3.13 人工呼吸してくれる?
「優紀と仲良くなった理由? なんだっけ……体育祭くらいだったかな」
その日の夜。
リビングでテレビを見ていたら、モナが隣に立って声をかけてきた。
「それはそれとして、この質問の意図は?」
「うーん、なんだか気になったから」
……これは、まさか。
ふふ、さては優紀のやつモナを口説き落としたな。
「あれは暑い夏の日のことだった」
「あーやっぱりいい」
「なんでだよ!?」
「だってそうなった純の話つまんないし長いんだもん」
こいつ、せっかくの厚意を……。
「それに比べて、このドラマは面白いねっ」
「そうか?」
画面に映っているのは、週間放送の恋愛ドラマだ。
もしかしたら面白くなるかもという期待を込めて見続けているが、今のところ絶望的にツマラナイ。
「ジュンもこういう恋愛してみたい?」
「いや、全然」
世の中には恋愛に関する創作物が多くあるが、大きな括りで二種類に分けることが出来る。
それは男と女、どちらの登場人物が魅力的に描かれているかの違いだ。
このドラマは男が魅力的に描かれている。
この場合、女の方が好きになるのは頷けるが、男の方はどうして好きなんだよって疑問が浮かんでしまう。その点、両方が魅力的な美少女ゲームってほんと神。
「文字通り次元が違うってことだな……」
「どういうこと?」
「なんでもない」
ふーんと言って、モナはテレビに目を戻した。
尻尾がゆらゆら揺れている。
俺はいつかの床を思い出しながら、そっと距離を置いた。
「わわわっ、ジュン見てジュン! 人工呼吸だよ!」
「ああ、そうだな」
テレビを見ながらモナは目を輝かせた。
俺としては、やはりドラマの中の男が、あの女を好きな理由が分からない。
だから、まったく気分が盛り上がらない。
「ああよかった。女の人生き返った」
もともと死んでねぇぞ……。
「ねぇジュン。ジュンは私がおぼれたら、人工呼吸してくれる?」
「え、やだよ」
「え、えぇ!?」
いや、そんな泣きそうな顔しなくても。
「じゃ、じゃあ心臓マッサージは?」
「それならやってやらなくもない」
「ほっ、よかった」
そもそも悪魔って溺れるのか? ……想像できないな。
「あ、私じゃなくてショウタ君だったら?」
「迷わない」
「あはは、やっぱりか……ユウキちゃんは?」
「優紀? ……迷うけど、多分、他に方法がないなら」
「……そっか」
「ちなみにモナは?」
「私? まずショウタ君は嫌でしょ? ユウキちゃんは迷わなくて……ジュンは」
「あ、俺がそうなったら見捨ててくれていいから」
「見捨てないよ!?」
「いや、逆の立場なら見捨てるし」
「心臓マッサージしてくれるって言った!?」
「記憶にない」
「もぉぉぉぉ! ジュンのいじわる!」
「うるさい、近所迷惑だ」
ぶーぶー騒ぐモナを見ながら、ふと、今日も良い日だったなと思った。




