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第25話:授業風景

 入学式の翌日、結局バシルが願い出た部屋の変更は受け入れてもらえず、俺はあのクソ野郎と同室で4年間過ごすことになってしまった。

 部屋にいる間、お互いに口を利くこともなく、まるで相手がいないように過ごし、今朝も二人同時に起きて顔を合わせた時は舌打ちで挨拶を交わした程だ。

 ただ不思議だったのが、カーリナに惚れたバシルが彼女のことを聞いてこなかったのが不思議だった。

 まあ聞いてほしかったわけではなかったし、別にいいのだが。


 「新入生諸君、おはよう! 昨晩は良く眠れたかな? 早速だが、出欠確認するから呼ばれたら返事をするように」


 そして今は、一年生の青組の教場でジューダスによるホームルームの真っ最中だ。

 ジューダスが教壇に立って生徒の名前を読み上げていく。

 呼ばれた生徒は、それなりに元気よく返事をする。

 先生ー、バシルの所為でよく眠れませんでしたー。


 「あーそうそう、昨日言い忘れていたが、すべての授業が終わると課外活動というものがあってな。これはそれぞれ剣術や体術を学んだり、魔道具を好きに作ったりすることが出来る時間だ。昨日はそんなに勧誘が無かっただろうが、今日からは上級生から活動に勧誘されることがあると思う。だからやりたいことがあれば是非参加するように」


 出席確認を終えたジューダスは昨日言い忘れたことを思い出したらしく、そのことについて連絡してきた。

 課外活動か……前世で言う部活のことか。

 何か面白い部活があれば入ってみよう。


 「ねね、ベルは課外活動に入る気あるの?」


 と、隣に座っていたアールが話しかけて来た。

 なんだかんだでアールとは仲良くなれたみたいだ。

 しかし昨日、カーリナ達の前でエッチな本を探してくれたお陰で、俺がカーリナに睨まれてしまったじゃないか。どうしてくれよう……。


 「ああ……何か面白い活動があれば入ってみようかな」

 「じゃあさ、僕、魔道具研究会に入るつもりなんだけど、ベルも入らない? 僕、魔道具だけは誰よりもいい物作れる自信があるんだ」

 「へぇ……」


 そりゃ凄いな。

 何か自慢できる取り柄があるっていうのも中々羨ましい。

 アールのドヤ顔はともかくとして。

 俺の自慢なんて、自慢したら生死に関わるかもしれないからな。


 「ま、気が向いたらな」

 「ああ!」


 入るかは知らんけど。


 「……というわけで、6時間目7時間目は有効に使うように。以上、朝の連絡終わり」


 お、どうやら朝のホームルームが終わったようだ。

 ジューダスが教場から出ていき、教場無いが少しざわつく。

 何気なく周りを見渡すと、ふと、教場の扉付近でクラスメイトと話をしているバシルと目が合った。

 少しの間ガンを飛ばし合った後、お互いにそっぽを向く。

 全く、礼儀のなってない奴だ!


 「……君達、まだ喧嘩してるの?」

 「アイツとは永遠に分かり合えないんだよ……」

 「そうですか……」


 アールが呆れたような顔になった。

 何だねその顔は?


 そうこうしているうちに、黒板横の扉から教授が入って来た。

 というか入学式の時にいた若教授だ。

 どうやら早速授業が始まるらしい。

 この学院に入ったからにはしっかり勉強しないとな。


 「皆! 授業を始めるよ!」


 若教授の元気のいい声と共に授業が始まった。

 そもそも今からなんの授業だっけ? 予定表確認するの忘れてた。



 _______________________________________________




 「――と言うように、消費魔力と魔力の伝達効率によって発動する魔術の威力が決まるんだ。ここまではいいかい?」


 教壇で若教授が丁寧に授業をし、それを一字一句書き漏らさないと言わんばかりに生徒達が安っぽいノートに書き写している。

 今、若教授がしている授業は”基礎魔術学”だ。

 これは読んで字の如く、魔術に関する基礎知識を学ぶ為のものだが、しかしその内容は少し専門的になっていた。


 というのも、俺が最初にビアンカら教わったのは、魔術の使い方や注意の仕方などの本当に基本的なことだったが、ここで習う魔術の基礎は理論と理屈を突き詰めた内容だ。

 そもそも魔術はどういう原理で発動するのか? なんていう所から入る辺り、流石は魔術学院だな。


 因みに、さっきの若教授の説明をまとめると次の通り。


 魔術の威力(T)=消費魔力(M)×魔力の伝達効率(k/s)


 ということになる。

 これは短詠唱でも全詠唱でも当てはまるらしく、短詠唱では感覚で魔力を込めた分だけ威力が上がり、全詠唱の場合は詠唱にどういう文言を入れるかによって威力が制御出来る。

 特に全詠唱では、自分でどれくらいの魔力を消費するかを理解しながら使える為、さっきの計算式で計算しやすい。


 「ね、ねえベル、今の分かった?」

 「え? 今の分からなかったのか?」

 「え?」

 「ん?」


 どうもアールには難しかったようだ。

 いや、アールだけじゃなく、周りの生徒も何人かが頭を抱えたり首を傾げていたりしている。

 そんなに難しいかねぇ?


 「じゃあ次は……っと、チャイムが鳴ったね、今日の所はこの辺にして、続きはまた明日だ! しっかり予習しておいてくれよ!」


 学院の中にある鐘楼の鐘が鳴り響き、それを合図に若教授の授業が終わった。

 ちゃんとした時計が無いから正確な時間が分からないが、多分一時間くらいの授業だっただろう。

 授業中もちゃんと集中出来ていたと思う。まあそれが当たり前なのだが。

 しかし俺は前世の学校を知っている分、授業というのがめんどくさいものだと思ってしまうが、やっぱり目標を持つと変わるものなんだな。


 若教授が荷物をまとめつつ教場から退出していく姿を見送り、次の授業のことを考える。

 次は何だっけー?


 「ねえベル、やっぱりさっきの内容ちょっと分からないんだ。なんで消費魔力が10として伝達効率が2の場合に魔術の威力が20になるの?」

 「ああ、それはだな――」


 確かに、ちょっと分かりづらいところもあったからな。

 こういうのは最初に躓くと後々取り戻すのが大変だ。

 ここは俺自身の復習も兼ねてアールに教えておこう。



 _______________________________________________




 2時間目は”校庭運動”だった。

 校庭運動、すなわち、体育だ。

 ただし、ただの体育ではなく魔術も使う体育だ。

 体操服的なものは無く、基本的にローブを纏ったままでの授業だが、動きやすい、或いは汚れてもいい服に着替えたい人は着替えてもいいらしい。


 最初ということで今日は軽く体操をし、上級生らが体育をしている横をジョギング。

 それが終わったら無属性の下級魔術であるアトラクションやレパルションを使って、バレーボールのようにボールを打ち上げていた。

 因みに短詠唱で使うのだが、そもそもアトラクションなどが使えない人は使えるように練習しなければならない。


 だからアールも、アトラクションが使えない生徒に交じって練習していた。

 あいつ下手くそだなー。


 「おっ……とと、レパルション! ベルホルト!」

 「はいよ! アトラクション! ……レパルション!」


 しかしこれが中々難しい。

 青組のクラスメイト数人のグループで円を作り、その中でボールを打ち上げているのだが、アトラクションで引き寄せる力が強いと勢い余って体にぶつかってしまい、レパルションで離れる力が強すぎるとボールが明後日の方向に飛んで行ってしまう。

 そうならないために魔術を使うのはほんの一瞬か、或いはかなり魔力を絞って微調整しながら使わなければならない。


 俺は小さい頃からオークス先生に仕込まれてきたからすぐに出来たが、他の生徒は中々苦戦している様だった。


 「ベルホルトは器用に魔術が使えるんだな」

 「コツはあるの? どうやってするんだ?」

 「コツ……って言っても、慣れだぞ」


 だからか、俺のいるグループのクラスメイト達にコツややり方などをよく聞かれる。

 こればっかりは本当に慣れだと思うけどな。

 しかしこうやって皆に聞かれるのはやっぱり嬉しい。

 それだけ頑張って来た甲斐があったということか。


 ただ……。


 「レパルション! バシル、そっち行ったぞ!」

 「アトラクション! よっ、レパルション!」

 「流石バシル!」


 バシルも上手く出来ているのがムカつく。

 アイツにだけは負けられん! 俺ももっと上手くならなければ!



 _______________________________________________




 校庭運動が終わり、適度な疲労感を感じながら俺達は3時間目の授業を受けていた。

 3時間目は”魔法陣学”の授業だ。

 魔法陣学とは、魔道具などに使われる魔法陣や魔術式の設計と改造、解析などを勉強する為の学問で、選択科目にある”魔道具学”はこれのさらに発展した授業内容だそうだ。

 要するに、パソコンのプログラミングと工業系の学科が混ざったような授業だな。


 これは聞いていても、実践していても楽しい。


 「アール、ここはどうやったらこうなるんだ?」

 「ああここ? ここはねぇ、マリオン第一法則を使ってロジックサーキットの選択に使うんだ。すると2番円内の魔術式で計算が行われるから、これをカウンターに表示させるようにすればいいよ」

 「成程……じゃあこの3番円に必要なロジックサーキットを書き込んでおけばいいんだな?」

 「そうそう。すると1番円の……」


 今は電卓のように、キーを打ち込んで計算させる計算機の解説中だ。

 初めの授業としては難しい内容だが、よくよく聞いていればなんとなく理解できて楽しい。


 そして意外なことに、アールはこの科目が得意だった。

 いやそう言えば、朝も魔道具作りが得意だとか言ってたような気がするな。

 実際、アールの魔法陣や魔道具に関する知識は凄い。

 教授の問題に誰よりも早く答えるし。


 聞いた話によると、何でも実家が大きな魔道具の店で、親父さんに昔っから魔道具のことに関して叩き込まれてきたらしい。

 本人も魔道具が好きだったし、この学院に入学した理由も、もっと魔道具の知識や技術を習いたいからだそうだ。


 「アールって意外とスゲェのな」

 「以外は余計なんですけど……」


 なんだよ引きつった笑い方しやがって、これでも褒めてんだぞ。


 まぁ、これから魔法陣学を習うのに、アールのような友人がいてくれたら俺も助かる。

 分からないことがあったらこれからどんどん聞いていこう。

 一限目とは逆の立場だな。


 「魔法陣はいいよね……計算され尽くした魔術式が思い通りの結果を出してくれるし、何より思い描いたことが何でも出来るって、凄いことだと思わない?」

 「ああ、うん……まぁ」


 そんなキラキラした目で語られても……。

 一芸に秀でている奴って、やっぱり変態なのかねぇ?



 _______________________________________________




 3時間目が終わって昼飯の時間となり、アールや青組で仲良くなった連中と一緒に食堂で昼食を食べる。

 入学して早二日、それなりにクラスに馴染めてきたようだ。

 これで俺がコミュ障じゃないことが証明されたはず。

 私のコミュニケーション力は53万です。


 昼飯を食べながらそれぞれ学院に入学する前のことなどを話していた。

 そして以外にも、冒険者をしていたことがある。という人が俺とカーリナ以外にも何人かいて、何でも親が冒険者で簡単な依頼をこなしていたらしい。


 因みにカーリナも一緒に食事を、と思ったが、カーリナはカーリナでリンマオやクラスメイトらに囲まれて楽しそうに話をしていたので、俺はそっとしておくことにした。

 決して寂しいなんて思わないぞ、絶対に!


 と思っていたら、そのカーリナは俺と目が合った途端、満面の笑みで俺の所に掛けて来た。

 その後ろからリンマオもやってくる。


 「お兄ちゃん! 選択科目は何を受けるの? やっぱり強化魔術?」

 「いや、俺は召喚魔術の授業を取ろうかと思ってる」

 「そうなんだ、じゃあ私もそうする!」

 「別に俺に合わせなくても、好きな授業を受ければいいだろ」

 「えぇ~……」


 いや気持ちは嬉しいんだけどね。

 お兄ちゃんとしては、無理に俺に付き合う必要はないんだよ?

 いや嬉しいんだけどね。


 「カーリ、強化魔術の授業を受ける、って……言ってた」

 「そうだけど……」

 「ほら、リンマオもそう言ってるし、一緒に受けて来たらどうだ? それに選択科目も二コマあるしな」

 「うん、そうだね……じゃあリンちゃん、一緒に強化魔術の授業受けよっか!」

 「うん……」


 うんうん。仲良きことは美しきかな。

 こう、可愛い系と美人系が戯れている姿を見るのは、実に目の保養になりますなぁ。


 「でも召喚魔術の授業は私も一緒に受けるから! それじゃあまたねお兄ちゃん! アール君も!」

 「ああまた」

 「うん、またね、カーリちゃん! リンちゃん!」


 それだけ言うと、カーリナは元気よく手を振りながらクラスメイトの待つ元の机に戻って行った。

 「あの子達誰?」「ベルホルトの妹?」なんて声が俺のクラスメイト達から聞こえてくるが、俺は一切答えてやるつもりはない。

 知りたければ俺を倒してから聞くんだな。

 まぁ、「さっきの子は俺の妹とその友達」とは答えてやるんだけどね。


 ただ、カーリナもクラスの女の子達に何やら質問されていた。

 その女の子達はこっちを見ながらヒソヒソと話をしていたので、多分こっちと似たような感じのことをカーリナに聞いていたのだう。


 とまぁ、そんな感じで二日目の昼食も食べ終え、4時間目の授業、”応用魔術学”を受けることに。

 これは1時間目の基礎魔術学からさらに発展した科目で、属性魔術同士で混ぜて使うとどうなるか、とか、その原理は、とか、或いは魔力が人体に蓄積されるプロセスとかを教える科目だ。


 これも前世で義務教育を受けていた俺としては、あー成程な。と思える説明だったのだが、どうも他の生徒はそうではないらしく大多数が終始首を捻っていた。


 そして4時間目が終わり、5時間目は歴史だ。

 因みにこの授業の教授は筆記試験の時のマダムだった。


 勿論、歴史といってもこの国の歴史だけじゃなく他の地域、もっと言えば東部地域や西部地域などのガニメデ大陸に関する歴史がほとんどだ。


 「皆さんにはこれから、ガニメデ大陸における歴史とこの国の歴史、双方を学んでいただきます。特に皆さんに学んで頂きたいのがこの国、ハルメニアについてのことです。このハルメニア王国が建国されるに至る過程と、今現在における我が国の状況などを皆さんに学んで頂き、我が国に対する理解と愛着を深めて下さい」


 というのが主旨だそうだ。

 要はこの国のことを知って愛国心を持てよ。ということだろう。

 俺自身、この国に対する愛国心が無いことは無いが、どこかの将軍様の国みたいに熱狂的にはなれない。

 まあ、あの国の国民もどこまで本音か分からんかったが。


 そんなふうに思いつつも、これも大事な科目なのでしっかり勉強していくつもりだ。


 「う~ん……そこはカツラだろ……」


 ただ、隣で意味不明な寝言を言って寝ているアールのように、クラスでは船を漕いでいる人がチラホラといてこの授業の不人気さが伺える。

 というか俺も眠い。


 ただ、皆も高い授業料を払って勉強しに来ているので、船を漕ぎながらも必死に睡魔と戦いながら授業を受けていたのが何とも素晴らしいことだ。

 そもそも爆睡しているのはアールだけだし。

 涎が垂れてて汚ぇな。


 あ、バシルも眠たそうな顔してる。

 よし、アイツにだけは負けんぞ。

 頑張ってアイツよりいい成績を取ってやる!


 そんな感じで、初日の授業が終わり、次は選択科目の時間となった。

 選択科目かぁ……やっぱり召喚魔術だな。

 どんな授業なのか今からでも楽しみだ。

 頑張ろう。



 _______________________________________________




 5時間目の授業が終わり、30分程休憩した後に始まる選択科目の為、俺とアールは青組の教場から目的の教場へと向かっていた。

 そう、召喚魔術の授業が行われる教場だ。

 アールは魔道具学の教場だが、方向が同じなので一緒に向かっていた。


 選択科目の時間は6時間目と7時間目の2コマに分かれていて、連続して同じ授業を取ることも出来るし、違う授業を選択することも出来る。

 また、2コマある内のどちらか、或いは両方を自習時間に充ててもいいらしい。

 ただ、ジューダスが言っていたように、必ず選択科目の中で一科目は単位を取得しなければならないが。


 「この学校、本当におっきいね。教場を移動するのに違う校舎へ行かないといけないし」

 「ああ、校舎だけで7棟もあるからな。早く場所を憶えないと道に迷いそうだ」

 「そのせいでまた白組に絡まれるのも嫌だしね」


 アールと二人、一階の渡り廊下を進みながらアレコレと話しをする。

 というか未だにこの学院の見取り図というか、どこに何があるのかが憶えきれていないのが現状だ。

 校舎はどれも似たような建物だからうっかりしていると迷ってしまいそうになる。


 それにアールが言っていたように、白組という厄介な連中に絡まれるのも嫌だ。

 昨日の入学式依頼遠目にしか見ていないが、彼らの何人かは横柄な態度をとっていて、他の青、緑、黄、赤組の生徒達も迷惑そうに見ているのが特徴的だった。


 「あ、僕この教場だから。それじゃあ」

 「ああ、またな」


 どうやら魔道具学の教場に着いたみたいで、アールがその中へと入って行った。

 召喚魔術の教場は、今いる校舎の端っこの方らしい。

 移動するのが面倒だな、なんてボンヤリ考えながら教場へ向かうことに。


 「おい」

 「へ? あっ!」


 すると突然後ろから呼び止められ、間の抜けた声を出しながら振り返ると、そこには入学式の時に俺のことを睨んでいたバーコード教頭が俺を睨んでいた。

 この人結構背が高いな。


 「貴様がベルホルトだな」

 「え? あ、はい……」

 「入学式に堂々と寝ているような者が、真面目に授業を受けられるのか?」


 え? なにこの人、怖い……昨日のことはちゃんと反省してますって。


 「はい、あの時はすみませんでした……」

 「フン、今さら反省か。まったく、ジューダス教授も何故こんな者に……」

 

 そういうなり、バーコードは俺を追い越してさっさと歩いて行ってしまった。

 何だったんだろうか? ジューダスがどうのとか言っていた気がするが……。

 まあ考えてもしょうがないし、バーコードの前では大人しくしておこう。


 さて、バーコードの姿も見えなくなったし、今度こそ教場に向かおうかな。という時だった。


 「おにーちゃん!」


 今度はマイシスターエンジェル、カーリナが後ろから走ってやって来た。

 その後ろにはしっかりリンマオもいる。


 「おお、カーリナ! それにリンマオまで」

 「うん……お昼ぶり」


 アールと別れ、バーコードと出くわしたと思ったら今度はカーリナとリンマオと合流か。


 「お昼の時も行ったけど、召喚魔術はお兄ちゃんと一緒に受けようと思ったの!」

 「……7時間目に……カーリと強化魔術を受ける、つもり」

 「ああ、成程」


 そう言えばそんな話をしてたな。

 まさか本当に来てくれるとは、お兄ちゃん、感激!

 ホント、カーリナはいい子だな……。

 このカーリナの俺に向けてくれる笑顔! .あのバシルのクソ野郎にだけは見せたく――


 「カーリナ!」

 「あ、バシル君!」


 ちっ! 余計な奴が余計なタイミングで来やがった……。


 「……お兄さん、凄く怖い顔してる……」

 「……気にするな」


 リンマオが若干引いている気がするが、まあそれはしょうがない。

 嫌いな奴が目の前に現れたらこうなるさ。


 「バシル君も召喚魔術の授業受けるの?」

 「ああ、ここの授業がどういうものか一度見てみたかったからな」

 「一回見たらもう来るなよ」

 「お前に言ってねぇよ」

 「は?」

 「あぁ?」


 ポロっと一言言えばすぐに食いついてくるなコイツは。

 スッポンか。

 そうやってお互いに向かい合ってメンチを切り合うが――。


 「もう! なんでそんなに仲が悪いの!?」

 「ちっ……」

 「フン……」

 「もう……ほら、リンちゃん行こう。お兄ちゃん達も!」

 「うん」


 カーリナの仲裁で俺達は互いにそっぽを向き、リンマオを伴って歩き出したカーリナに無言で付いて行く。

 その途中、リンマオが振る向いてポツリと呟いた。


 「……喧嘩を、するほど仲が――」

 「良くねぇよ!!」


 クソっ! またバシルとハモってしまった……。

 一生の不覚だ!


 まあ、余計なおまけが付いて来てしまったが、これから楽しみにしていた召喚魔術の授業なんだ。

 気合を入れて挑もう。

次回は2月26日に投稿となります。

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