表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/21

ビューティフルドリーマーINFormula1.

雨は激しくなる一方。フィオラノの最終コーナーを幾度もくぐる。焦ることは何もない。右足、左足。藤本さんからの電話でホッとしたのだろうか。俺は走り続ける。無線。布袋さんからだ。

『哲夫君。こちらのデータではサスペンションのセッティングにミスがある。ゆっくり流してくれ』

『了解』

『コース上で0,8秒、稼いでくれ。仮想のモンツアだ』

『わかってるよ。笑わせるなよ』

 よし。ペースアップ。きっちり、0,8秒、稼ぐぞ。タイヤは上手く、機能している。エンジン、シャシー、に問題なし。深くアクセルを踏んだ。そうだな。仮想のモンツア。ルーティーンを試してみるか。ジョバンニに伝えた。『OK。哲夫。BOX。BOX』と応えてくれるジョバンニ。よし。仮想のルーティーンだ。ピットレーン手前でブレーキを踏み、エンジンブレーキを試す。給油。タイヤ交換。勿論、レインタイヤを選択。捨てバイザーを外し、ピットアウト。

『どうだ。ジョバンニ。0,8秒、稼げたか』

『哲夫。あなた、カンペキ。きっちり、0,8秒稼げているあるよ。アンダーカット成功ある。後、一周したら帰ってあるよ』

『了解』

 俺は走る。雨だろうが、雪だろうが。アツくなりすぎたな。よっこらせ。ピットイン。心地の良い、疲れが残った。『愛』。ミハエルが言ったキーワード。これが頭を過ぎって仕方ない。おらへんかな。ええ女。リカルドと言葉を交わす。

「グッドジョブ」

「サンキュー」

 俺はフィオラノからモンツアへとのんびり、布袋さんが運転するクルマで帰る。車中。思ったことは言おう。同じ日本人として。

「布袋さんよ。ミハエルに好きな女性を探せ。と言われたんだ。俺、彼女もいないしよ、それが俺に足りないものだと。愛を知れば、俺は、もっと速く、走れるんだとよ」

「それか。確かに言えるかもな。ナンパでもするか」

「馬鹿野郎」

「それもそうだな」

「哲夫君はアツくなりすぎるんだよ。一つのものしか見ていない。そうだろ」

「自己分析ではその通り。俺、運転、替わるわ」

「言うと思ったよ」


 モンツアのホテルでテレビを眺める。「FerrariTV」と題して、特番が始まった。ライコネンとマッサが笑顔で、モンツア、イタリアグランプリについて、語っているようだ。俺はテレビを消して、明日のモンツアの予選に想いを馳せる。バスタブにステアリングを持っていく。そして、昔からのレースの前の俺なりの儀式。レーシングスーツを着て、シュミレーションを行う。ギアを変える。ブレーキを踏む。アクセルを踏む。緊張が増してきた。天気予報。明日、明後日のモンツアは晴れ。挑む。F1。今日は寝るか。ワインを寝酒に。


 パドックパス。モンツア。様々なヒーロー達がいる。客はティフォシで溢れてる。布袋さんと、朝の挨拶を交わす。ジョバンニが大急ぎでやって来た。トラブルなんてイヤだよ。どうしたというのだ。

「哲夫」

 ジョバンニは言う。脂汗をかく俺。でも、問題、トラブルではなかった。ジョバンニは続ける。

「哲夫。フォードエンジン、ベンチテストで良く回るエンジン、供給されたあるよ。今、ガブリエル達、メカニックがエンジン交換。更に速い」

「ジョバンニ。そう興奮しなくてもいいよ。今日の目標はまず、シングルグリット獲得。そういうことだよ」

「スマン。ゴメン。そうあるね。哲夫。彼女、デキタアルカ」

「出来ないよ」

「スマン、ゴメン。予選で笑おう。ジャパニーズサムライドライバー」

「ジョバンニ。笑えないよ。それ」

 布袋さんと大笑い。リラックスリラックス。ピットへと三人で歩く。リカルドも笑顔。スタンドに日の丸。挨拶をしてくれた、同志がいた。鈴木亜久里さんだ。

「哲夫君、頑張ってね。F1は生き残ってなんぼだからね。コンペティション、お互い頑張ろうね。スーパーアグリの前には出るなよ」

「あ、はい」

「冗談だよ。俺も哲夫君のこと、応援するよ」

「はい。ありがとうございます。頑張ります」

 1990年の日本グランプリの亜久里さんに魅せられて俺はここにいる。時は何やら。俺は、黒いレーシングスーツに袖を通す。おもわず十字架を切る。俺は走る。俺はこのためだけに走ってきた。レーシングシューズを履き、ゆっくりとマシンに乗り込む。エンジン音がこだまする。ピットレーンのシグナルが今、青に変わった。チームラジオ。

『こちら、布袋。哲夫君、Q1はタイヤを大事に使って。Q2。Q3。のことも視野に入れるんだよ』

『あいよ。行きます』

フェラーリ、マクラーレン。ルノー。HONDA。ウイリアムズ。レッドブル。トロロッソ。ここからはよく見える。これも勉強か。さて、アタックしますか。用意ドン。色んな意味でアツい。アウトインアウト。俺は行く。ザウバーがコースアウト。おっと危ない。速い。高速モンツアでこのタルキーニは速い。無線が言う。ジョバンニからだ。

『哲夫。グッド。8番タイム確定ね。戻って、ピットへ』

8番時計か。まあ、そこそこだな。Q2進出が確定。トップは、ベッテルか。2番手、3番手にやっぱり、フェラーリ。マッサ。ライコネンと続く。夢のような瞬間だ。よっしゃ。少し、休もうっと。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ