魔法少女現る
水の精霊、セリーヌへと立ち向かって行くハル。セリーヌへと殴りかかると、セリーヌの体に拳が貫通した。驚くハルに向かって、セリーヌが回し蹴りをした。ハルはその反動で倒れた。
「な、なんで攻撃が効かないんだよ!」
そう驚くハルへと、セリーヌが言った。
「私は水の精霊なのよ。水と一体化しているに決まっているでしょ。」
ハルは舌打ちをした。すると、セリーヌと一緒にいる女が、言い出す。
「火の精霊なんか、相手にもならないわ。こんな奴らに、私達が殺すまでしなくっても、このケルベロスの力があれば済むわ。」
女とセリーヌが、ハルとレベッカの前から去って行った。ハルは急いで立ち上がり、二人の跡を追おうとしたところへと、ケルベロスが立ちはだかった。ハルとレベッカは、ケルベロスに圧倒されてしまい、その場から動けない。
そこへ、三つの矢がケロベロスを襲う。ハルとレベッカは、矢が飛んできたところへと、顔を向けた。そこには、建物の上で弓を構えている、アナベルが居た。
「おい!そこの赤髪!レベッカちゃんを、ちゃんと守れよ‼︎」
そう言ってきたアナベルへと、ハルが声を届くように言った。
「俺はハルって名前があるんだよ!それに、言われなくっとも、分かってる!」
そんな時、冷静になったレベッカが、ハルへと言う。
「獣は、火を恐れるから、大きな炎を灯せば動きを封じられると思うの。だから、この辺の建物を燃やして行って!」
ハルはレベッカの提案にのり気合を入れ、周りの建物へと向かおうとした瞬間、ケロベロスがレベッカへと、右手で攻撃をしようとして来た。ハルは慌ててレベッカを守ろうとすると、いきなり二人の目の前へと少女がやって来た。少女が杖をケロベロスの手へと構えると、ケロベロスの手が止まった。呆然としているハルは、自分のすべき事を思い出し、建物へと向かった。
ハルは次々と周りの建物を燃やして行く。その炎にケロベロスは怯えだし、動きが止まった。そこへと、アナベルは矢を放つと、その矢はケロベロスの目を直撃し、片目を潰す事に成功した。ケロベロスはその場で倒れた。
すると、空が段々と明るくなって行く中、ケロベロスが小さくなって行く。ハルとレベッカと少女の元へと、アナベルが合流した。そして、ケロベロスは人の形へとなり、それを見たハルは驚いた。
「…こいつ…あの時のピエロだ‼︎」
ハルがそう言うと、ピエロは立ち上がった。ピエロの姿は色鮮やかな服を着ていた。ピエロは片目を押さえ、睨みつけながら言う。
「ここで終わると思うなよ。」
そこへ、セリーヌと女が戻って来た。女は拍手をして、笑顔で言って来た。
「ブラボー!まさか、あなた達がケロベロスを、あそこまで追い詰めるとは、思わなかったわ。」
レベッカはセリーヌに警戒しながら、女へと聞く。
「どうして、あんたなんかが精霊と一緒に居るのよ!もしかして…精霊の書と関わっているの?」
女は話そうか考えた結果、素直に話し出す。
「このウィンディーネと出会ったきっかけは、確かに精霊の書の一部を、ある人から渡されたからよ。誰とまでは言えないけど…今は魔族が持っているわ。だって、魔族なんかと紙一枚で争ったって無意味だしね。」
レベッカは魔族が精霊の書を、改めて集めている事を確信した。
そこへ、サーカス団の団長がやって来た。団長はハル達を見た後、女とセリーヌ、ピエロへと言う。
「今すぐ撤収するぞ!」
その言葉を聞くなり、セリーヌ達はハル達から背を向ける。すると、女は片腕を振りながらハル達へと言う。
「私はメル。また会ったよろしくね〜。」
呆気にとられた四人は、去って行くのを黙って見ていた。
空には太陽が上がり、街を照らす。その明かりが照らし出す先には、無残な街並みだった。その建物の下敷きになった人々もいた。外には死にたえた人々に、地面には血がこびれついていた。四人は、悲惨な街の中、言葉を失っていた。
建物がハルの炎で燃え続けている最中、街人達は騒ぎが収まったのを見はからって、やって来た。
炎を見た街の人々は、四人を見るなり、石を投げつけて来た。
「出て行けーー‼︎」
「今すぐ、この場から消えろーー‼︎」
そんな罵声が飛び交う中、必死にアナベルが止めに入る。
「みんな!落ち着いてくれ‼︎彼女達は、奴らから街を救ってくれたんだ!」
すると、何処からか、声が聞こえて来た。
「うるさい‼︎助かっていない者や、この炎を見て黙っていられるか‼︎」
アナベルは説得しようとすると、どこからか飛んできた石が、アナベルの頭に直撃し、傷から血が流れる。アナベルはしゃがみこむ。レベッカは心配して側へと寄ると、アナベルは声を荒あげた。
「なら殺せーーー‼︎」
声が響き渡った。人々は驚きの余り静まると、アナベルはふらつきながら立ち上がり、人々へと言い出す。
「そんなに街や人々を守りたいのなら、なぜ戦おうとしない!そんなに俺達が憎いなら殺してみろ!」
人々はアナベルから目をそらした。アナベルは悲しげな顔をした。それを見ていたハルは、大声で人々へと言った。
「しょうがねえや!こんな奴らと話したって意味がないや。こんな弱虫で、ちっぽけな奴らと、馴れ合ったってしょうがねえよ。」
人々は沈黙した。ハルはアナベルの腕を掴み、人々の中央へと歩むと、人々は二人を避けた。その跡をレベッカと少女は歩く。
四人はハルとレベッカが泊まっていた、宿へと着いた。宿の外には、レベッカの荷物が置かれていた。落ち込む三人にたえし、ハルは三人へと言う。
「確かに俺達は、助けられなかった…。だから、次こそは頑張ろうぜ!」
そんな明るく言うハルに、アナベルは少し笑顔になった。そんな時、少女がアナベルの頭の傷へと、両手をあてた。すると、みるみる内に傷が消えた。アナベルは頭の痛みが引く事に、驚いていたが、ハルとレベッカは、少女に驚いた。少女が言ってきた。
「私はコロナ!こう見えて、魔法が使えるの。」
ハル、レベッカ、アナベルは、すっかり今までの出来事を忘れるくらいの驚きだった。