微笑み返し。。。
鈴鹿。俺たちの原点。ここにF1で帰ってこれた。布袋さんと藤本さんが雑談。真剣にフォードエンジンとタイヤについて、話を詰めている。ぴかぴかに光る、タルキーニの黒いF1マシンが二台。俺もリカルドと笑顔で接する。
「哲夫君。イベントの準備、そろそろしておいてね。スポンサーの手前もあるし、チームウェアに着替えておいて」
「はーい。布袋さん」
「おっ今日は機嫌がいいね、哲夫君。藤本さんもモーターホームで着替えちゃって」
「3号車、了解しました」と俺が爆笑し、「4号車、了解しました」と藤本さんが爆笑する。布袋さんも笑った。
「それでは、タルキーニF1チームの、坂口哲夫選手と藤本弘人選手です」
スーツを着た、アナウンサーっぽいイベントの司会者が汗だくになって、こう言った。
イベント会場にはテレビカメラ三台と、一眼レフを持ったカメラマン達が数人。日の丸を持った人。俺達を楽し気に見てくれる老若男女が100人ほど。嬉しくなってきた俺はまぬけにこう言った。
「どうも、日本一速い男、第二のアイルトンセナ、坂口哲夫です」
爆笑の渦。そして、藤本さんも続けるように笑いを獲った。
「どうも、俺も日本一速い男、第二のミハエルシューマッハ、藤本弘人です」
会場の一番前に座っていて、我らがタルキーニのチームウェアを着てくれて、なおかつ俺の名前と藤本さんの名前が刻まれている、日の丸を持った、優しそうなおばあちゃんが、ニコニコと楽し気に微笑み返し。
そのおばあちゃんに司会者がマイクを向けた。
「おばあちゃん。何か、坂口選手と藤本選手に質問、聞いてみたいことはありますか。
おばあちゃんの喜ぶ顔が癒しになった。
「お二人の子供の頃の夢はやっぱり、F1でしたか」
俺が話そうとする前に藤本さんがおばあちゃんやファンのみんなにこう言って、またまた、笑いを獲った。
「僕は画家になりたかったんですよ。でも、何故かしら、気づけばクルマに乗っていました。盗んだバイクで走っちゃ、捕まりますよ。でも、てっちゃんは、子供の頃から、F1、F1と暑苦しいぐらい叫んでいました。僕より、少し速いので、時々、やきもちを焼きます」
おばあちゃんは笑顔で言葉を続ける。ほんと、心から嬉しそうに。ニコニコと。そして、力強いメッセージをおばあちゃんからいただいた。
「是非とも、フェラーリをやっつけてください」
俺と、藤本さんの声が重なった。二人同時にこう言ってしまった。
「はい。フェラーリをぶち抜きます」
会場からは大爆笑。俺達、ドリフターズ、大爆笑。インフォーミュラ1だ。
それから、サイン会が始まった。色んな人に励まされ、俺達は明日から鈴鹿でF1をやる。イベントは嫌だと俺は、言ったけど、真逆。たくさんの人たちから、応援メッセージをいただいたのは誇りに思う。
モーターホームに入ると、メカさんがマシンをいじる。藤本さんのシート合わせが始まる。俺達の目の色が厳しく変化していく。布袋さんが通訳してくれた。
「哲夫君。今時点で、多少のアンダーステアとオーバーステアが少しでるかもしれない。ということ。明日の予選までには改善すると、みんな言ってるよ」
「ありがとな」
「哲夫君。ちょっとイベントで疲れただろう。サーキットホテルで少し休みなよ」
「そうだな。布袋さんのように念には念をおして」
「こんな、マメな暑苦しい俺でごめんな。とにかく、良いマシンを用意するよ。タルキーニの親分も明日、ここに来るから、それまで、哲夫君、休んでおいて。俺は藤本君のシート合わせを手伝うよ」
「おおきに」
「おおきに」と布袋さんの笑顔。さてと、原付にまたがり、ホテルで一服しようか。F1。暑苦しいほどの男たちの情熱。明日の予選、いい位置につけるように頑張らなきゃ。
おふくろ。親孝行が遅くなってごめんな。俺も藤本さんも全力を尽くすよ。
堂々と俺達は明日へ行こう。希望を持って。




