アタタカイヤミ 77
食卓に着くと、和也さんとおばさんがいた。ご飯を見ると今日の料理はご飯と味噌汁とショウガ焼きにキャベツの千切り、豆腐がついた料理だった。
「一樹くんも来たことだし、それじゃあいただきますをしようかな」
そう、和也さんは言って、僕たちはいただきますをしてからご飯に箸をつけた。
そして、僕たちはご飯を食べていると和也さんが話しかけてきた。
「どうだ、一樹くん。学校に慣れてきたかな?困ったことはないか?」
そう言ってきたのだ。僕はこの事にどう返事をすればいいのか迷った。確かに、学校にはいけれているんだけど、それとは別の問題が浮上してきたからだ。
しかし、僕はこう言った。
「大丈夫です。ちゃんと学校にはいけれてます」
「そうか、それはよかった」
おじさんは安心した笑顔を見せた。僕はそれを見ておじさんに心配させてしまったんだな、と思う。それについては少し胸が痛んだが、今はそれよりも村田のことをどうするかを考えないといけない。
「まあ、よかったわ。一樹くんがちゃんと学校にいけれて。ねえ、あなたよかったわね」
「ああ、全くだ」
二人は僕がちゃんと学校にいけれていくことを喜んでいるようだった。まあ、確かに学校に行くことは大切だが、いじめられた場合はどうなんだろうな?
自殺ぐらいなら登校を止めるべきなのか。それとも、我慢していき続けるべきなのか、それか、いじめに対して抵抗すればいいのか。
僕はやはり死ぬぐらいなら登校を止めた方がいいと思うな。なぜ、いじめなんか受けてまでも登校するのかがよく分からない。とにかく、死ぬぐらいなら登校は止めた方がいい、と僕は思う。
これは当時の考えであった。今の自分もこの考えとだいたい一緒だ。高校は過ぎ去るところだし、今は大検があるから、大検で大学を目指せばいい、と言うのが今のぼくの考えだ。つまり、だいたい今と一緒だが、微妙なところは違う。それはあとで話す。
ともかく、僕たちは僕の内面を除けば仲むつまじい団欒をしていた。外は冷厳なる世界がますます深まる中、僕たちは温暖な世界を享受していた。
「ち!マジむかつく!」
女子生徒が机を蹴った。金村さんのグループについている。千早という女子生徒だった。千早は身長が高く、男勝りな言動をして、それでいて運動が抜群な女の子だった。
その子が机を蹴ったのだ。理由は彼女が、いや彼女たちがいらだっていたからなのだ。
「これで3回目だよ。私らが成田のゴリラに捕まったのは、どう考えてもおかしいよね」
里見という金村についている女子生徒が話す。それに千早も大きく肯く。
「ああ、おかしい。誰かがちくってるとしか思えない!だれがちくっているんだ!」
また千早が吠えた。昼食時、彼らはまた村田を連れて行こうとして、僕がまたメールで成田先生に知らせたのだ。それで彼らのいじめが阻止されたのだ。
しかし、また彼らに誰かが密告をしているという事実を何か確信させてしまったようだ。
「ち、だれがちくってんだ。ただじゃ、おかねえ」
そう千早は毒づいた。もう、授業が始まる10分前だ。そのとき、僕は便意がもう要してきたので今度こそ、トイレで用を足すべくトイレに向かった。
僕が金村さんのグループにすれ違うとき、そのとき、僕に千早が呼び止めた。
「おい、笹原」
僕は心臓がびっくりした。だが、なるべくそれを出さずに振り返る。
振り返ると疑わしそうに見る千早の顔があった。
「何ですか、千早さん」
僕がそう言うと千早が追求するような目をしてこう言った。
「お前、ちくってんじゃないだろうな?」
ついに来たか。
そのとき僕の胸に到来したのは衝撃ではなくてあきらめだった。いつかは聞かれるんじゃないかと思ったが、実際にそう来たのだ。そう、すとんとした感覚を僕の臓腑に落とされたのだ。
「違うよ」
そう僕はダーツ投げのように素っ気なく、軽く言った。
僕の言葉に千早はぽかんとした表情をしていたが、何かを言う前に僕はその場から出た。まだ、便意があったので。




