4.4 どうしちゃったのかな
それなりにドキドキしながら、純の住んでいる場所に行った。
小さいアパートかと思っていたら、そこそこ大きなマンションだった。
玄関で靴を脱いで、部屋に上がる。
……ここに、モナさんと二人で。
多分、1LDKで、二人で住んでも少し広い。
「おかえりー……あれ、ユウキちゃん?」
あ、モナさん……モナさん!?
「な、な、なに、その恰好」
布! 布だけ! 巻いてる!
驚きながら純に目で説明を求めると、彼は手で顔を覆っていた。しまった、そんな声が聞こえてくるような気がする。
「……油断した」
油断って何!? いつもこうなの!?
「ごめん、ちょっと服着せてくる」
「だ、ダメっ、純はダメっ!」
いつもこうだよ! 絶対そうだよ!
「私がやる!」
本当に何もないのかな? 絶対に怪しい。
「もう、ダメだよモナさん」
「……あはは、ごめんね」
あれ、モナさん本当に元気が無い。大丈夫かな。
それからモナさんに服を着せて、寝室のベッドに寝かせた。ベッドひとつしか無いけど、まさか一緒に寝てないよね?
「……ユウキちゃん、どうしてここに?」
「お見舞いだよ」
「……なんで?」
「心配だったから」
「……えへへ、嬉しい」
……なんか、照れる。
「ねぇユウキちゃん。大好き」
「もう、どうしたのモナさん」
「えへへ、大好きだよー」
といって、モナさんは私に両手を伸ばす。
それから、ひんやりした頬で頬ずりされた。
「あの、すみません。ここに飲み物置いておくので」
お盆にコップを乗せて現れた純は、それを床に置くと素早く後退した。
「えぇぇ、ここに居てよ」
それをモナさんが引き止める。
純は何故か私の方を見て、困ったような表情をした。
「……いてあげたら?」
「ジュン、おねがい」
二人がかりで言うと、純は諦めたように息を吐いた。
……やっぱり、素直に気持ちを言えるモナさんが羨ましい……憧れちゃうよ。
「えへへ、やっぱりジュンは優しいなぁ」
「黙って水飲め。それから寝ろ」
「えー、せっかくユウキちゃんが来てくれたんだもん。お話ししたい」
「だそうだ」
といって、一歩離れた所に立つ純が私を見る。
「モナさん、どんな話がしたい?」
「えっとねー、じゃあ今日の学校のこと! どんなことがあったの?」
「うーん、特に何も」
「えー、つまんない」
「あまり優紀を困らせるな。あれだ、お前が居る時と特に変わらなかったよ」
「えー、そう? 私が居なくて寂しいって思わなかった?」
「いや全然」
「もぅ! ジュンのいじわる」
「こら、まだ調子が悪いんだから騒ぐな」
「だってぇ、昼ドラを見てもひとり、だったんだもん」
「なんだその、妙にリアリティのある寂しさ」
……二人、楽しそうだな。
「モナさん、昼ドラとか見るんだ」
「うん、面白かったよ」
「純も見るの?」
「いや、俺は全く。学校にいるし」
「そうだよね」
「優紀は、昼ドラとか興味あるのか?」
「……どうだろ。なんか怖い」
「分かる。愛憎とか、そういうの俺も無理だ」
「純、意外にピュアだよね」
「意外って、どんな印象だったんだよ」
「うーん、なんか、めんどくさい?」
「まぁそれは否定しない」
「なんだそれ」
純と話していると、隣でモナさんが笑った。
「えへへ、やっぱり二人は仲良しだ」
本当に嬉しそうな表情をしたモナさんを見て、私はどうしてか胸が痛かった。
「まぁ、なんだかんだ一年くらいの付き合いだからな」
……あ、仲良しは否定しないんだ。
「そっか。一年か。一年後、私とジュンはどうなってるかな」
「俺は分からないけど、おまえは追い出されてるんじゃないかな」
「追い出されちゃうの!?」
「風呂場のドアも壊れたままだしな」
「あ、あれは、ちゃんと直したじゃん」
「ガムテープじゃねぇか。やったのほとんど俺だし」
「うー、細かいこと言うジュン嫌い」
「今追い出そうか?」
「ふんだ。そんなこと言って、私の体調が悪化したら心配してくれるの知ってるんだから」
「すごい想像力だな。君は小説家にでもなった方がいい」
「あ、それ昨日のドラマのセリフだ」
私を挟んで、二人が楽しそうに話している。
私の知らない、二人だけの話をしている。
……なんか、なんか。
「それじゃ、モナさん大丈夫そうだから、私、行くね」
「え、帰っちゃうの?」
「優紀はバイトがあるんだ」
「そうなんだ。ありがとね」
「ううん、またね」
最後にモナさんの笑顔を見て、私は逃げるようにして部屋から出た。
「お邪魔しました」
部屋を出て、階段を下りて、マンションから出て、駆け足で家に向かう。
……ああもう、ほんと、どうしちゃったのかな。




