第四話「日は昇る」
僕は、いつものように目覚ましのアラームで目を覚ます。
目覚めの朝はいつも憂鬱だ。
また、同じ日々、同じ感情、同じ風景。
いや、感情さえももう湧かないのではないだろうか。
いや、風景と感じる心さえも失ってしまったのではないだろうか。
そんな、僕を落ち込ませるに容易い朝は、毎日、嫌いだった。
しかし、その朝は違った。
不思議と晴れやかな気持ちさえも持っていた。
足取りも至極真っ当で、思考に霧もかかっていない。体も軽いし、心も弾んでいる。
今日は、どことなくおかしな体で、おかしな心で、学校へと登校した。
登校中。
川辺の道は爽やかな風が通り抜け、草花の囁きが耳に楽しい。
まるで、人生が変わったかの様だった。
野草の青い香り。
水の匂い。
水面には光が反射し、閉じる目蓋の裏側には残光。
気付いたら僕は、学校へと到着していた。
それほどに僕は風景へと見惚れていたのだろうか。
僕は自分自身に驚きつつ、教室へと向かった。
「はい、皆さんおはよう!」
学校では朝のショートホームルームの時間となり、担任が教室へと入り挨拶をする。
その挨拶にまばらに答える生徒たちの中に、僕はいた。
僕の心はおそらくこの世の科学などでは説明できない何かによってどうにかなってしまったようで、いつもと全く違う。
世界に色がついて見えるのだ。
今まで、一時たりとも、色などなかった癖に、色が見えるのだ。
空が青い、黒板は緑がかった黒、机は木の色をしていて、チョークがとても色鮮やかに映えていた。
白、赤、青、緑。まるで、それは子供の頃に見た花火の光のそれにも似ていた。
周りのみんなにはわからない、いや、みんなは僕がどうなろうと僕の事なんか歯牙にもかけないだろうが、いつもよりも僕は生き生きとしたような顔をしているのではないだろうか。
生き生きと、いや、ほんとに生き返ったかでもしたのではないか、と自分でも不安になる
もしかしたら、一度死んだからこんな景色が見れているのではないか、と。
今日一日はきっといい日になる。
そう確信して、一限の授業の時間となった。
◆
私は、気がついたらここにいた。
名前は覚えてない。
何をしていたのか、何を為すためにここにいるのか、何をすべきなのか、わからない。
覚えてない。
だけど、あなたは誰?
私は、目の前で私を嘲笑するかの如く一冊のノートを踏みつけている少女を見る。
なにやら愉快そうな表情をしている。
高々ノート一冊を踏みつけた所で、何が愉快なんだろう。
不思議そうに彼女を見ると、それが気に食わないのか、今度はノートを破き出した。
そして、破いたノートを私に投げつけた。
その時、私は初めて私を見たかのようで、自分の身なりに目が向かった。
恐らく、フリルの着いた可愛いスカート。
恐らく、綺麗にステッチされた装飾が目に楽しい洋服。
恐らく、整えられた黒髪の長く艶やかな三つ編み。
恐らく、目の前の少女に全て壊された。
叩きつけられたノートの破片には、まるでお姫様を思わせるようなドレスのデザイン、ふわふわに飾り付けられた花飾り、ありとあらゆる少女思考の詰められたイラストが描かれていた。
そしてそれが、半ば半ばで破りとられ、千切りとられ、最後には原型を留めていない。
私は、それを見て、おかしな反応をしてしまっている。
おかしいことに、視界が歪んでしまう。
目蓋から何かが零れ落ちてしまう。
呼吸が荒くなってしまう。
「もう、もうこんなの嫌だよ...」
あれ...?
私は何を言っているのだろう
「毎日毎日...なんで、なんで私だけこんな...」
おかしいな、体が、思うように動かないな。
あれ...?
何故か最近1000前後しか書けなくなってきたのでこれくらいで投稿することにします