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アタタカイヤミ 99

 冬の空にふさわしくない白い光が燦々(さんさん)と頭上に降り注ぐ。

 僕は自転車をこぎながら冬の歩道を駆けてゆく。右折の踏切を渡り、左折する。このまま、まっすぐに行くと瀬野駅に着くが、高校に行くためにはすぐの三角路を右折しないといけないのだ。

 僕はすぐ右折をして高校に向かう。その高校の手前の横断歩道の前でいったん止まらないといけないのだが、その歩道の手前に見知った背中が二つ見えた。

「美春、光。おはよう」

 見知った二人が振り向く。

「おはよう、一樹」

「一樹、おはようさん」

 僕は二人のそばによる。

 じゃり。

 ぼくは美春の横に立つと、美春がぽつりとつぶやく。

「ついにやったね…………、私たち」

「ああ」

 僕は肯いた。一昨日、主要なマスコミに波田(はた)さんのいじめのことを全部書いて送ったのだ。マスコミが動くとすれば、そろそろだ。

 しかし、それに光が疑義を示した。

「しかし、マスコミの連中達は果たして動くかな?今は東北大震災を取り上げているからな。本当に動くだろうか?」

「うん。そうだね」

 美春がそれに同意する。そしてその考えは僕も同様だった。果たして今、マスコミは動くか?今は何て言ったって、原発と被災者が旬だからな。マスコミが動くことが考えられとすれば………………。

「むしろ、今はいじめの話題に話題に乏しいからこそ、動く。動く理由はそれしかない」

それに真部が肯く。

「ブームは忘れ去られたときにやってくる。というあれか……………。しかし、今がそのときかどうかは微妙なところだな」

 僕は肯いた。そのとき、信号が青になったので僕たちは横断歩道を渡る。

 この横断歩道の先にある道は二つの自転車が通るのは精一杯なので、彼らを先に行かせ、僕はそのあとをついていく。そして、横断歩道を渡るときに一つの白いチョウチョがひらひらと僕の前を横切った。

 あのチョウチョは何を意味するのか?何か意味深に現れてきたので考えてしまったが、そんなことはすぐに忘れて僕は学校の道へ急いだ。

 



 学校の自転車置き場に行く道に何人もの人が止まっていた。

 僕は光のそばによって話す。

「何だろう?」

「さあ、わからん。しかし、これはもしかすると……………」

 よく、前を見ると二人の先生が生徒に何事か話して、学校に入らせているようだった。

 僕たちは後ろに位置して、じわじわと前に進む。周りの押し詰められた窮屈が不安とともに汗になって出てくる。いったい、何が学校に起きたのか。そして、だいぶ前に来たとき先生の声が聞こえた。

『外にマスコミの人たちが来ているから、彼らに何か話してはいけない。その場ですぐに校舎に入るように』

 要約してしまえばこんな事だった。こう言うことを先生達は話していたのだ。

「光」

「ああ、そうだな、一樹。どんぴしゃだ」

 僕と光が目を合わせた。考えたことは光の一言に集約される。どんぴしゃだ。

 そして、僕たちは重みに引っ張られ砂時計のように小さな穴に寄せ、何とか外にに押し出された。




 自転車置き場に自転車を止める。もうそこにいるだけでパシャパシャとしたカメラの音が聞こえてくる。

 光と美春も自転車を止めていたようだ。僕は彼ら近くに歩いて言う。

「じゃあ、行くか」

 それに光は肯いたが、美春はそれにぐずった。

「ええ〜?ちょっと、待ってよ。相手、マスコミでしょ?すごくしつこい奴らだから、私たちだけじゃあなくて、リンちゃんも一緒に入れようよう。リンちゃんだけ一人だけで行動させるのは酷だよ」

 美春は唇をとがらせてそう言った。

「あいつは一人でも大丈夫だと思うが………」

 光がそう言ったが、美春は首をぶんぶんと横に振って光にかみついた。

「ダメダメ!そんなの危険すぎるに決まってるよ!リンちゃんも一緒に行動するの!」

 今度は美春は唇をへの字にしていった。う〜む、確かに美春の言うことも一理あるような。

 僕は光に向かって言う。

「光。さすがにあのキャサリンでも一人でマスコミの取材に向かわせるのはダメだと思う。ここはやはりみんなで固まって動いた方がベストだと思うんだ。待っておいた方がいいよ」

 それに真部もこっくりと肯いた。

「確かにそうだな。よし、キャサリンを待とう」

 その真部の言葉に。

「よかった」

 ほっこりとした顔で美春が微笑んだ。

 がた。

 また、この自転車置き場に一人の生徒が足を踏み入れた。僕はそう思って振り返るとちょうどそこにキャサリンが登場した。

「おはよう、みんな。ついにマスコミが来たわね」

 そう言って、キャサリンは僕たちのそばの自転車置き場に自転車を止めた。

「キャサリン」

「何、一樹?」

 僕がキャサリンを呼ぶと、キャサリンは自転車をロックして振り向いた。

「外でマスコミが来ている。ばらばらで校舎のほうへ行くのは危険だから、固まって行動しよう。そういう結論にたどり着いたけど、それでいいかな?キャサリン」

 それにキャサリンは小川のせせらぎのように肯いた。

「それが賢明(けんめい)な判断ね。わかった、そうしましょう。そして、一気に校舎へ向かいましょうか」

 僕たちは肯いて、そして固まって校舎のほうへ向かった。




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