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プロローグ

 「お疲れさまでーす……」


 本屋のバイトを終え、店長に挨拶をする。


 「はいお疲れさん」


 そんな適当な返事を聞き流し、店を出て足早に家へと向かう。

 それはもう、疾きこと風の如しだ。


 だって今日はクリスマスだから……。

 街中でイチャつくカップルとか見たくないから……。

 「リア充爆発しろ!」なんて叫んでみたいが、そんなことをすれば間違いなく変な目で見られる。


 あ~あ、何でこんなに寂しい思いをしているのだろうか……。

 思えば両親と喧嘩別れした時からかもしれない。


 高校を卒業した時に、『漫画家に、俺はなる!』ってどっかの海賊みたいなことを言って、親と喧嘩して家を飛び出して、今はバイトをしながら一人暮らしだ。

 やっすいボロアパートに住んでいるが、いずれ漫画でビッグになって親を見返してやるんだ!

 って意気込んではいたけれど、実際は今の生活を維持するのに精一杯。


 最初こそは漫画っぽい物も描いてはいたが、なんだかんだと理由を付けて描く時間が減り、最近では全く手を付けていない状態だ。

 これじゃ親に何にも言えなくなる。

 今の俺を見たら、「ほら見たことか!」と言われるのが目に浮かぶ……。


 そもそも、俺自身飽きっぽいというか、すぐに逃げ出す性格なのがいけないのだろう。

 小学校の時にやっていた水泳も、中高の勉強や部活も、すぐにやめて放り出したりしていた。

 分かってはいるんだが、28歳になって今更どうにもできない。


 「クスクス! 何あのひと~」

 「おいおい、笑ってやるなよ~」


 街中を歩けば、そんなカップルの声が聞こえてきそうだ。

 あくまで俺の勝手な想像だが。

 どうにもそう聞こえてくる。

 すごく惨めだ。


 ……はあ、人生こんなはずじゃなかったのになぁ……。



 _______________________________________________



 

 競歩でもしてるんじゃないか? っていうくらい、早歩きでボロアパートに帰って来た。

 取りあえずパソコンの電源を入れ、立ち上げている間に部屋着に着替える。

 バイト先で買ってきた某島津の首置いてけ漫画を片手に炊飯器を覗くと、ふっくらおいしそうな白米が炊けていた。

 バイト前に予約でセットした分だ。


 「お主たちだけがおいの幸せよ……」


 いかん、つい口調が移った。

 そんな白米を茶碗に入れる前に、炊飯器の蓋を閉めて漫画の続きを読んでしまおう。


 「……はぁ、続きはまた来年かな……」


 読み終わりって一息つく。

 さっき呼んだ漫画を、他の漫画で出来た山に加えた。

 ……うん。汚ねえ。


 漫画タワーが部屋中に立っていて、足の踏み場が少ない。

 生活するだけで精一杯なのに、なんでそんなに漫画があるかって?

 そりゃああれだ、漫画の教材として購入したんだよ……。

 漫画の原稿も道具も今は埋もれてるけど。


 取りあえず片そう。

 白米ちゃん達はもうちょっと待っててね。

 机の傍にある押し入れを開け、両手一杯に漫画を抱えてしまいこむ。


 「もう上の方にしかスペースねえな……」


 当然、押入れにも収納できるキャパシティがあるので、それを考慮しないといけない。

 下の段、真ん中の段、上の段と別れているが、もう上の段しか空いていない。

 上の段に入れようとしたら、踏み台がいるのだが……。


 「……この椅子、大丈夫か? だいぶボロボロだな」


 小学校の頃から使っていた椅子が今にも壊れそうだ。

 まあ、余り心配しなくても大丈夫だと思うので、漫画を抱えて踏み台にする。


 「よっこいしょ、っとととととお!?」


 漫画を持ち上げ、押入れに仕舞おうとしたら、大丈夫だと思っていた椅子がバキッ! と音をたてて折れた。

 勿論、それに乗っていた俺も万有引力の法則にしたがって落下する。

 漫画を持ち上げようとした態勢のまま後ろに倒れ、その直後、後頭部が激しい鈍痛に襲われた。

 

 「いっ!!? があ……」


 言葉にならない。

 呼吸も上手く出来ない。

 痛みで転げまわると、机に血が付いているのが見える。

 

 ああ、机にぶつけたのか……。


 冷静な思考が頭を過る。

 震える手で後頭部を抑えると、血がドクドクと出てきて次第に意識が朦朧とし、視界がぼやけてくる。

 血の出る量が凄まじい。


 死ぬ。


 そんな言葉が浮かぶ。

 すると、途端に頭の中が恐怖で埋め尽くされる。

 心がパニックになっているのに、体が動かなくなってくる。


 嫌だ、怖い! 死にたくない!

 俺はまだ生きたい!

 童貞だって捨てたいし、金持ちにだってなりたい!


 嫌だ、生きたい。

 お父さん、お母さん、わがまま言ってごめんなさい。

 謝るからたすけて!


 「きゅ、きゅうきゅうしゃ……」


 携帯、で救急しゃを呼ばないと。

 あれ? たてない?

 

 ああさむい……。

 なんか、ぼーっとして……。


 あ、ごはん、たべなきゃ。



 ……………………



 ………………



 …………



 ……


初めまして! 薩摩妹子(♂)と申します。


この度は”ありきたりな転生 ~でも後悔だけはしたくない~”を読んでいただき、誠にありがとうございます。

書き手としては素人同然でございますが、力一杯の努力をもって、少しでも良い作品にしていけたらな、と思っておりますので、何卒叱咤激励、ご指導ご鞭撻の程よろしくお願い致します!


因みに、本日より第一章10話+αを十日に分けて投稿いたします。

本日についてはプロローグ及び、第一話を掲載いたしますので、併せて御目通しの程よろしくお願い致します!

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