アタタカイヤミ 69
成田先生はホームルームを終え、教室から出て行った。僕たちはだれもがなにも口にしないまま、教室から出た。
クラスのみんなは負傷者を運ぶ軍人のように黙々とした態度で歩いていた。僕はようやくこのクラスがまともになったのかと思ったが、それは違った。
彼らが階段を下り、下駄箱の靴を取り出し、履き、外に出て行って、学校の裏側にある、自転車置き場に来たときにそれは起こった。
「あ〜、マジだりぃ、何であんなやつの言うことを聞かなくちゃならないんだよ」
その堕落した集団の先陣を切ったのは金田くんだ。しかし、金田くんのその一言でクラスのみんなはそれに続いた。
「ああ、ほんとだ。あんなに叱ることはねぇと思う。どうかしているぞ、あの教師」
「そうーよねー。だいたいさ、あの波田がいけないんだよ。あのデブ、ぺちゃくちゃ話してちっともこっちの話聞かないんだから、はっきり言ってダメよね〜。死んでくれて当然な人間なんだよ」
「そうそう、あいつさ本気でうざかったんだから、死んでくれたら、その分。あれ、環境保護!?になるんだよ。だってもうなにも食べないんだからさ」
それにみんなが爆笑した。僕はその輪に加わらす、さっさと帰ろうと思い、自転車のロックを外し帰ろうとした。
そうすると、金田くんが僕に声をかけてきた。
「おい、笹原。おまえ、あの授業のことどう思う?」
ついにこの時が来たか。だいたい予想してきたところだけど、ついに来たか。と、僕はそう思った。
「べつに」
それだけ答えて僕は自転車で去ろうとしたら、僕らのなじみ深い野太いが聞こえてきた。
「コラァ。お前らまだ、こんな所にいたんか!さっさと立ち去らんか!」
成田先生が飛んできて僕らを叱ってきた。
「いや、先生これはですね。今から帰る用意をしていたんです」
金田くんがしどろもどろになって弁明をした。しかし、成田先生はそれを許さなかった。
「お前ら、たださえ遅い時間になっているんだからさっさと帰れ。親が心配するだろう。だから、さっさと帰れ」
クラスのみんなは敵軍の負けた敗走兵のように屈辱にまみれつつ、しかしそれを隠して付き従うという姿勢を見せつつ、黙って帰途についた。
しかし、宗堂に帰る帰り道、まえにいる二人組の男達の声が聞こえてきた。
ーああ、今日は大変だった。あんな事になるなんてついてないな。
ー全くだぜ。それよりか、川口。これからうちに来てゲームをしないか?新しいやつを買ったんだ。ファントムてやつ。それするか!
ーああ、そうしよう、そうしよう。今日は大変な一日だったからな。
そんな声がミツバチが過ぎ通るように僕の耳に入り込んできた。




