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アクセル。俺を前にする。F1、俺達の自由への獲得。

この道は何時か来た道、鈴鹿サーキット。セナもアレジもシューマッハもこの道を走っているのだ。フォーミュラジャパンのチャンピオンは俺。昨日、ついに決めた。F1からの誘いも来ている。この先、どうなる、俺。そんな事を考えつつ、ピットにクルマを戻した。我等が愛するジュゼッペレーシング。監督が言う。

「おい、哲夫、電話だぞ」

「誰から」

「お前の妹」

げっ。真佐子かよ。あいつとは犬猿の仲。俺は餓鬼の頃からレースばかり。俺は酒屋の息子。それも長男の長男。なのに、店は親父、お袋、妹がやっていた。酒屋が倒産し、店はコンビニになった。親父は一昨年、過労で死んだ。そして,お袋が店長になり、妹が副店長になってしまった。

「今、どこ」

「サーキット」

「だから、どこのよ」

「鈴鹿だよ」

「あんたって人は、わからない人だな」

「で、何の用だよ」

「お母さんがぼけたの」

「俺には関係ないだろう」


 関係ないと言いつつ、やはり、お袋。俺を産んでくれた人。やはり、チームメイトの藤本と実家のある千葉へと向かった。

「てっちゃんよ、F1、行くのか」

「まだ、わかんねぇなぁ」

「俺より、速いんだから、行けよ。せっかく、タイトル、獲ったんだからさぁ。俺なら迷わず行くよ」

藤本は、十七の時、両親を亡くしている。俺の両親は彼を家族の様に思っていて、俺達がレースで金に困った時には金も出してくれた。


あっという間に千葉に到着。家に帰ると、お袋が、よだれをたらし、テレビを観ながら独り言。

「お兄ちゃんさ、何でこんなもの作ったの」

「作ったんじゃないの。フランスからわざわざ来てくれた救い主なんだよ」

「あ、そう。馬鹿げて話にならないわ。勝手にすれば。藤本さんも」

「冷たい奴だな。てめぇは」


『もし、よろしければ、居候させてくれませんか。僕、レースが大好きで、哲夫さんや藤本さんの事、調べたんです』


それでもって、坂口家に居候している良い奴だ。身長は28、5センチ。向日葵に顔と手があり坂口家の友であり、ベストパートナーだ。グッドラックだ。花科人だ。ナイスガイだ。愚痴は言わない、喧嘩もしない。俺達を癒してくれるAB型の立派な男だ。

「お袋、ただいま」

お袋は何も言わず、俺と藤本にも、気付かない。


「哲夫さん、藤本さん、お帰りなさい」

ピーコンが来た。やはり、笑顔を絶やさない。

「お母さんの事は僕に任せてください。それより、新聞を観ましたよ。F1、今から楽しみです」

「ありがとな。でも、どうしよう。俺、お袋の側にいてやりたいんだ」

「そうですか。哲夫さんが、そう言うのなら、一緒に頑張りましょう」

「ピーコン、おいで」

「はい」

お袋が喋った。ピーコンはぴょんぴょんと飛んで、跳ねて、お袋の膝の上。お袋はピーコンを撫でる。そして。言った。

「人なんて勝手なもんなんだよ。この二人はレースの事しか考えてないのよ。私の事なんて何も想ってくれない」

お袋が泣き出した。複雑であった。何度、事故を起こしてお袋に心配をかけただろうか。後悔、するならもう、遅い。

「てっちゃん、ちょっと、監督から電話だわ」

「もしもし、哲夫か。FIAが藤本にもスーパーA級ライセンス、出したわ。哲夫、約束するからよ、お前等、二人、来年だけは残ってくれないか。頼むよ。F1へ行きたい気持ちはわかる。そこのところ、本当に頼む。来年だけでいいからよ」

「今、それどころじゃないんだよ。俺等、他にやる事があるから、レースは二の次」

「そこのところを…」

「哲夫さん、僕に任せて下さい」

やはり頼れる存在、救い主。ピーコンが話を進めてくれている。

F1か。あの日、テレビで日本GPを観てなかったら今の俺はいないんだものな。セナに憧れた、あの日。夢見た俺は、地元でレーシングカートを始めた。藤本さんとはそこからの友達。俺は速く走れなかった。対照的に藤本さんは二年目で東日本カートチャンピオン。三年目で全日本チャンプになった。俺は彼から学んだ。藤本さんの後ろを走り、高校も同じ学校を選んだ。俺にチャンスが来たのは、十八の夏である。ジュゼッペレーシングからテストドライバーの声が掛った。監督は俺にフォーミュラカーをプレゼントしてくれた。走るに走った。そのうち、クルマをセットアップするようになり、藤本さんに提供する日が続いた。高校の卒業と同時に俺達は鈴鹿に住む事となった。そして、フォーミュラのレースになると、俺はスムーズに走れ、二十歳でフォーミュラジュニアのチャンピオンとなった。対照的に藤本さんは、カート以上に苦戦していた。


「哲夫さん、話はまとまりました。一カ月、待っていただける事になりました」

「ありがとな」

「ピーコン、おばちゃん、どうしたの」

「いや、いきなり、倒れちゃって、病院も嫌がられて…。僕等で何とかしましょう」

「何とか出来るの。だいたいね、あんた、人か花かわからない、人形みたいな奴に何も出来るわけないでしょう」

 お袋が真佐子をぶった。

「真佐子、ピーコンは私の息子」

真佐子は泣き始めた。そして、

「勝手にすれば、私、もう限界の限界」

と言って、玄関に走って行った。ピーコンが追いかけるが、後の祭り。真佐子は自転車に乗って、出て行った。

「ピーコン、ピーコン」

とお袋が叫ぶ。

「はい。今、行きます。哲夫さん、藤本さん、カレー、真佐子さんが作ったのがありますから、ここは、二階にいてください」


 セナ、アレジ、シューマッハのポスターが並んでいる。カレーを食べる、男二人はF1も遠くない。しかし、今はそれどころじゃない。

「これから、どうするよ」

「おばちゃん、大丈夫かな、一回、病院へ連れていったほうがいいよ。ピーコンにだって、無理があるわ」

「わかった。明日、石川先生とこで診てもらうか」

「そうだよ」

「ちょっと、俺、お袋、見てくるわ」


階段を降りる。ピーコンがお袋を笑わせている。意味も無く、冷蔵庫を開ける。どうしよう。思いばかりが先走る。

「お袋、明日、石川先生のとこ、行こうか」

「行かない」

「お母さん、行きましょう。哲夫さんも藤本さんも帰って来てくれたんです」

「じゃ、行く」

 お袋はそのまま、寝てしまった。



「疲れからきてるね。紹介状書いとくから、精神科、行ってみてくれるかな。森下さん」

「精神科ですか」

 お袋は、ぶつぶつと言いだした。

「石川先生のところでは、どうにか、ならないんですか」

「薬も無いしね。おばちゃん、一度、ゆっくりしたほうがいいよ」

 参った。でも、仕方がない。後部座席で暴れだすお袋。

藤本さん、ピーコン、お袋を乗せて、森下病院へと向かった。複雑の中の複雑。お袋が喚き散らし、俺はブレーキを踏んだ。やはり、ピーコンである。

「ピーコン、何か良い方法はないかな」

「はい。ボンジューラに聞いてみます」


 ここでピーコンを紹介しよう。向日葵である父、ボンジューラと優しい母、ダイアナの愛すべき息子。1988年10月10日生まれ。本名、ボンジューラグッドラックオブラブアンドピーシングダイアナジュニアピーコン。

F1ワールドチャンピオン、アランプロストに『明るく前向きに生きるのだよ』と命名される。マンセルに憧れたピーコンは、ゴーカートを当時、在住していたパリのハミルトンレーシングクラブから、プレゼントされる。かつてのライバルに、フェルナンドアロンソ、キミライコネン、佐藤琢磨、セバスチャンベッテルがいた。当時、ピーコンはクラスメイトであったジーンドーターと結婚。やがて、悲しい離婚も経験した。

一度、ミハエルシューマッハとブラジルのトーク番組に出演。シューマッハとお忍びでセナの墓参りへと行った。その際、ピーコンの話によると、シューマッハはセナの眠る公園墓地で号泣していたらしい。

好きな色は赤、青、黄色。レース美学をしっかりと持っており、世界三大レースと云われる、ルマン二十四時間レース、インディ500マイル、そして、勿論の事、F1モナコグランプリを観戦している。

大のフェラーリファンで、エンツオフェラーリのサイン入り色紙をジャンアレジからプレゼントされ、涙した事は、記憶に新しい。母国語であるフランス語、英語、ポルトガル語、ドイツ語、そして、日本語を巧みに使う、知的で頼もしい救世主なのである。


1997年来日。饅頭が大好きである俺と藤本さんへの口癖は、「お饅頭、近藤屋まで買ってきます」である。買い物、料理が上手であり、彼が作る、すき焼きは、俺達の舌を魅了する。日向ぼっこを毎日、欠かさない、元気でポジティブな花科人である。


趣味は読書と俳句と川柳。愛読書は、『明日のジョー』『F』『アイルトンセナの生き様』『鈴木亜久里のレースってなんだろう』等々。達筆であり、日本俳句倶楽部の会員でもある。時折、お袋と映画を見に行く。好きな映画は、『ゴッドファーザーパート3』サッカー、ボクシングにも詳しく、あの伝説の試合となった、『辰吉対薬師寺』を名古屋市総合体育館で観戦。Jリーグポケベルをボンジューラへ父の日にプレゼントした素晴らしき思い出話もある。ちなみに着メロは君が代である。


「てっちゃん、F1やってるよ。ベルギー」

「あ、見逃すとこだった」

「それにしても、琢磨って速いよな。また、ファーステストラップだよ。亜久里さんもいいクルマ、作ったよな」

「今、六位か。俺達も、本当、走っていいのかなぁ」

「そこが、てっちゃんの悪い癖だよ。遠慮がちでこの世界、渡れるかよ」

「そうだな」

「俺もオールージュ、F1で走りたいよ」

「登って、下ってか。何か、人生ってそんなもんなんだろうな」

「いきなり、詩人になるんじゃないよ」

「そりゃ、そうだ」

『トップ、キミライコネン。二位にルノー、フェルナンドアロンソ。三番手に、ルイスハミルトン。そして、我等が日本。佐藤琢磨は今、五番手に上がりました。トヨタの二台はトゥルーリ、七位、グロッグが九位と健闘しております』

 男二人はテレビを観ながら、カレーを食らう。はあ、溜め息、二つ、三つ。これから、我が家は、いったい、どうなる。でも、この前、良い事あった。


チームのイベントに俺の完璧理想の女優、管野まなみさんが来てくれた。ヘルメットにサインを貰って握手もしてくれた。管野さんは、可愛く、こう、言った。

「あの、クルマに座ってみたいんですけど。いいですか」

「も、勿論、どうぞ」

「やっぱ、狭いんだ。これで走ってるって、凄いね」

 本当にきれいな人だ。さすが、世界の管野まなみさんだ。凄く良い人だ。電話番号とアドレスまでをも、交換してくれた。

「お互い、忙しいけど、頑張ろうね。どんどん、メールしてきてね」

「いいんですか」

「勿論」

 可愛い笑顔で完璧なる女、本物の管野さんは、本当に美しくきれいな人だった。


自称千葉のアイルトンセナと自称千葉のアランプロストは牛乳を一気に飲み干した。部屋にはトロフィーやメダルがずらっと並んでいる。今日も一つ増えた。赤い俺のヘルメットとレーシングスーツ。ここまで来たなら、やるだけやっちまうか。

「残り五周か」

「ライコネンにしてもアロンソにしてもワールドチャンピオンだもんな。上手くまとめるよな」

「そうだな。フェラーリ、やっぱりきれいだよな。ピーコンも喜ぶよ」

「知ってる。ピーコンさ、F1しりとり、負けたことないんだって」

「おたくの中のおたくだな」

「本当、救世主だよ」

「お、すげー、琢磨、バリチェロのスリップに付いたよ」

「いけ。いけ」

「バリチェロもさすがにしぶといな」

小学生の頃に描いたアイルトンセナの絵に目をやる。夢か。追い続けてきて良かった。拝啓アイルトンセナ様、俺達に力、貸してください。お願いします。

『さあ、ファイナルラップ。ライコネンが意地のファーステストラップ。さあ、佐藤琢磨がやって参りました。バリチェロに肉迫。その差は、0、637。右京さん。これは面白くなってきましたね』

『そうですね。さあ、射程距離だ』

「これ、焦んないほうがいいよな」

「もう、いくしかないだろう」

『さあ、今年のベルギーグランプリ。ライコネンに今、チェッカーフラッグ。二位にアロンソが入りました。さて、画面が切り替わりました。バリチェロ対佐藤琢磨。最後のバスストップシケイン。バリチェロ、押さえました。それでも、良く頑張ってくれました。佐藤琢磨、四位。四位でチェッカーを受けました。トヨタの二台も来ました。ダブル入賞です。トゥルーリが六位、グロッグが意地の1ポイント、八位です。右京さん、良いレースでしたね』

『本当、琢磨選手、惜しかったですけど、魅せてくれましたね。鈴鹿が本当に楽しみになってきましたね』

『そうなんです。週末、鈴鹿から嬉しいニュースがありました。フォーミュラジャパン最終戦で日本人ドライバー、ジュゼッペレーシング、坂口哲夫選手がチャンピオンを決めてくれました』

「え、俺の話題」

「そう、てっちゃんの話題」

『その坂口選手のインタビューをご覧ください』

「え、俺、インタビューなんかしてたっけ」

「うん。凄く、嬉しそうにやってた。観ようぜ」

『まずはおめでとうございます』

『ありがとうございます』

「恥ずかしいよ。チャンネル、替えようよ」

「いいの。いいの」

『そうですね。まあ、最終戦までもつれたんですけど、何とか、クルマの調子も良かったですし、トラブルもなかったんで、いい形で決められたんで良かったです』

「俺、こんなこと、言ったっけか」

「うん、すっげえ、かっこつけて、言ってた」

『F1に参戦という噂が出ているのですが』

『そうですね。具体的には言えませんが、オファーを受けているのは確かです』

「すっげー、かっこつけてやんの」

「俺、めちゃめちゃかっこ悪いよ」

「てっちゃん、赤面し過ぎだよ」

「かたじけない」

『右京さん、また、楽しみが一つ、増えましたね』

『確かにこれからが楽しみなドライバーの一人ですよね。僕も昔、ジュゼッペレーシングでお世話になりましたから、坂口君には頑張ってほしいです。クレバーなドライバーですし話題性も実力もありますからね。当時の僕と同じカーナンバー3なんで、愛着もあるんですよ』

「よっ、男前」

「もう、やめてくれよ」

「明日から有名人だな。悪いこと、出来ないぞ」

「はい。ふじもっさん」

「よろしい」

 ああ、恥ずかしかった。インタビューは情け無用だ。その話題性の主人公、ピーコンがひょこひょことポテトチップを持ってにこにことやって来た。

「ライコネンでしたね。フェラーリ万歳ですよ。哲夫さん、僕、嬉しいですよ。本当にレーサーしてる、坂口家は素晴らしいですよ。あ、お母さん、今、ベッドで眠っておられます」

「ありがとな。ピーコン、俺達もそろそろ、寝るか」

「そうですね。布団、持って来ます」

 ニュータイプ的なレーサーとよく言われるようになった。意味が分からないが、ニュータイプである俺は、テレビを消して、階段を降りて、お袋の疲れきった寝顔を見て、欠伸を一つ、残した。

 

 チャイムが鳴って、起きる俺。藤本さんはぐーすかと寝ている。玄関へ行くと、サイコロマートの制服を着た美人が立っていた。

「はじめまして。私、サイコロマート坂口店の池内といいます。息子さんのレーサーさんですよね」

「はい、レーサーですけど名前は哲夫です」

「あの、真佐子さん、いらっしゃいますか」

「え、真佐子、店にいるんじゃないの」

「いないんです。携帯も繋がらないし」

キッチンからトントンと朝の音がする。

「ちょっと。待ってね」

池内さんにぽつりと言って、キッチンへ行くとお袋が包丁を持って、ネギをみじん切りしている。え、もう、大丈夫なの。

「お袋、おはよう」

「哲夫、レースでしょ。早く準備して。監督に迷惑かけないようにね」

「レースはもう、終わったよ」

「レースでしょ」

 やっぱり、そうか。まだ、これには時間がかかりそうだ。ピーコンは日向ぼっこしているし、包丁は危ない。

「池内さん、上がってください」

「はい、お邪魔します」

「真佐子からお袋のこと、聞いてるだろ。ちょっと、頼むわ。包丁、持ってるし、俺じゃ無理だわ」

「分かりました。何とかしてみます。店長、おはようございます。池内です」

 お袋は彼女と時折、笑顔を浮かべながら話している。

「店長、包丁を私に貸してください。私も料理、覚えたくて」


 饅頭に食らいつく。さて、走るか。カッパを着こんで、さあ、行くか。走っていると全て、忘れられる。クルマでもこうして足で走っても。子供の頃に書いた作文。レーサーになりたい。その夢は果たした。この次はF1をやる。メラメラと俺の心の中に燃えるものが出てきた。しかし、今は今だ。全力疾走で家へと帰る。その途中にどこで聞いた女の声がした。

「てっちゃん。覚えてる。理香だよ。新聞、見たよ。タルキーニフォードだっけ。F1デビューか。夢、叶えてるね。シューマッハに会ったら、サイン、貰っといてね」

「理香ちゃん、変わらないな。中学の時と全然、変わってないよ。で、理香ちゃんはバスガイドになれたの」

「うん。やってるよ。よく、二人で車の話したよね。懐かしいなぁ。てっちゃんも変わらないし、頑張れ、F1レーサー」

 理香ちゃんは俺の初恋の人。あの頃の彼女と変わらない笑顔で名刺を手渡してくれた。

「お互い、頑張ろうね。応援してるよ」

「ありがとな」

 彼女は、一度、俺に手を振り、カブに乗って、走って行った。俺は、公園でミネラルウオーターを飲んで一息。ブランコに座り、饅頭を手にする。深呼吸するとイタリア国歌がポケットの中から流れた。ピーコンからだ。

「哲夫さん、今、どこですか」

「オリンピック公園だよ」

「分かりました。今、行きます」

 饅頭が美味い。口の中でワルツを踊っているかのようだ。この公園で餓鬼の頃、ソフットボールをよくしたものだ。想いは募る。空は日本晴れ。そういえば、ピーコンと初めて出会った時に彼は嬉しそうに川柳を作ってくれた。

『哲夫さん 必ず来ます F1デイズ』

嬉しかった。ピーコンに出逢えて本当に良かった。F1デイズか。俺は、救世主ピーコンを待つ。よっしゃ。そうだな。すべり台やってみるか。懐かしい。風になるのは、俺にとって至福の時。すべり台でしゃがんでいるとピーコンがぴょんぴょんとやって来た。

「お疲れ、ピーコン」

「お疲れ様です。ボンジューラと電話で話したんですけど、新陳代謝が良くなるドリンクを送ってもらえることになりました。スターハンチャンドリンクといいまして、かなり効き目があるみたいで、お母さん、すぐに良くなりますよ」

「それにしても、凄いネーミングだな」

「フランスと中国の共同開発でして、ボンジューラが脳内出血をやった時に凄く元気に回復できたんです」

 ピーコンをおんぶして、帰路に着く。


「何とか包丁は隠しときました。哲夫さん、サインしてもらいますか」

「いいですよ」

 坂口哲夫っと。俺のサインは漢字だ。分かりやすいのである。池内さんは笑ってこう言った。

「今日から、哲夫さんがサイコロマート坂口店の店長です。よろしくお願いします」

「えっ、俺が店長」

「そうです。店長です。改めて、店のためによろしくお願いします。店長」

 ちょっと、待て。俺はF1レーサーだ。ちょっと待て。

「俺、レーサーなんだけど」

「いえ、本日只今より、F1レーサー兼店長です。よろしくお願いします。店長」

「いや、だからさ」

「頑張りましょうね」

 池内さんは笑顔であった。池内さん、きれいな人だ。美人には弱い。よし、親孝行だ。素直に心中を話した。

「わかった。条件を飲むよ」


店へ行く。スポーツ新聞に、俺の記事と俺の顔写真。

『日本人レーサー坂口哲夫F1参戦決定』

とでかでかと。池内さんが気になる。ロングヘヤーの池内さんに果たして彼氏はいるのだろうか。

「池内さん。F1とかは観るの」

「観ないです。でも、ピーコンから、哲夫さんのことは聞いています。それに私を口説こうとしたでしょ。今」

「あ。まあ。はい」

「店長、私は結婚していて、子供も五人、います。店長、お仕事を頑張りましょう。うちの旦那はすっごくF1おたくですよ。夜中になると、セナのDVDを観て、走りを研究しているトラック野郎です。あの」

「はい」

「弘人君へとサインしてくれませんか。うちの旦那の名前です」

「ああ、いいよ」

「店長、ありがとうございます。今度、店長とうちの旦那とピーコンとで飲みに行きませんか」

「ああ、全然いいよ。シャンパン、おごってくれるかな」

「シャンパンは高いのでビールでお願いします」

「嘘、嘘。ちょっと、俺、金が入ったから、全部、御馳走します。俺の相棒、藤本さんっていうイケメンレーサーもお誘いするからね。口説いちゃダメだよ」

「はい。私は旦那と子供を愛していますから。でも、イケメンを眺めるのが趣味ですよ。藤本さんによろしくお伝えください」

「うん。言っとく、言っとく」


 池内さんからレジ打ちの指導を受ける。果たして、こんな俺に店長が務まるのであろうか。ピーコンに相談してみるか。と思った瞬間、大きなエンジン音がした。エンジン音が消えて、髭面でサングラスをかけた、ヤクザ映画に影響を受けていそうな、おっちゃんが店に入って来た。

「も、もしかして、坂口哲夫さんですよね。れ、レーサーの。え、F1レーサーの」

「あ、まあ。はい」

おっちゃんはこうデカい声で叫ぶように言うのだ。どうしたことか。

「みんな、おいで。F1レーサーが握手してくれるんだよ」

「はーい」

菊本幼稚園と印字されているバスには、大勢の子供達。子供、子供。子供。の声が連呼した。

「おっさんがF1レーサーなのですか」

 赤い服をみだらに着こなす、男の子に言われてしまった。おっさん。俺の心中をひもといてみた。意味はあまりなさそうだなのだが。

「こんにちは。アイルトンセナさんを知っていますか」

 今度は、頭が良さそうな、きちんとバッジをしている、『ぐしけんかな』ちゃんに言われた。

「勿論、俺にとってセナは特別な存在だよ」

と、俺がさりげなく、答えたそばから、「おっさんレーサーおっさんレーサー」と子供たちは連呼し、そのうち、「おっさんおっさんおっさんおっさん」と、子供たちのコールが始まった。俺は店長だ。

「君たち、あれだね。大きくなったらモナコで会おう」

とお寒いことを言ってしまったら、子供たちは一斉に言い出した。

「モナコモナコモナコモナコモナコモナコ」

そして、そのうち髭面のおっちゃんが語り出した。

「モナコか。セナを思い出すよ。真剣な話だ。君たちも夢を持つんだ。さあ、握手をするんだ。本物のF1レーサーとね」


 ああ握手会、大変だった。池内さんの体からは石鹸の良い香りがする。俺はレースを始めた頃から、バスタブにステアリングを持ち込み、レーシングスーツを着込み、ヘルメットを被り、熱湯の中、アクセル、ブレーキ、クラッチを頭の中で想像し、俺はレースのシミュレーションをやる。今でも、俺の夢の中には、アイルトンセナが生きている。サンマリノ。イモラ。1994年5月1日。セナの体は逝った。しかし、精神は生きている。そんな気がしてたまらないんだ。


「23番」

「はい。なんのことでしょうか」

「てめぇ、新入りか」

「本日より店長をしております」

「煙草だよ。煙草。責任者はお前か」

「はい。店長兼F1レーサーです」

「つまらないギャグはいいから23番」

「いえ、ですから」

「あ、もういい。マルボロ」

「かしこまりました」

「店長の真佐子ちゃんは」

「真佐子は、いません。僕が店長です」

「お前、あれか、もしかして、坂口哲夫か」

「はい」

「この不良息子が。俺のこと、誰だかわからないのかよ」

「いえ、初対面だと思うのですが」

「違う。菊本小学校の元教師。平野だ。思い出したか。このクソガキ」

「平野。てめえ、俺を散々こけにした、スパルタの平野か。てめえ、坂口店に喧嘩売ってんのか、このスパルタクソ野郎が」

「スパルタ。何を言ってる。俺は正しい教師だった」

「何が2キロメートル、全員遠泳だ。泳げなくても生きていけるだろうが」

「お前、いまだに泳げないのか」

「F1レーサーだ。俺は海には用がない」

「答えになってない。まあ、せいぜい、カッコつけて走るんだな。F1レーサーさんよ。泳げないレーサーか。笑えるぞ。情けねえ野郎だな。二度とこの店には来ないからな。お前のリタイアを望んでるわ」

「俺はあんたの不幸を望む。平野よ。わかったか。こら」

「はいはい。わかった。わかった。チャンピオンになって、先生孝行しろよ」

「てめえに孝行はしない。帰れ、平野。F1、なめてんのか、こら」

 俺はレジを蹴り壊した。こちらは速い。池内さんが事務所から一瞬にして俺達、まぬけな暴威、二人組の元へと走って来た。

「申し訳ございません。新店長は、新入りなものですから、ご勘弁、頂きませんでしょうか。本当に申し訳ございません」

 店の電話が鳴り響き、池内さんが、受話器に向かう。「申し訳ございません」を繰り返す池内さんが汗だくだ。


 あああ。とんでもない初日。家に帰ると、ピーコンが優しく、「おかえりなさい」と、こんな人間失格のような俺にキャンディをプレゼントしてくれた。「ありがとな」と言うと、知らないアドレスからメールあり。げっ。全文アルファベットだ。英語が俺には理解できない。やはり、ピーコンに頼る。

「哲夫さん、タルキーニF1チームからです。『哲夫さんにシート合わせをしてほしい。来週火曜日にイモラに来てくれ。フェラーリもホンダもトヨタもルノーも走る。それから、正式な記者会見をしてくれ。その後、テスト走行だ。待っている。フォルザ日本』ということです。哲夫さん、僕、嬉しいです。僕、こんな素敵なメール初めて読みました」

 ピーコンが涙を流した。この俺が、正式にF1に乗る。あの日、見た、夢。こみあげるものが俺にはあった。ここから俺の全てが始まる。アクセルを初めて踏んだあの日を想う。


キッチンへ行くと、何故だか、池内さんがそこにいた。

「何してるの。池内さん。もう、夜の九時だよ」

「店長、お魚は、大丈夫ですか。私、お寿司を握りました。F1デビュー、おめでとうございます」

 お寿司は大好き。凄く好き。嬉しさのあまり、俺はピーコンをおんぶした。池内さんは続ける。

「店長、残念ですが、サイコロマートの本部から電話がありまして、今日のレジの一件で、店長は解雇ということに。私が、必ず、責任を持って、お母さんがいらっしゃらない間、店をやりくりしますので、お店は私に任せてください。店長、よろしいでしょうか」

「すまん。池内さん。お袋がいない間、店を頼む。昼間の一件は本当にごめんな。悪かった」

「まさに一日店長ですね。店長にとってはいいことじゃないですか。これでF1に専念できますね。頑張ってください。応援してますよ。さてと、ニュースを見ましょうか。ピーコン、リモコン、お願いね」

「はい。わかりました。哲夫さんもヒーローの仲間入りですよ。フォルザ、哲夫」

ピーコンと握手。テレビの中を覗く。皆との友情に本当に本当に、感謝する。これぞ、フォーミュラ1。

『はい、続いては、今日のF1速報の時間です。フェラーリが新車を発表しました。その模様をご覧ください』


 真紅の羽馬。キミライコネン。その横には、フェリッペマッサ。鋭く、テレビの中のフェラーリを自己分析。やはり、フェラーリ。乗りやすそうなマシン。ダウンフォース重視のデザイン。かなり、策を巡らせてきた。そうしていると、藤本さんが帰って来た。

「てっちゃん、お疲れ様。俺さ、暇つぶしに、バッティングセンターに行って来たんだ。てっちゃん、F1参戦、おめでとう。俺から」

「えっ、いいの」

 藤本さんの手の中には、えっ、ヘルメット。

「てっちゃん。今日からこれを使ってよ。ささやかだけど、ガンバレ、F1」

ヘルメットには、青地に赤い十字架。TETSUOのイニシャル。「T」を文字っている。そして、日の丸のステッカーがバイザーの上に掲げられている。

「俺、フェラーリを必ず、ぶち抜いてやる。俺がいない間、みんな、お袋のことを頼むぞ」

「てっちゃん、何も心配するなよ。おばちゃんのことは俺達に任せて、走ってくれ」

「ありがとう。藤本さん。いつも、ごめんな」

「今日は祝杯だ。飲もうぜ。てっちゃん」

藤本さんと、二人酒。泣いて。笑って、ふざけて、はしゃいで、朝まで飲んだ。こここまで一緒にやってきた。藤本さんと、また、泣き崩れた。


俺が起き上がったのは、午後3時14分。水を一口飲み、仏間に向かった。親父。ばあちゃん。じいちゃん。俺はここまでこぎ着けたぞ。俺がF1ドライバー。夢を必ず叶えて、レースしてやる。俺という人間に光を与えてくれて、ありがとう。輝かしい日々を俺達はこれからも歩むんだ。見守っていてくれ。人はいずれ、星になるのだから。星になる前に、俺は走る。


さて、行きますか。羽田空港に到着。十字架を切った。売店でコーヒーを買うと小さな女の子が俺に握手を求める。

「F1、頑張ってね。おじちゃん。家族旅行で日の丸、持って、モナコ、観に行くからね」

「ありがとう。おじちゃん、頑張るね」

 女の子はお父さんと手を繋いで、「グッドラックだよ。バイバイ」と愛嬌たっぷりの笑顔で言ってくれた。

俺は道なき道を行く男。モナコか。よっしゃ。走ってやるぞ。待ってろよ、モンテカルロ。俺にとっては、走ることが親孝行だ。お袋、見守っていてくれ。必ず、結果を出してやる。


飛行機の中。漫画を読む。「レース屋」というタイトルのF1ものの漫画。サンマリノか。セナが散った場所だ。コーヒーを一口、飲む。身震いがする。計算高い走りなどできない。コースにへばりつき、速くマシンを前にやる。俺の仕事だ。もう、何度もレースで死にかけた。哀しい風景の中をひた走る。レーサー。ひと眠りするか。



「オオ、テツオ。キテクレタネ。ワタシ、通訳のジョバンニ。ヨロシクネ。レーシングスーツ、ココアルヨ。ヘルメット、モッテキタアルカ。テツオ」

「よろしく。ジョバンニ。ヘルメットならここだ。今すぐ、走れるのか」

「オオ、チョットマッテ。レーサーセッカチ、オオイネ。オーナーのタルキーニにアイサツヲヨロシク」


 ジョバンニか。きれいなおばちゃんだ。モーターホームへと歩く。その前にやることがあるんだ。タンブレロ。アイルトンセナの最期の地へと、独り、歩いた。多くの花束と「SENNA」の文字。線香を手向けた。ここまで来た。コースを見渡すとフェラーリが一台、走っていた。確か、あのヘルメットのカラーリングは、フェリペマッサだ。緊張感が一気に増した。さて、仕事。モーターホーム帰ると、背の高い髭面の親父が俺に握手を求めた。リカルドタルキーニ。今日から、俺のボスになる男。リカルドと握手を交わす。そして、リカルドは、イタリア語で、一言。そして、ジョバンニに言葉を託す。俺の目を鋭く見て。

「テツオ、勝てる、クルマを用意した。F1で成功した日本人はいない。テツオに賭けてみる。仲良くやろう。タルキーニのレーシングスーツ、ココアルヨ。スグニキガエテ。シート合わせ。よろしく」

「了解。ジョバンニ。リカルド」

 ニコニコと笑う、ジョバンニとリカルド。シート合わせを済まし、チームスタッフの全員と握手を交わす。何とかやっていけそうだ。黒を基調にしたレーシングスーツに袖を通す。ヘルメットを被る。これまた、黒を基調にしたマシンのコックピットに座り、右手を挙げる。エンジンがかかる。これがF1。夢にまで見た、ホンモノ。アクセルを踏み、バイザーを下げる。無線にはジョバンニ。

「カルクナガセ。10シュウシテ、カエッテキテ」

「了解。ジョバンニ」

 コースへ出た。ギアを変える。すぐさま、タンブレロを通過。Gが重く、首にのしかかる。タコメーターは快調。セミオートマも順調。エンジンも順調。スピードメーターは321キロを表示。右を見ると、ホンダが一台、駆け抜けて行った。バリチェロか。あっという間にホームストレートに到達。無線。

「テツオ、グッド。ホンキ、ダシテ、ハシレ」

「オーケー」

 さて、行きますか。1234567。ギアを変え、アクセルをべた踏み。ピットに目をやると。いた。いた。この男。ミハエルシューマッハ。真紅のフェラーリのコーチか。俺を観察するように深々と見ていた。ドリンクのボタンを押し、水分補給。ピーコンの喜ぶ顔が見たい。よっしゃ、侍魂、見せてやろうか。トヨタを抜く。ホンダを抜く。この、クルマ。乗りやすいクルマだ。思った以上に速い。ギアもスムーズに替わる。俺の前にはフェラーリがスロー走行。アウトから抜いた。シフトダウン。ジョバンニから、ピットインの指示。ゆるゆるとピットへ戻る。ああ、面白かった。F1よ。新しい、仲間たち。タルキーニのメカニックにシートベルトを外してもらい、クルマから降りる。メカニック、ひとりひとりと握手。上手くやっていけそうだ。ヘルメットを脱ぐと、喉がカラカラ。ああ、水分、水分。俺の愛用ドリンクである炭酸抜きのコーラを飲み干す。ジョバンニが俺にほほ笑み、言う。

「グッド。グッド。テツオ。サンキュー。アリガトウ」

「こちらこそ。ジョバンニ。タイムはどうだった」

「バリチェロの、0、876遅れ。総合、7位。イイポジションだよ。テツオ」

「サンキュー。イチバン時計は誰なの」

「キミ、あるよ。二番、フェリッペ。フェラーリは、イイクルマある。気にするな」

「了解。ジョバンニ。グッドジョブ。次は、イチバン、取れるように、テストに集中するよ」

「サンキューテツオ。コーヒーでも飲んで、リラックス、リラックス。記者会見、頑張ろう」

 モーターホームへと帰る。レーシングスーツを脱ぐ。暑い。7番手か。自己評価。80点とするか。よく考えると、俺は遂にミハエルシューマッハを見たんだ。F1レーサーとして。ミハエルに後でサインをしてもらおうっと。コーヒーが美味い。いいなぁ。ピーコン、シューマッハと友達だもんな。俺の走りを、どう見た。ミハエルシューマッハ。俺ともお友達になってください。ミハエル。噂をすれば着信あり、ピーコンだ。

「哲夫さん、ネットのF1ニュース、お母さんと見ましたよ。いきなり、7番手だなんて凄いですよ。僕、感動しました。お母さん、パソコンの前で笑顔でした。お母さんは僕達に任せてください。何一つ、心配はいりませんよ。哲夫さん。それと、ミハエルにピーコンがよろしく言ってた。とお伝えください」

「ありがとう。本当にありがとうな。ピーコン」

涙が止まらなかった。夢だった、F1を俺は手に入れたのだから。お袋に親孝行しないと。親父。俺はここまで走って来た。生命ある限り、俺は走るよ。ピーコンに、藤本さんに、みんなに感謝だ。わがままばかり、言ってきた。俺は、レース屋、F1レーサー坂口哲夫。


「ええ、次戦、イタリアGPから、タルキーニF1レーシングチームのステアリングを握ります、坂口哲夫です。よろしくお願いします。F1は、私にとって子供の頃から夢そのものでして、チームに貢献できるように頑張ります」

 記者会見。カメラに囲まれ、写真を撮られ、質問攻め。俺、英語が出来ない。辺りを見渡すと、背の高い、日本人っぽい、記者がいる。やっぱり、聞かれた。

「坂口さん、僕は、日本の雑誌『F1ゲーム』の記者をやっています、布袋創路といいます。お手柔らかにお願いします。英語、出来なくても、いいですよ。坂口さん」

 会場から大きな笑い声。赤面する俺。布袋さんは続ける。

「僕が通訳になりましょうか。仲良くやっていきましょうね。ピーコンさんによろしくお伝えください」

 また、笑い声。俺は、またもや、赤面。そうだな、布袋さんに、通訳を頼もうか。

ジョバンニと布袋さんとでタッグを組むとしよう。

「布袋さん、僕、頭、悪いんで、通訳をお願いします。こちらこそ、お手柔らかにお願いします。ヒーイズ、ジャパニーズ、グッドジョブ。マイフレンド。ワード、ジョブ、トゥギャザー。サンキュー」

 会場は大きな笑い声と、拍手。テツオコールまでもが始まった。また、赤面。よっしゃ。絶対に勝ってやるぞ。フェラーリをぶち抜いてやる。

「アイラブフォーミュラ1。サンキュー。ありがとうございます」






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