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魅惑のウサギ 後編

 肉感溢れるウサギ。

 その柔肌に触りたい欲求は、常人に抗えきれるものではない。撫でて欲しいとの要求に青年は答え、ついに禁断の楽園に向けて手を伸ばす。 


「……こっ、こうすれば良いのかな?」


「ああんッ! 優しくねぇー」


 青年はウサギの頭部に触れると、ウサミミの暖かい感触に感動を覚えた。また白銀の細い髪からは生糸(シルク)のような滑らかさと、それにしなやかさが伝わる。


「優しく……こうかな?」


「うんっ。そんな感じぃ。そっと撫でるんだよぉ。そうして貰うとぉ、スッゴク幸せを感じちゃうぅ……」


 青年は過去を振り返る。

 これほどまでに暖かく、かつ柔らかさを感じた事など物心がついてからの記憶になかった。

 撫で続けると、ウサギはより密着してくる。身体の奥底から湧き起こる愛くるしさは、限界を余裕で突破した。


「あんッ! スッゴク上手ぅ。ねぇ……他でもしてるの?」


「そんなわけないだろ……君だけさ……」


 気分だけはプレイボーイと化した。だけど所詮は童貞。

 そんな現実は何処かに置いてけぼりにして、大人の階段に片足を乗せる。どうするかは本能が教えてくれるはず。青年は従う。


 両腕を伸ばしてウサギを抱き締めると腰の細さに驚く。肉感的な見た目と大きく違い、それは華奢な女の子の身体つきだった。

 ……経験はないけど青年はそう感じる。


「気持ちいいのぉ。ずっと、こうしててねぇ」


「……あぁ」


 柔らかい肉の虜となった青年は、マッチを擦ってから起こり続ける異常事態に対し、なんの違和感や疑問も感じなくなっていく。ウサギと過ごす、このひとときを満喫するため、夢中で撫で回し続けた。続いて手が自然と剥き出しの背中へと移る。


「ひゃん、冷たぁいぃ。ぐすぅ……」


「あぁ、ごめんよ……でも暖かいな……」


「ううん。ちょっとびっくりしただけだからぁ、もう平気だよ」


 剝き出しの背中に触れた手の平が冷えていたせいで、ウサギが反射的に小さく震える。ただ、すぐに手は温まり、きめ細かい柔肌がしっとりと吸い付く感触が伝わった。


「ねぇ……」


 そうしているとウサギは片腕を立て上半身を起こす。自然と手は背から離れて、感じていた柔らかい感触が離れる。乳の谷間からは表情が見えた。

 肌のふれ合う時間は終わりかと、がっかりした青年は見上げると、ウサギの赤い目が一際怪しく妖艶に輝いたのに気が付く。彼女は恐るべき行動に移った。


 ウサギは豊満な下乳付近に腕を差し込んで、上に持ち上げる。

 そこにおっぱいに埋もれ隠れていた、小さなファスナーがあった。青年はウサギの意図が把握出来ず困惑する。するとウサギは切望を始める……


「ねぇぇ、これぇきっついのぉ……お願いぃ外してぇ」


「こっ、これか? ……い、いいのか……」


「おもいっきりぃ、引っ張るのぉ……」


 巨乳を抑制する衣装からの解放を望むウサギが叫ぶ。

 青年は目を一度だけ大きく開くと、意を決し震える手を伸ばす。僅か十数センチの距離が、果てしなく遠く感じてしまう。

 

 期待をする瞳が、青年の視線と混ざり。絡み合う。

 ウサギの頬はみるみる上気し赤みを増す。息は荒々しく猛々しくなって縦に長い瞳孔を細めた。


 そして遂に青年の指が、禁断の拘束衣(バニーコスチューム)に届く。

 小さなファスナーを掴む指先に力を入れる。小さく息を吐きだして欲望のまま一気に引き下げる。お臍付近まで一気に……


 まさに爆発だった。

 その言葉を選ぶ以外に選択肢は存在しない。青年はそう思った。口からは……


「な、なんて、凄いんだ……」

 

 心からの驚愕が言葉となって飛び出す。


「ふぅ、苦しかった……ねぇ、嬉しいのぉ?」


「そりゃ、嬉しいに決まっているよ。綺麗だよ」


 解放されたウサギの表情はきっと素敵な笑顔だろうと、青年は声から予測する。なぜなら解放されたおっぱいで、その表情は隠れて見えない。顔全体を覆い隠すように被さっているからである。


 拘束から解き放たれ自由を得た(おっぱい)は、優しさを兼ね備えた暴君と化した。

 そこから溢れ出すのは、青年が長年の間求め続けていた母性そのもの。剥き出しになった乳房から漂う、より一層の甘くとろけさせるような体臭を胸一杯に吸い込んだ。


 鼻腔を埋め尽くす香りで、視界は薔薇色に輝く。そして、ウサギからは……


「……あんっぅぅ」


 堪えきれなくなって、行き場を無くした吐息が漏れる。

 それは春のそよ風のように青年は感じる。耳朶を震わせ、脳を揺さぶる。蕩けさせる魔力があった。


 青年は全てがどうでもよくなった。

 目前に実在するウサギは、理想の女性を形容した姿だった。マッチを擦る前に思い浮かべたのは、素敵な彼女。まさに願いが叶った瞬間だと言える。


 腕を回して抱きしめていると、至福の一体感に包まれる。

 人肌の恋しさが、青年の心を掴んで離さなかった。その前では、もはや理性や常識など吹き飛んで霧散する。


 衣装の拘束から解き放たれ、剥き出しになった乳房に顔を埋めて、両腕で揉みしだく。吸い付いていると、ウサギの切ない艶声が室内に反響する。

 魅惑の体験に没頭し続けると、遠慮がちに呟く声が聞こえた……


「……ねぇ。あのね……」


「……どうしたんだい?」


「ねえ……私の名前を呼んで……それで、ぎゅっとしてくれる?」


 それは、ウサギからの懇願だった。遠慮がちな声で、不安がその声に込められていた。

 それを聞いた青年に断る理由などない。むしろ望むべき要求だったので……


「あぁ、じゃあ。名前を教えてくれるかい?」


 そう答えた。すると本当にうれしそうに弾む声でウサギは……


「……嬉しい。ありがと。えっとねぇ……私の名前は、○*%D豈f&-澆j裨……」


「えっ……なに? ……聞き取れ……」


 ウサギの話す言葉は途中で理解不能に変わる。それは青年に理解できなかった。その時、唐突に視界が白く霞んで、次の瞬間に暗転(ブラックアウト)する。


 自分を中心に世界が廻り続けた。

 床が泥沼のように変わり、体が沈み始める。最後は全身が飲み込まれて、全てが暗闇に包まれた。どこまでも深く沈んでいく……

 それでも、青年は抱き締めた腕を緩めることはなかった。ウサギも必死に何かを話し続けているようだが、どうしてもそれを聞き取る事は出来なかった……

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