層防御幕をすり抜け、船体に付着する。

 氷は見る間に厚みを増す。大砲も対空砲も、すでに動かない

 ダイヤモンドダストは装甲をすり抜け、船内にも吹き荒れる。

 転送魔法を組み合わせれば、こんなこともできてしまうのだ。


 人も機械も、全てが凍った。

 エンジンが停止し、アルゴスは墜落。

 極低温の船体内で、爆発は起きない。氷がクッションの役目を果たし、損傷もほとんどない。

「マユ様、これでよろしかったでしょうか?」

「うん、上出来よ。あれならお宝が回収できるわ」



「おーい、偉い人ー。次はどんなやられ方が良いー?」

 大魔王の無邪気で無慈悲な呼びかけ。

 返答はない。

 誰もがうすうす気付いていた。自分たちは、絶対に戦ってはいけない相手と戦っていることを。

「むう、ノリが悪いなー。じゃあ、今度はハチの巣ね。シュリー、マーラ、色違いの2隻をやっちゃって」

『はーい』

『うん、わかった』

 この二人も当然魔王。シュリーの外見はナイスバディな大人のお姉さん。マーラは中学生ぐらいの少年だ。

 二人はオールマイティ。すべてが高レベルで弱点が無い魔王だ。

 飛行魔法で飛んだ二人はターゲットを瞬殺。シュリーは周囲のマナを集めた魔法の弾丸でウラヌスを、マーラは体内のマナを集めた闘気の弾丸でクロノスを、それぞれハチの巣にしてのけた。


 二人が放った弾丸は、圧倒的なパワーと超スピードで時空断層防御幕が反応する時間を与えず、対象を撃ち抜いたのだ。


 中央部に集中砲火を受けたウラヌスは自重に負け、2つに折れて爆発し、四散。

 全体に攻撃を受けたクロノスは、爆発することなく消滅した。

「なぁーに、これぇー? 全然手応えがなかったわ」

「仕方ないんじゃないかな? 部品を組み合わせただけの大きなおもちゃなんだから」

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