第32話:2年目の生活風景。
今回はSide Actと同時に投稿いたします
王立魔術学院に入学して2年目。
その2年目の生活が無事に始まった。
学院の2年生。
別に教場が変わるわけでもなく、クラス替えもないし、教授も相変わらずジューダスだ。
他には、今年度に魔導祭とやらが行われるのと、俺とカーリナが16歳になったくらいで、1年の時と殆ど変わらない。
それは勿論、学生寮の中でも変わらなかった。
「カス」
「クズ」
朝、前世で言えば大体7時くらいに起床だ。
正確な時計が無いから正確な時間なんて分からんが、学院内にある鐘楼が鳴り響くので、これでほとんどの生徒が起床する。
同室の変態ストーカー・ザ・バシルもこの時に起きるので、まずは朝の挨拶だ。
挨拶を済ませてベッドから出ると、俺達は早々に服を着替える。
授業のある日は市販のカッターシャツのような服に、動きやすいズボンを着て、その上から学院支給のローブを着るのがここの制服だ。
ただ、これからカーリナと筋トレや素振りなどをするから、今は動きやすいTシャツにハーフパンツという格好になっている。
着替え終えると、次にベッドメイキング。
といっても、殆どの生徒はベッドなど起き抜けのままにして放置するのが当たり前らしく、綺麗に布団やシーツを掛け直すなど、元日本人である俺か、貴族の子弟くらいらしい。
「……毎回思うが、お前のその汚いベッドを綺麗にしたところで、なんになるんだ?」
「汚いは余計だろうが」
ホント、口を開くと余計なことばかり言いやがる。
しかしまあ、この変態が言った通り、ベッドのことなんて皆からすればこんな認識だそうだ。
俺が変なのかね?
で、ベッドメイキング終えるとバシルに一応一言声を掛け、カーリナとトレーニングの為に校庭へと向かう。
たまにこの変態、付いてくることもあるから、その時は俺のご機嫌も斜めに直滑降だ。
「おはようお兄ちゃん!」
「おはようカーリ」
朝、起床の鐘が鳴ってから食堂が開くまでに少し時間が掛かるので、その間にいつもこうやってカーリナとトレーニングに励んでいるのだ。
朝日に照らされるカーリナの笑顔が美しい。
「じゃ、早速行こうか」
「うん!」
二人で準備運動を終え、これからトレーニングの開始だ。
メニューとしては、校庭を5、6周、腕立て、腹筋、屈み跳躍をそれぞれ20回3セットから5セットという自衛隊並みのメニューをこなしている。
これはオークス先生から格闘を教わり始めた頃からの習慣だ。
校庭では他の生徒も何かしらトレーニングをしているので、お互いに邪魔にならない程度に運動を開始する。
因みにこの時、カーリナのそれなりに大きくなってきた二つの饅頭が、それぞれの動きに合わせてプルんプルんと動くのでかなり目のやり場に困ってしまう。
チキショーメッ!
それが終われば、剣術か格闘のどちらかを訓練する。
これは日替わりでのメニューで、剣術の訓練であれば素振りや形、打ち込みなど。
格闘であれば基本の形や組手などだ。
「よし、木剣持ったな」
「うん、準備おっけー!」
「じゃあ正面素振り100本、始めっ! 一っ! 二っ!」
「三っ! 四っ!」
今日については剣術を訓練する日だったので、俺達は木剣を持ち、フェリクスに教わった基本の素振りを始めた。
今はフェリクスの剣術を主に訓練しているが、勿論ビクトルから教わった剣術もここで訓練している。
余談だが、フェリクスから習った剣術とビクトルから習った剣術は似ている部分が多い。
これは、フェリクスに剣術を教えたのが魔神で、この国の剣術……ビクトルの使う剣術も魔神が広めたものだ。
だから似ている部分が多いのだろう。
「九十九っ! 百っ!」
「よし、おわり!」
「じゃあ次は――」
こうやって素振り、形、打ち込みと訓練をこなしていく。
格闘もこうやって基本から組手までやるのだが、格闘についてはもうカーリナに勝てなくなった。
というか下手すればボコボコにやられる。
だって毎日課外活動で格闘の練習してるからな……。
「よし、今日はここまでにするか」
「そうだね、今日もいっぱい汗かいちゃった!」
「寮に戻ってシャワー浴びようぜ」
「うん!」
つつがなくトレーニングも終わり、スッキリとした爽やかな笑みで俺達は寮へと戻る。
「お兄ちゃん、一緒に浴びる?」
「こ、コラ! 何言ってんだ!」
「あはは! じょーだん!」
コヤツめ、そんなこと言われたらドキドキするじゃないか!
カーリナも、段々と大人の色気とやらが出てきたように感じる。
こうして色っぽく冗談を言ってこられると、いくら兄としてもドキッとしてしまうから困ったものだ。
身長は赤組では平均的だが、胸はCカップくらいあるんじゃないか? 詳しくは知らんが。
「お兄ちゃん、また食堂で!」
「ああ、またな」
俺の部屋がある寮の前でカーリナと別れ、俺は自室へと一旦戻ることに。
トレーニングから戻ってくる頃には食堂も開いていて、朝食を食べに行く生徒で廊下が賑わっていた。
自室に戻り、タオルを持ってシャワー室へ行き、シャワーで汗を流して戻ってくると、今度は授業に出る用の服に着替える。
バシルはもう朝食を食べに行っているようだ。
学院支給のローブを羽織って廊下へ出ると、俺はアールの部屋へと向かう。
「おはようアール、飯食いに行こうぜ」
「あ、おはようベル。ちょっと待って、僕の靴下知らない?」
「知らねーよ」
この学院に入学してから仲良くなったアールとは、いつも朝食を一緒に食べに行く間柄だ。
ただ、忘れっぽいというかズボラな性格のアールは、たまにこうやって何からを紛失しては探しているので、朝食を食べ損ねそうになることもしばしばだ。
魔道具関連のことについては失くしたり忘れたりすることは無いのにな……。
「あ、あった!」
「それ色違うだろ……」
「あ、ホントだ」
とまあ、こんな感じである。
この後俺も探すのを手伝いながら、何とかして同じ靴下を探し当てたアールと一緒に朝食を食べに行く。
トレーニングをしてからの朝食なので、食堂はそんなに混雑していなかった。
これが食堂が開いた直後とかであれば凄く混んでいるので、その辺はよく考えながら食堂に行かなければならない。
「僕、今日はバケットと野菜スープのセットにしよーっと」
「俺は今日もライススープにするか」
「ベルはそれ好きだよね」
「米が好きなんだよ」
なんたって米だからね。
元日本人としては外せない食材だ。
そんなこんなと食事を乗せたトレイを受け取ると、100台以上並んでいるテーブルの方へと向かう。
「おにーちゃーん!」
「お、カーリちゃん達だ。おはよう3人とも!」
この時間に食堂に来ると、大体こうやってカーリナに呼ばれて一緒に朝食を食べることが多い。
さっきも、また後で、と言ったこともあってなんとなくお互いを探してしまうのだ。
「おはよう、リンマオ、イリーナ」
「おは……よう」
「おはようございますわ。アール、ベルホルト」
先にカーリナ達と合流したアールに続いて、俺もカーリナのいるテーブルに行くと、そこにはカーリナのクラスメイトであるリンマオとイリーナが既に座っていて、お互いに挨拶を交わしながら同じテーブルに着いた。
いつも朝食はこのメンバーで食べることが殆どだ。
たまにバシルとかいう余計な奴が来るが。
「お兄さん達、遅い」
「しょうがないだろ? アールの靴下を探してたら遅れたんだよ」
「まったく、またアールですの? しっかりしなさいな!」
「いや~、洗濯して適当に仕舞っておいたら分からなくなっちゃってさ~」
「そんなことより早く食べよ!」
いつも通りボンヤリしたリンマオや、少し呆れた様子のイリーナに対し、俺とアールは少し遅れて来た言い訳をしつつ、カーリナに急かされて俺達は朝食を食べることに。
たまにだが、クリスがこの時間帯に朝食を食べにやってくることもある。
いつももう少し遅い時間にクリスは朝食を摂るらしいのだが、アールの探し物事情によっては時間が被ることもあるのだ。
といっても、白組の偉そうな連中に絡まれたくないので、一言二言挨拶なり交わすだけで一緒に食べたりなどはしていないが。
「そう言えば、3年の黄色組の監督教授、ご結婚されるらしいですわね」
「え、マジで? 全然知らなかったよ」
「お兄さん……新しいお香が出来た、から……後であげる」
「お! 新作くれるのか? ありがとう!」
「結構いい匂いしてたよ!」
ここではこうした取り止めのない会話が殆どで、異世界でも学生がする会話は変わらないんだな、と感じるひと時だ。
こうしてゆったりと朝食と会話を楽しんだ後、食堂を後にして自室に戻り、授業の準備をして教場へと向かう。
俺とアールは、第5校舎にある青組の教場だ。
教場に入り、授業前の簡単な連絡……つまりホームルームがあるので、まずはその連絡を聞かなければならない。
「おはよう諸君。今日の連絡を伝えるぞ」
生徒が全員揃ったタイミングで新2年の青組の監督教授であるジューダスが入ってくる。
オークス先生とこの学院でクラスメイトだったこともあり、それなりに歳をとった痩せ形の好々爺、という感じの人だ。
「皆も分かっているとは思うが、今年は2年に一回の魔導祭が行われる年だ。我々青組も、1年から4年まで一丸となって魔導祭に挑んでもらうから、そのつもりでな」
今日のジューダストピックはどうやら魔導祭についてらしい。
何でも、魔導祭は縦割り組で競技を行うみたいだ。
青組なら青組、赤組なら赤組と組み対抗で戦うのだとか。
「――というわけで、今日の連絡は終了だ。今日も授業を頑張ってくれ」
連絡を終えたジューダスは、それだけ言うと教場を後にした。
これから彼とはまた、選択科目の時に会うことになる。
で、これから授業なのだが、時間割としては1教科1時間の通常科目5コマ+選択科目2コマだ。
通常科目というのは、基礎魔術学、応用魔術学、歴史、魔法陣学、校庭運動の5つで、これらは必修の科目だ。
それに対して選択科目というのは、召喚魔術、魔道具学、強化魔術、治療魔術、軍事学と5つある中から1コマ1科目選び、授業を受ける。
選択科目はその都度違う授業を受けてもいいらしいが、必ず1科目は単位を取らないといけない。
今日の時間割については、魔法陣学、基礎魔術学、応用魔術学、校庭運動、歴史の順だ。
校庭運動……前世で言う体育だが、この後に退屈な歴史が来ていると大体の生徒は寝てしまうので、皆からは、”魔の組み合わせ”なんて言われている。
「青組の皆おはよう! 早速だが授業を始めよう!」
どうやら魔法陣学の教授が入ってきたみたいだ。
今日の授業の開始である。
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1時間目、2時間目、3時間目と授業が終わり、昼食の時間だ。
基本的に昼食はアールや青組の友人達と一緒に食べる。
授業についてや課外活動についてのことをアレコレと駄弁りながらだ。
前までクリスと何とか一緒に食事をしようかと試みたが、その度に白組……ブラウ? ブラウス? とかいう厄介な奴に邪魔されてきた。
その度にクリスも白組の連中に注意をしていたが、奴らは聞く耳持たずだ。
まあ、課外活動の後に密会しているし、別にいいか、と思ったりもしたが……やっぱり少し悔しいな。
でまあ、そんなこんなで友達と駄弁りつつ昼食を食べ、午後の授業に備える。
午後の授業は4時間目と5時間目が通常科目で、6、7時間目が選択科目だ。
昼食を食べた後の授業は大体眠くなる。
アールなどはたまに爆睡していて、よく教授の拳骨を喰らっていた。
その度アールに、「なんで起こしてくれないんだよ!」と恨みがましく言われるが、俺は特に起こすつもりはない。
だって見ていて楽しいからね。
そんな感じで5時間目の授業を終え、この後は選択科目……俺の場合は召喚魔術を主に取っていて、その他に治療魔術や強化魔術、それに魔道具学などを満遍なく受講している。
「……チッ」
「……フン」
で、6時間目の召喚魔術の授業を受ける為に教場を移動していたのだが、バシ……間違えた、カーリナのストーカーとばったり出会うことが多い。
その度に思わず舌打ちが出てしまうが、もうお互い慣れっこだ。
「お兄ちゃん! こっちこっち!」
「ああ、今行くよ」
召喚魔術の教場に入ると、いつも元気いっぱいのカーリナが俺を迎えてくれる。
その隣にはボンヤリしたリンマオだ。
愛する妹の隣に座るため、教壇にある受講者記入欄に名前を書き、足早にカーリナ達の許に行くのだが……。
「邪魔だ! 後ろに座ってろ!」
「テメーが後ろに座れ! このクソバシル!」
「もう! また喧嘩してる! いい加減にしてよね!」
「はい……」
「すまない、カーリナ……」
とまあ、こんなふうにバシルと席の取り合いをしてカーリナに怒られるまでがテンプレだ。
だから最近では、こうやって喧嘩しないように日替わりでカーリナの隣に座ることにしている。
そもそも振られたくせに図々しいと思うのだが、カーリナの提案によりそうなった。
因みに今日はバシルがカーリナの隣だ。おのれ。
「よーし、バカ騒ぎも終わったことだし、出欠を取るぞ」
召喚魔術の教授であるジューダスに揶揄われながら、6時間目の授業が始まった。
肝心の召喚魔術の授業についてだが、基本的な知識と実習についての準備が8割、実習というか、召喚魔術の実践が2割と、座学を中心に行われている。
今は生体召喚の性質と、魔法陣の書き方の改造などを習っているところだ。
召喚魔術については、俺はかなりマスター出来たと思う。
召喚魔導である魂魄召喚は流石に出来ないが、元々総魔力量がかなり高かったこともあって、物体召喚も生体召喚も失敗せず、短詠唱で召喚出来るようになった。
かなり遠くのものを召喚することが出来るし、俺って才能あるんじゃね? って己惚れる今日この頃だ。
「では次の講義で、今日教えた理論を元に、魔法陣の改造をしていこう。それじゃあ、今日はここまでだ」
鐘楼の鐘が鳴り響き、6時間目の授業が終わりを告げた。
ジューダスは足早に教場を去り、残された俺達も三々五々に次の授業の為に教場を移動することに。
「じゃあ、私とリンちゃんは強化魔術の授業に出るから、またね! お兄ちゃん! バシル君!」
「じゃ、また」
召喚魔術の教場を出て、カーリナ達と手を振り合って「ああ、また」と別れるのだが、カーリナとリンマオの姿が見えなくなると、俺とバシルはお互いに足で小突きながらその場を後にするのがお約束だ。
カーリナとリンマオは、イリーナと一緒に強化魔術を、アールとはたまに魔道具学を一緒に受け、彼から分からないことを聞きつつ7時間目の授業に励んでいる。
バシルについては、アイツは軍事学を受講しており、アールから聞いた話によると、どうやら卒業後はこの国の軍人になりたいらしい。
軍人か……俺にはなれないし、なった姿が想像できないな……。
で、今日については治療魔術の授業を受けることにした。
クリスも同じ時間に授業を受けることがあり、その時は近くの席でドキドキしながら勉強をしているのだが……どうやら今日はクリスはいないようだ。
残念。
7時間目が終わると、青組の教場へ戻り、ジューダスによるホームルームを受け、連絡事項を聞き終えると皆一斉に課外活動へと向かう。
因みに今日のジューダストピックその2は、家で栽培している山吹色枝豆の目が出たとのことだ。
んなもん、知らんがな。
課外活動とは、前世で言う部活のようなものだ。
カーリナとイリーナは格闘競技会、アールは魔道具研究会、リンマオは剣術会に所属している。
そして俺とバシルは馬術競技会に所属していて、毎日馬の世話をしたり、馬に乗って障害物を飛んだり、或いは遠出したりしていて、毎日それなりに頑張っていた。
ホームルームが終わり、厩舎へと真っ直ぐにやって来て動きやすい衣装に着替え、いつも乗っているブチ模様の馬に乗るのだが……。
「ハッ、まだまだだなベルホルト」
「ぐぬぬ……」
今日も障害用のバーを落としてしまい、バシルに嘲笑われてしまった。
悔しい。非常に悔しい。
俺の目下の目標は、このバシルより上手くなることだ。
コイツの馬術の腕は相当なもので、上級生やあのプライドの高い白組の先輩達にも一目置かれている。
だからといって、俺は諦めるつもりはない。
諦めたら試合終了ですよ。って偉い先生も言ってたしね。
今に見てろ、バシルめ!
先輩達にコツとか教えてもらいつつ、丁寧に、そして馬に無理をさせないように障害を飛び越える。
そうやって慎重にコツコと馬術の腕を磨き、馬に乗り終えた後はきちんとブラッシングや厩舎内の掃除、餌やりや水替えなどを心を込めてこなす。
馬は乗るだけの生き物じゃないからね。
たまに白組の連中に押し付けられるけど。
それが終わると、俺は弾かれたように学生寮へと戻り、シャワーを浴びてから着替え、ある場所へと足早に向かって行った。
そこは人目の付かない場所で、学生寮の裏手にある、少し大きめの木だ。
木の下には、俺が作った小さい丸テーブルが1台と、椅子が2脚おいてある。
これから、学院での生活で一番待ち遠しい時間が始まるのだ。
「ベルホルトさん」
「クリス」
そう、それはクリスとの逢瀬だ。
今では毎日、こうやってテーブルを挟んで椅子に座り、クリスと話をして、陽が沈むまで、或いは食堂が閉まるギリギリの時間まで一緒にいる。
勿論、クリスの傍には彼女の護衛である近衛騎士、テレジアが控えていた。
テレジアに直接、『これ以上姫様に関わるな』と忠告されて以来、当初はやれ離れろだの、やれ触るなだのと小うるさかったが、今では何故か、ただ能面のように無表情でクリスの傍に控えているだけだ。
何か思う所があるんだろうな。
「ベルホルトさん、今日一日はどうでしたか?」
「うん、今日も楽しかったよ。またアールの奴が授業中に寝ててさ、教授に怒られてたんだよ」
「まあ! アールさんらしいですね!」
今日のことを言ってあげると、クリスはクスクスと笑い、笑顔を見せてくれる。
カーリナとクリスのこの笑顔に、俺は毎日癒されているのだ。
アール達とバカ騒ぎするのも楽しいが、やっぱりこうしてクリスと話をしている時が幸せに感じている。
願わくば、こうしていつまでも一緒に居たいものだ……。
「そう言えば、ベルホルトさんに教えて頂きたいことがありまして……」
「ん? なんだ?」
「はい。実は応用魔術学で分からないことがありまして……」
最近ではこうして、クリスから授業について分からないことを聞き、それに応えたりもしている。
まあ、俺も分からない部分があったりもするんだが、次の機会までに図書室から本を借りてきて一緒に調べ、二人で勉強をすることもあった。
所謂、お勉強デート、というやつだ。
こうやってクリスと二人っきり……でもないか、テレジアもいるし……で、いい感じになってきている。
あの約束をした日からグッと距離が縮まったようだ。
前世ではこんなリア充な青春なんて過ごすことが出来なかった。
むしろ、こんなリア充を見てはバカにして、でも内心羨ましがっていた方だ。
それが今ではこのリア充っぷり。
いや~、人生何があるか分かりませんな!
なんてことを考えつつ、今日もクリスにアレコレと魔術のことを教えたり、くだらない話をして笑い合ったりして過ごした。
そして、陽が沈み辺りが暗くなってくると別れの時間がやってくるのだ。
「姫様、そろそろ」
「……はい」
今日も今日とてテレジアタイマーが作動すると、クリスは名残惜しそうに立ち上がる。
その度に、今日はここまでか……と名残惜しく思ってしまう。
楽しい時間はあっという間だ。
「では、ベルホルトさん、また……」
「ああ、また……」
別れは短く、簡単に挨拶を済ませ、クリスがテレジアを伴って女子寮へと戻って行く。
俺はそれを見送り、彼女達の姿が見えなくなった後に自分の部屋へ戻るのだ。
ただ、最近では、いつこの想いをちゃんと伝えようかと悩みながら見送っている。
気持ちを伝えたい。でも身分差や周りの目が気になる。そんなジレンマに大いに悩まされていた。
俺としては身分差なんて関係ない! って言いたいところだが、今はどうも周りが許してくれなさそうな雰囲気だしな……白組とかテレジアとか……。
何か切っ掛けさえあれば、この想いを伝えられそうなのだが……。
俺がこんなにもヘタレだったなんて、思いもよらなかったよ……。
この後俺は、カーリナやアール達と夕食を食べーの、浴場へ風呂に入りに行きーの、木剣を振りーのといつもの日課をこなしていても、考えることはクリスのことばかりだった。
う~ん困った。本当にいつ、どうやって気持ちを伝えようか?




