精霊の書をめぐる旅
あの後、二人は村から離れ、草むらで座りながら空を眺めていた。ハルはレベッカへと改めて聞いてみた。
「あのさ、この世界ってなに?」
レベッカは空を見上げながら言う。
「この世界は、闇に…魔族に支配された世界なの。そう言うハルは、どこから来たの?精霊ってどこから来るの?」
ハルは魔族と言う言葉よりも、どこから来たのかっと言う言葉にひっかかり、どう説明するべきかわからなかった。ハルは焦りながら話しを変えた。
「そうだ!レベッカはなんで俺を呼んだの?」
レベッカは自分の質問に答えないハルに、少しイラっとしたものの、ハルの質問にこたえた。
「私の父親が、精霊の書の一部である、火の精霊について書いてあるページを持っていたの。そこには精霊の呼び出し方が載っていた。もし、精霊を呼び出せたら、世界が少しでも変わるかな。そう思ってハルを呼び出したの…。」
ハルは、なぜ精霊の書のページを持っていたのかレベッカへと聞いてみると、レベッカは首を振った。
「なぜ、お父さんがそのページを持っていたのかはわからない…。ただ、お父さんは私が精霊に興味を持つことを嫌がっていたわ。」
レベッカがそう言うと、暗い雰囲気になり、ハルは立ち上がると、背伸びをした。レベッカはハルへと顔を向ける。ハルは遠くを見ながら話し出す。
「まあ、親がどうとかいいんじゃない。レベッカは世界の為に俺を呼んだし、間違った事はしてない。魔族がなんだ!これは俺の人生だ!皆んなそれぞれの人生だ!魔族には負けないぞーー‼︎」
レベッカはハルが自分を、励ましてくれているのだと思うと、クスっと笑い、レベッカも立ち上がった。
「私は私の人生があるの!魔族なんかに邪魔されたくないーー‼︎」
レベッカがそう叫んだ。すると、ハルはふと思った事をレベッカへと言う。
「その精霊の書ってなんだろう?あいつらが狙っていたぐらいだから、すごい本なのかな〜。」
レベッカも考え出し、レベッカはある提案をする。
「わからないけど、狙っているぐらい、精霊は凄いんだよ!だから、その本を探しに行こう‼︎」
突然の話しに戸惑うハルだったが、あの出来事のことが事だけに、レベッカの提案に乗った。レベッカは、行き先を決めていたのか、ハルへと言った。
「まずは、お金とか食料を集めるのもあるけど、精霊を知っていそうなエルフに聞くのが早そうだから、近くにエルフの住む街があるから、行こう!」
ハルはエルフがこの世界にいる事に驚いていた。
(エルフがいるんだ…本当に異世界ファンタジーなんだ……。)
そうハルは思った。
二人は暗くなる前に、森の中へと向かうと、レベッカは肉を食べる為に、ハルを置いて、動物を狩りに行ってしまった。
一人でレベッカを待つハルは、だんだんと暗くなって行く空を見上げながら、今までを振り返っていた。
(俺はあの時、家に居づらくなって、飛び出して、チンピラに絡まれ、殴られた……。そこまでは俺の知っている世界。なんで俺はレベッカに召喚され、この世界に来たんだ⁉︎そもそも、火を操れるなんて…わけがわからねえ……。)
そこへ、レベッカが戻って来た。レベッカの右手には中位の鳥を持っていた。
暗闇に包まれる中、レベッカはハルに頼んで、その辺にあった木の枝に火をつけてもらい、その明かりを使って、持っていた剣で鳥をさばいた。ハルはなるべく見ないようにしていた。たき火に鳥の骨つき肉を近づけて、焼いていった。その間、二人は無言だった。こんがり焼けた鳥肉を二人は食べた。
その後、食べ終えると、レベッカは寝そべった。ハルはレベッカへと話しかけようとすると、レベッカはハルから背を向け、横向けになる。
「もう寝ましょう。」
そう一言、レベッカが言うと、ハルは仕方なくレベッカに背を向けながら横になった。ハルは目をつぶり眠ろうとした時、すすり泣く音がレベッカの方から聞こえて来た。ハルは複雑な思いで、眠りについた。
翌朝、太陽が照らしている中、ハルは熟睡していた。レベッカはハルを揺すって起こした。ハルはレベッカの顔を見てみると、少し目が腫れていた。そんなレベッカは言う。
「さあ、エルフの街へと向かおう!」
明るく元気なレベッカの言葉に、少し安心感と心苦しい思いの中、ハルは頷いた。二人は森の中を歩き出す。
あれから、まる二日間、休みながらも歩き続けた。その二日間の中で、ハルは気づかない振りをしながら、レベッカが夜更けに眠らずに泣いているのを、心苦しく思っていた。
森を抜け、海が見えると、そこには海沿いの街があった。レベッカは嬉しそうに、ハルへと言う。
「あそこが、エルフの街だよ。」
ハルは綺麗な海と街に心を踊らしていた。二人は早速街へと向かった。
街へと入ると、大通りには店が並んでいた。大勢の人で賑わっている。二人は大通りを歩いて行くと、大きな建物を見つけた。そこは図書館だった。二人は図書館で精霊の書に関しての本がないか、図書館で探すことにした。
中へと入ると、そこは沢山の本棚が並んでいた。驚く二人。すると、レベッカの元へと金髪の男がやって来た。
「やあ!何か本を探しているのかい?よかったら一緒に探してあげるよ。」
そう男が言って来ると、レベッカは嬉しそうにして、返事をしようとしたところで、ハルが割って入る。
「ちょっと待てよ!一緒に探してくれるのは嬉しいけど、お前を信じられないし、怪しい!」
そうハルが言うと、男は言う。
「はあ?お前には話しかけてないし。この可愛い女の子に話してんの!お前は邪魔なんだよ!」
イラだつハル。そこで、レベッカはハルへと言う。
「えっと…ハルは外で暇をつぶしてて、私はこの人と一緒に精霊に関した本を探してみるわ。私なら大丈夫だから。」
ハルは困りながらも、レベッカの事を信じ、図書館を出た。
ハルはため息を吐いた。すると、大きな音が遠くから聞こえてきた。ハルは気になり、そこへと向かった。
向かったところ、大勢の人が賑わい、大きな色鮮やかなテントがあった。その入り口には、ピエロが居た。
「もしかして、ここはサーカス‼︎」
ハルは心を踊らせていた。