表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/21

ミックスジュース。。。

藤本さん、ピーコンと食卓を囲む。寿司は美味いが…おふくろのことが頭に過ぎってしまう。

ジョバンニもおふくろも。悲劇の主人公を気取る、わけではないが、煙草の本数が増える。

「てっちゃん。大丈夫だよ。おばちゃんなら。元気になって戻ってきてくれるよ。絶対」

「そうだな。絶対に」

「そうですよ、哲夫さん。お母さんなら、大丈夫ですよ」

「ありがとな。ピーコン」

鈴鹿か。どうしても、F1で帰ってきてみたかった。電話が鳴る。布袋さんからだ。

「哲夫君、明日、鈴鹿へ来てくれ。イベントに参加してくれないか。勿論、藤本君も」

「それ、パスできないのか」

「スポンサーの手前、難しい。何かあったのか」

「別に何もないよ」

「じゃあ、来てくれよ」

俺は、ビールを一口飲んで、一瞬、ためらった。F1に恩返しをしなくちゃ。決まり」

「それじゃあ行くわ」

「待ってるよ。藤本君にもくれぐれもよろしくな」

「ああ」


部屋と帰る。子供の頃に書いた作文。

『僕はF1レーサーになって、ワールドチャンピオンになりたいです』

セナのポスターに目をやる。哀しい瞳を持つ男だ。もう、これ以上に速い男は出てこないだろう。

伝説か。セナが走った鈴鹿。セナが泣いた鈴鹿。アイルトン、俺達に力を貸してくれ。

「てっちゃん、コーヒー、飲もうよ。俺も、F1まで来れたよ。お互い、やることがわんさかあるな」

「ありがとな。お互い、頑張ろうぜ」

「接触だけはやめてくれよ」

俺は笑うことを選択した。それも苦く。笑えた。

「勿論。俺、クルマの運転、上手いから」

「そうだな。俺もそれだけが取り柄だよ。俺達、F1レーサー坂口哲夫。F1レーサー藤本弘人。まあコーヒーでも飲もうや」

藤本さんとコーヒーを飲みながら、話すは、タルキー二が思ったより速いこと。フォードエンジンがよく回るということ。

「なかなか、乗りやすそうだね。トラクションコントロールは、どうなの」

「いい。凄くいい。それこそ、乗りやすいよ」


俺は、寝酒に赤ワインは飲んで、布団にもぐった。ミハエルの言葉。誰かを愛せ。そうしたら、もっと速くなる。

今はそれどころじゃないよ。ミハエル。俺だって誰かを抱きたい。まあ。いいか。寝ようっと。


夢を見た。俺が侍の格好をして、切腹して、歯が溶けて、僧侶に殴られる夢。目が覚めた。時計は5時12分。藤本さんは熟睡中。いびきをかいて寝てる。きっと、疲れてたんだろうな。でも、二人そろって、F1に乗れる。俺はマルボロに手をやって、火を点けた。ちょい、走ろうか。なんだったんだろう、あの夢。俺はジャージに着替え、玄関を開けて、走った。走るのはクルマでも、こうして、足で走っても、俺にとっては快楽で、嬉しいことだ。ふと、ジョバンニの笑顔が、恋しくなった。俺たちは走り続ける。それが仕事であり、最も得意とすることだ。コンビニでパンとパスタを買う。


喫煙所で一服。さて、行くか。待ってろ。鈴鹿。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ