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13/21

快楽。それは走りをデッサンすること。

ああ。夜なんて短いものだ。トイレで小便をすます。鈴鹿。サーキットか。よいしょ、布袋さんに電話。

『ああ、俺だ。今、起きた。バイクで迎え頼むわ』

『了解。哲夫君』


歯磨き。鏡の中の俺。疲れてるなぁ。俺がF1レーサーかよ。ここまで、来た。後は、前に走る奴等をぶち抜くのみ。容赦はしない。おふくろ。真佐子。親父。これが今の俺に出来ることだ。


布袋さんのバイクにまたがり、サーキットへ。パドックパスをゲートに通し、あっ、いきなり。アロンソ。

「テツオサン、ニホンジン。スズカ。ガンバッテェ」

「サイン、プリーズ。ありがとう。フェルナンド」

アロンソは気さくに、俺のチームウェアにサインしてくれた。マッキー、持ってて良かった。

フェルナンドのチャンピオンシップは邪魔にしない。マッキー、持ってて良かった。


タルキーニのピットへとぼとぼ、歩く。モーターホームで、レーシングスーツを身にまとう俺。

ああ、煙草が吸いたくなった。喫煙所で布袋さんと語る。

「ストレートスピード、うちはどうなの。やっぱり、マクラーレンやフェラーリ単位では遅いのかなぁ」

「そうだな。正直に言うと、0,9ほどは遅いかも。でも、フォードエンジンは前回のモンツァよりよく回ってるみたいだ」

「そうか。布袋さん、今まで、色々ごめんな。何か、俺、空気が読めない男だから」

「いや、それは、こっちの台詞だよ」

男二人。喫煙所で、語るはアイルトンセナ。アランプロスト。ミハエルシューマッハ。

「哲夫さーん」

「ピーコン。ありがとう、来てくれたんだ」

「はい。これ、お饅頭です。お母さん、大丈夫ですよ。応援するって伝えて。と言われてました」

「そうか。ありがとな。ピーコン。ピットで饅頭、食おう」

「はい」

ピーコンは笑顔を絶やさない。さすがは救世主だ。タルキーニの親父は嬉しそうに饅頭を食っている。ピーコンと談笑。走る幸せ。走る快楽。時計は11時をさした。

「哲夫君、Q1、よろしく」

布袋さんも笑顔。うなれよ、俺。コックピットに身を納め、出陣。クラッチ。軽いな。ヘルメットをかぶり、グローブを右手左手にはめる。右手を、上げる。エンジンがかかる。よし、鈴鹿に恩返しだ。

アクセルを踏み、ギアを1速に入れて、ピットを出る。無線。

『哲夫君、聴こえるか』

『ああ』

『タイヤ、エンジン、クルマに問題はないか』

『全くない。上手くまとめられそうだ』

『了解』

タイヤをあたためる。左右にマシンをふる。ステアリングのドリンクのボタンを押し、水分をとる。よし、シケイン。加速だ。アクセル、俺を前にやる。1234567。Q1如きで負けてたまるか。俺は俺に言い聞かせ、行く。



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