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5.7 ねぇ純聞いて

 昼休みの時間。

 モナが純の前の席に座り、いつもの四人が食事をしている。


 優紀は、純がモナの作った弁当を食べている様子を見ていた。

 嬉しそうに見守るモナとは対照的に、純は無表情で箸を動かしている。

 その三人を少し離れた所で見る翔太は、期待と不安を胸に笑顔を浮かべていた。


「純とモナさんって、やっぱり仲良しだよね」


 優紀の第一声に翔太は息を止めた。

 しかし直前に行われた会話など知る由も無いモナは、素直に表情を緩ませる。


「そうかなぁ?」

「うん。親子みたい」

「えー、ジュンみたいな子供やだよ。もっと元気で可愛くないと」


 アピールするような口調で言うモナを無視して、純は探るような目で優紀を見た。

 それを受けて優紀は微笑む。


「子供はモナの方だろって純が目で言ってる」

「あーひどい。最近は掃除も洗濯も料理も全部私がやってるのに」


 ふん、と言って顔を逸らした後、チラチラと純に目を向ける。

 それを見て純は小さく溜息を吐いた。


「なにその溜息ぃ……モナちゃん今日から家事やめちゃうぞ?」

「……自分でやるからいい」

「冷たい! せめてボケに突っ込んで! 私普段モナちゃんとか言わないよ!?」

「……優紀、相手してやってくれ」


 純は一度もモナに目を合わせないで言った。

 それから無表情のまま持っていた箸で唐揚げを取ろうとして、空振りした。


「そんな態度のジュンにはお弁当あげません」


 弁当箱を取り上げたモナが拗ねたように言った。

 純は黙って箸を机に置き、立ち上がる。


「こ、コンビニはダメ!」


 純の前に立つモナ。

 めんどくさそうな雰囲気を漂わせる純の背中に、優紀が声をかけた。


「メロンパン、食べる?」


 純が振り向くと、一口サイズに千切ったメロンパンを差し出す優紀が目に映った。


「ありがとう」


 素直に受け取り、そのまま口に入れる。

 それを見たモナは慌てて机に置かれた箸を取って唐揚げに刺し、反対の手に持った弁当箱で純の肩をツンツンした。首だけ動かして振り向いた純の口に、モナが唐揚げを押し付ける。

 純は助けを求めて優紀を見た。

 少し考えるような間の後、優紀は腰を浮かせて純に顔を近付けた。

 突然の接近に驚いて純が身を引くと、優紀はモナが持っていた唐揚げをパクリと口に入れた。

 

 その後、何事もなかったかのように座る。

 何度か咀嚼したあと飲み込んで、モナを見て微笑んだ。


「おいしい」


 モナは何度か瞬きをしてから、同じように微笑む。


「でしょ? 自信作なんだから」

「うん。でも純はもう少し塩辛い方が好きだと思う」

「そうなの?」

「去年言ってた」


 純を挟んで微笑み合う二人を見て、翔太はそっと距離を置いた。


「ねぇ純聞いて」


 モナの方を見たまま優紀が言う


「私、昨日バイト抜け出しちゃったこと、まだ謝ってない」


 その言葉を聞いて、流石に純も驚いたような表情を見せた。


「なんて説明したらいいかな?」


 見開かれた純の両目に、いつもと同じ表情をした優紀が映った。

 そこで会話が途切れる。

 純の返事を待つ優紀に向かって、モナが言う。


「それ、私も気になる」


 一瞬だけ、優紀は緊張の色を見せた。

 それはモナはもちろん、純と翔太にも伝わった。

 しかし彼女は堂々とした声で次の言葉を言う。


「そうなんだ。でも、昨日追いかけてこなかったよね」

「えへへ、お金払ってたら見失っちゃった」

「そっか」


 笑顔のまま純を一瞥して、


「じゃあ、今日も二人で来てよ」

「お店に?」

「うん。一緒に謝って」


 モナと優紀は同時に純へ目を向けた。

 今度こそ返事を求められた純は、二人を交互に見た後、目を伏せた。

 そのまま小さな声で言う。


「……部活の後なら」

「うん。待ってるから」

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