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正邪の交心  作者: 八木うさぎ
第2章 ダブル・フェイス
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三者面談

 一夜明けて、僕は現在学校までの畑道を歩いてる。

 右手にあの卵を持ちながら。



 時間が経つにつれて詳細が明らかになっていくどころか逆に謎が増えていくこの卵。

 昨日の香澄との一件のあとに無事だった卵を手に取り、勇気をだして母さんの前にもさらしてみた。けど、やっぱり父さんや香澄と同じように視認できていなかったみたいだ。



 さすがにちょっと怖くなってきちゃったので何か情報はないのかとインターネットで検索をかけてみたんだけども・・・やっぱり、該当する卵は見つからずじまい。

『っていうか、もしもこれが本当の本当の本当に僕以外の人に見えないんだったら、そもそもネットに掲載されてるはずないじゃないか』と、あとになって気づいた僕。



 アホだ。



 でもよくよく考えてみるとそれはこの卵が本当に僕以外の人に見えないってことの裏付けになってしまうわけで。

 現に僕は今の時点で天喰くんと家族の計四人もの反応を見たわけだけど、四人とも同じ反応だったけど、でも、それでもやっぱりそんな現実はそうそう受け入れられない。



 だから学校でも試してみようと思ったわけで。それでこうして僕は卵を持ってきちゃっている。

 見えない前提でこうしている今も右手に持っているんだけど――――例によって例の如く、すれ違う人から痛々しい視線は感じない(これじゃあ学校着く前に実験結果出ちゃうじゃん。アホだ)。



 ちなみに、落下したのにもかかわらず割れなかった昨日のあの件についてだけど・・・。

 頭を悩ませた結果、『ひょっとしてこれ、割れないんじゃないか?』なんて思った。



 どう考えたって無傷でいるのがおかしい状況だったし、それにこの卵には『重さが感じられない』とか『普通の人には見えないかもしれない』なんていった奇異的な特性があったりすることもあって、だからそんな突拍子もない考えに至ったわけで。

 ・・・わけだけども、なにせ、この件に関しては実験なんか怖くてできませんので。

 試しに、えいっ! って投げて、もしもグシャッとなろうものならもうそれまでなんで。



 だからこの卵が『見えない』可能性はあるけど、『割れない』可能性はあるかどうか微妙なまま。昨日のアレは単なる偶然かもしれないし。



 ・・・っていうかこの卵、炎天下の中こんな風に持ち歩いてて大丈夫なのかな?



 あと二・三日で孵るってことはもうそっとしておいた方が良さげな気がするけど?

 こんなことなら、せめて普通の卵が孵化する直前には何をどうすればいいのかとか、さわりだけでもついでに昨日調べとけばよかったな、と思いながら校門を潜った僕だった。 自分の席に荷物を置いて、それから卵と適当な教科書を持って廊下に出て(一応だけど)実験開始を試みる。



 何気なく壁に寄りかかって、両手で教科書を持って静かに読んでるフリを。

 しかし右手の人差し指と親指でつまむ形で卵を持っていて、中指から小指の三指は教科書の下に伸ばし固定しているだけ。つまり第三者から見れば開かれた教科書の上に卵があるように見えるわけだ。



 見えれば、だけどね。



 仮に見えちゃったら、それはそれは卵持ちながら教科書を読んでるなんて僕はさも変人に見えなくもないだろうけど、まあ事実上今の時点でもう大体の人から変人扱いされてるしさ・・・そのへんはまたあとで考えればいいや。



 そんな、毒をもって毒を制す精神で望んだ僕だったけど――――実際、こうしている間も、誰も朝の挨拶をしてこないしそもそも僕に目を向けもしない。素通りだ。



 って、待て待て僕。



 誰も僕を見ないんじゃ、この実験って・・・無駄じゃん。

 僕は自分が学校で空気くらいの存在感しかないということを全く考慮していなかった。ただでさえ誰も話しかけてこないんだし、挨拶なんてもっての外だ。それを忘れてたよ。



 やっぱアホだ。



 うーん、一旦席についてどうすればいいかもう一度考えてみようかな?



 そんな風に卵を見ていたとき、不意に声をかけられる。



「あれ? それって・・・もしかして、これと同じ?」



 え? と思って目を向けると、そこには一人の女子生徒がいた。



 身長は百五十台半ばくらいで根元から毛先まで一切混じりけのない漆黒色の髪は息をのむほど美しく、基本背中に流れているけど首から二股に分かれて胸元にもきていて、左右の髪の束は紺の質素なゴムで鎖骨辺りでまとめてある。

 だけど左のゴムにだけカラスアゲハのような独特の輝きを放つ青緑色の小さな羽毛のようなものが飾りとして数枚存在し、胸元に流れる髪に対する花弁のようになっている。それが黒髪に対するささやかなアクセントとなっていて、更に片方だけということで、妙に目を惹く。



 前髪から覗かせるアーモンド形の目はそれだけでも印象的だけど瞳の中で黒が占める割合が一般的な人よりも多いみたいで、全体を称すると至高の黒曜石のように魅惑的に輝いている。

 加えて、高くはないが細く慎ましい整った鼻、そして真紅のバラの花びらのように色艶がいい鮮やかな唇、色白の肌の上に乗る全てのパーツの位置関係は絶妙で、頬や顎のラインに無駄な脂肪がなく、かといって貧相でもない。まさに、絶妙の一言に尽きる。



 この学校の三学年合わせても群を抜いて――――いや、それどころかこの学校だけに留まらず、他校にもその名を知らしめるほどに卓越した、卓越しすぎた、人形のような容姿。

 噂では入学早々たくさんの上級生達から想いを告げられたとかっていう凄すぎる逸話を持つその名は、鷺宮瑠姫さぎのみやるき



 一年の頃は何の偶然か同じクラスで、極稀に一人ぼっちでいる僕の所に鷺宮さんの方からやってきてほんの少し話しかけてくれる、なーんておっかなびっくりなことがあったりしたから面識があるかないかで言ったら・・・ある。あるんだけど、二年に上がってクラスが変わってからは一切の関わりがなく、だからこれが久しぶりの接触だ。



 そりゃあこの三ヶ月間廊下ですれ違うことだって何度かあったけど、こうして久しぶりに至近距離で見てみると――――やばい。すっごくカワイイ。・・・あ、いや、そうじゃなくて。



「こ、これと同じって、じゃあ鷺宮さんも――――」

「よかったぁ、あたし以外にもこれが見える人がいたんだね。誰に見せても無反応だったから・・・アハハ、なんだか安心しちゃった」



 鷺宮さんはその輝かしい両の瞳をさらにキラキラと輝かせて、僕に安堵の混じった笑顔を向けてくる。

 面識がないわけじゃないんだけど、人間不信な上に普段女子に話しかけられることなんか絶無のこの僕なんかが、あろうことか学校のマドンナと――――と思いだしたら、ついつい緊張しちゃってもう、目がバタフライだ。



「あ、え、あ、っと、その、じゃあ鷺宮さんも・・・この卵を?」

「うん、多分一緒のだと思うんだけど。ほら」



 そう言って鷺宮さんが差しだした右手には――――本当に、僕の卵と同じような物体が存在していた。信じられないことに。

 けど、鷺宮さんのそれは、それこそ僕のと同じ卵の形をしていて大きさもほぼ同じだったんだけど・・・色、というか模様が違った。



 僕のは不規則な形をした白と黒が半々ずつ不規則に殻の表面を占めていて、それこそ牛柄模様を髣髴とさせているんだけど、鷺宮さんのはそうではなく、卵全体がほぼ真っ黒。その表面の上から粉糖をふるいにかけて少しまぶした程度に白い部分が点々とあって、どことなく僕の持つ卵とは様子、っていうか醸しだしてる雰囲気が違う。



「あれ? また黒くなってる。うーん、なんでだろう?」

「・・・え? 黒く、なってるの?」

「うん。これを貰ったときは比護くんのみたいだったんだけど、なんか時間が経つにつれてどんどん黒くなっててね。今もまたさっき見たときよりも黒くなってるの。ねぇ比護くん、なんでだかわかる?」

「あー、っと、ごめん。僕もこの卵昨日貰ったばっかりだから詳しくこととかわからないんだ。それに、僕のは貰ったときのままで全然変化してないし」

「ふぅーん、そっかぁ・・・って、比護くんもそれ、貰い物なの?」

「え? じゃ、じゃあ鷺宮さんも? もしかして、それをくれたのっておじいさんじゃなかった?」

「おじいさん? ううん、女の子だったよ。五、六歳くらいの」



 女の子? まあいいけど。



「それで、その女の子からいつ貰ったの?」

「ついさっき。学校に来る途中で」

「っ! つ、ついさっき?」



 ってことは、まだ一時間も経ってないってこと?

 それでそんな、腐りだしたバナナみたいな変化が?

 ・・・そ、その卵、いろいろと大丈夫?



「歩いてたら小学校にも行ってそうにないくらいの女の子が朝早くに一人でキョロキョロしてたの。だから変だなぁと思って声をかけてみたんだ。そしたら迷子だって言うからね、時間に余裕もあったし一緒にお母さんを探してあげたの。それでしばらくしたらお母さんが見つかって、そしたら・・・お礼に、ってその女の子がこれをくれたんだ」



 鷺宮さんはそのときのことを思いだしているように視線が斜めを向いていて、そしてどことなく優しそうな表情を浮かべて卵を見入る。



「そりゃあ、あたしも最初は「え、卵?」ってちょっと驚いたよ? しかもこの卵、なんでかは知らないけど全く重さを感じないし。だからちょっと不気味になってきちゃって・・・だけど、別れ際に女の子が笑顔であたしに手を振ってたから、その、返そうにも返せなくって。それでどうしようかなぁこれ、って思いながらとりあえず学校に向かいだしたの。そしたら途中で四組の板倉くんとばったり会っちゃって。で、話のタネにその女の子の話をして「こんな物貰っちゃった」って見せたら板倉くん、なんて言ったと思う? キョトンとした顔で「卵なんてどこにあんの?」だって。最初は板倉くんの冗談か何かかと思ったんだけど、でもいつまで経っても話が噛み合わないままだったから不思議がってたら――――その、途中でちょっとしたハプニングがあって板倉くんとは校門の前で別れたんだんだけど・・・でも、板倉くん、最後の最後までコレが見えてなかったみたいだったなぁ」



 ・・・なんか、まるで昨日の僕と天喰くんのやりとりの再現だな。



 それにしてもハプニングって何だろう? まあ、プライベートを詮索するのはやめておこう。



「そこであたし、『これってもしかして板倉くんに見えてなかったんじゃないのかな?』って思ったの。板倉くんウソをついているような様子もなかったし。でも普通に考えてそんなことあるわけないでしょ? だから試しにこの卵を見せびらかすように手に持ってたの。もしもちゃんと見えてるなら学校で朝からこんな卵を持ち歩いてるのなんて変だし絶対誰か何か言うでしょ? それで何人か声を声をかけてくれたんだけどね――――」



 同じようなことしてたけど、僕には誰も声をかけてくれなかったけどね。



「みんな揃って『なんでそんな風に手を前にだしてるの?』って言うだけだったのよ。それで色々と考えてたところで――――卵を見つめてる比護くんを見かけたんだ」



 話を聞いた分では、鷺宮さんの卵にも僕のと同じように『他人には見えない』という性質があるようだ。

 ということは、やはり僕の卵と同じ類の物なんだろう。模様こそ違うけど。



 鷺宮さんの話を聞いたあと、今度は僕の話を大まかに話した。

 昨日駅前の十字路でおじいさんがトラックに轢かれそうになったこと。

 間一髪のところでそのおじいさんを助けたらお礼に、ってこの卵をくれたこと。

 そのあと天喰くんに話しかけられて、天喰くんはこの卵が見えていないようだったこと。

 家族三人の前でそれとなく卵をちらつかせてみたけど、三人とも視認できていなかったこと、などなど。そして、ひょんなことから卵を落としたけど卵は割れるどころか殻にヒビ一つ入っていなかったことも。



「えー? うっそだぁ。落としたのに割れないなんて、さすがにそれはちょっと信じられないかも」

「いや、そう思うのももっともだと思うけどね、ほら。現にこうしてヒビは入ってないでしょ? それにこの卵、他の人に見えないって時点でもうそもそもありえないんだってば。だから普通じゃありえないような性質がまだまだあるかもしれないよ?」



 割れないって確証を得ているわけじゃないのに勢いに任せて言い切っちゃったけど、鷺宮さんは僕の話しに眉をひそめ、律儀にその可能性を考えてくれているようだ。唇に指を当ててぼーっとあらぬところを見ている。・・・こんな真面目な顔ですら絵になるな、鷺宮さんは。



 もう、おわかりでしょう。

 そう。なにを隠そう僕は、ずっと前から鷺宮さんに密かな恋心を抱いている。

 抱いちゃってる。分をわきまえずに。人間不信なのに。僕のくせに。



 初めて口を利いたときのことは今でもちゃんと覚えてる。何の前触れもなく突然話しかけられてじっと見つめてきたから当然視線はバタフライだし胃は痛いし、こんなカワイイ人に話しかけられるなんて、っていう緊張でもうタジタジだったんだけど、そんな動揺しまくりの僕を見てもクスッと慎ましく笑うだけだった。



 僕から距離を置こうとは、しなかったんだ。

 他のみんなとは違って、極稀にだったけど、それからも僕に気さくに話しかけてくれた。

 そんな人は他に天喰くんしかいなかったから、ちょっと嬉しくて。

 それがきっかけで興味が憧れに、憧れが好意になっちゃって。

 陰じゃ学園のマドンナなんて呼ばれているのに、変に気取らず、飾らず。

 偉ぶらず、おごらず、それどころか、親しみやすい人格で。

 容姿が優れているのは別問題として――――いやごめんなさいウソです。正直外見もかなりタイプです。だって、カワイイは正義ですもん。



 だけど・・・僕だってもう高二だから、『真摯に想っていれば、いつか――――』みたいな夢物語、もうとっくに信じちゃいない。そんなのは書物だけの幻想だってことは重々承知だ。

 噂じゃ彼氏はいないようだけど・・・それは僕にとってはあまり意味のない事実に変わりない。僕と鷺宮さんとじゃ釣り合わない。釣り合う道理がない。自明の理だ。

 誰が好き好んでこんな偽善者気取りで人間不信の、勉強もできなければ運動もできず顔もよくない男を彼氏にしたがるんだろうか。僕が女子だったら絶対に嫌だと思う。



 誰もが解の予測が可能な方程式に、自分でも取り掛かる前からすでに解がわかっちゃってる方程式に、真剣に取り組む気なんか湧くはずもない。

 だから何もしない。今までも、これからも。そして今も。

 たまーに話せればそれでいい。それだけでいい。十分だ。



 そのはずが・・・どうしてかざわついちゃってる。これが。

 はぁ。人の夢っていうのはどうしてこうも儚いものなんだろ――――、



「――――ねえ比護くん、聞いてる?」

「あ、えっ!」

「? どうしたの?」

「ななな、なんでもないよ、うん、なんでもない、本当に・・・それで何?」



 自意識にふけっていた所で急に鷺宮さんが肩に触れてきて顔を至近距離に持ってきたので、またしても心臓が高鳴る。まさか鷺宮さんのこと考えてただなんて口が裂けても言えないから勤めて平静を装うけど。



「うん。あのね、この卵があたし達以外の人には見えないっていうのは、まあやっぱり完全には納得できないけど、一応そうだと仮定して・・・逆に考えてみると、そもそもこれ、なんであたしと比護くんだけには見えるんだろ? って思って」

「・・・た、確かに。言われてみればそうだね」



 今までは『なんで誰にも見えないのか』と、そのことについてばかり考えを巡らしていたけど、着眼点がそもそも間違ってたのかもしれない。



 つまりどういうことかというと、『この卵は本来は見えない物であって、それがどうしてか今、僕と鷺宮さんだけには見えている』、ってことなのかもしれない、ってことだ。



「うーん、でもそうなると・・・なんで僕と鷺宮さんだけ見えるんだろう?」

「あたし達だけじゃないでしょ? 他にもいるじゃない」

「他にも? ・・・あ」

「そう。あたし達にこの卵をくれた人。あたしの場合は女の子。比護くんの場合はおじいさんだっけ? とにかく、少なくてもその二人もこの卵が見えてたのは疑いようのない事実よね? 女の子のお母さんが見えてたのかどうかはわかんないけど」

「ってことは、卵を触らせれば見える、とか? 確かそれっぽい法則が何とかってノートを扱ったマンガにあったよね」

「うーん、それは違うと思うなぁ。だってあたしも比護くんも、卵を貰う前にもうそれを『卵だ』って見えてたわけでしょ?」



 ちょっとばかし冗談を言ったつもりが真顔で返されちゃったので「だ、だよね」と全身全霊の半笑いでごまかす。言わなきゃよかったよ。



「それに板倉くんに卵の話をしたときにあたし、確認させようとして「ほら、ここにあるから触ってみて?」って卵を差しだしてみたの。それで板倉くんも指を伸ばしたんだけど・・・板倉くん、どうしてか卵に触れなかったのよ。「やっぱ何もないじゃん」って言われちゃったし。しかもね、そのとき板倉くんの指、あたしには卵に貫通しているように見えたの。ちょっと信じられないかもしれないけど」



 と鷺宮さんは今の話を聞いて僕が信じるかどうか様子を窺うようにその魅力的な目を躍らせては見つめてくる。たまらないその仕草に「ししし、信じるよ僕は」と反射的に声がでてしまった。一拍開けて正気に戻り、ちょっと驚いている鷺宮さんに対して目をバタフライさせながら言い繕う。



「そ、その、どんなに耳を疑うようなことだったとしても、僕は鷺宮さんを信じるよ。今のところ、この卵の存在を知ってるのは僕と鷺宮さんだけなんだからさ。だから、その・・・それに、この卵が一体何なのか解明するためにも、どんな情報でも頭に入れておいた方がいいだろうし!」



 頭が熱を持ってるせいで正直自分でも何を言ってるのかよくわからなかったけど、僕が言い切ると鷺宮さんは「ありがと♪」と、満面の笑みをプレゼントしてくれた。



 だだだ、だから、その笑顔が僕をより一層加熱させちゃうんだってば。



「それにしても・・・うーん、見えないし触れない卵かぁ。正直もうあたしにはさーっぱり! これが一体どんな物なのかとか全然わかんないや。アハハ」



 一瞬悩んだ素振りを見せてまたあの笑顔だよ・・・なんて言うか、ズルいよ。その笑顔は。



 ――――とまあ、僕の個人的感情はさておき。



 鷺宮さんの言うとおり、確かに僕にもこの卵が一体何なのか、どういう仕組みでこんな怪奇現象を引き起こしているのか、僕だってもう完全にチンプンカンプンだ。

 こうして卵を持っているのは僕と鷺宮さんの二人だけ。しかも鷺宮さんはついさっき手に入れたばかりらしいし、このままだと謎の解明には程遠いな。



「おい、こんな人通りの多いところでソレの話をしてちゃ見えない奴らに不審がられるぞ」



 悩ましい顔で卵を見ていたら突然、僕らの背後から意味深な言葉を浴びせらた。二人して揃って振り向いてみるとそこには、昨日、僕から逃げるようにして去っていったあの、天喰くんがいたのだった。


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