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アタタカイヤミ 65

  ああ、寝よう。

 僕は家に帰るなりすぐベッドに倒れ込んで、このまま眠ろうと思ったのだ。今日はいろんな事があった。村田のこと、成田先生のこと、そして、寺島さんのこと。しかし。

 もう、あいつとは口も聞きたくない。これでおさらばだ。

 寺島さんか。考えれば彼女がいてくれたおかげで僕は友達を得ることができた。しかも、彼女は僕が初めて得た友だちというのに。

 しかし、深くつきあうにつれて、彼女の本当の姿が分かるにつれて、好きな異性として幻滅し、一人の人間として幻滅した。

 結局、僕らはここまでだった。結局、僕らは友人にはなれなかったのだ。

 そんなことを思いながらまどろんでいると携帯の音で目が覚めた。

 急いで携帯を見てみるとそこに書かれてあったのはキャサリン・フレイジャーという文字だった。

「はい、もしもし」

『こんばんは、フレイジャーよ』

 フレイジャーはあくまでも冷暗所から流れている冷気のような、しかし洞窟のようなじめじめした場所ではなく、無機的なからりとした口調で言った。僕は最初はこの言葉にぞっとしてきたが、慣れれば普通に対応できた。

「何だ、フレイジャー?」

 そう言うとフレイジャーは、涼やかな声で言ってきた。

『別にたいしたことじゃあないけど。あなた、美春とけんかしたんだって?』

「ああ」

 何だ、フレイジャーにも知れていたのか。まあ、当然か、彼女たちは友人同士だからな。

「ああ、そうだよ、けんかをした。それで多分、絶交をしたんだと思う」

 そう僕は言った。夜に鳴くコオロギの声が闇のしじまに一つ響いていた。

『……………。そう、仲直りする気はないの?』

「…………どうしようか。いったんは絶交だ、距離を置いて冷静に考えてみる。それで仲直りをするかどうかを決める」

『…………そう』

 さっきまでは口も聞きたくないと思っていたのにフレイジャーと話していると、仲直りができるだろうか?と思ってきたから不思議だ。だが、あいつが言っていたことは一人の人間としておかしい、と言う観が僕にぬぐい切れていない。いったん、距離を置いて考えた方が良さそうだ。

 フレイジャーは黙って僕の話を聞いて、それでこう言った。

『…………ふう、どう言ったらいいか。でも、あなたがちゃんと言ってくれたおかげで彼女自身も新しい感情が生まれたことは間違いないと思う。自分に対する内省の感情をね。それで彼女自身の成長を伸ばせると思うの。あなたがいてくれたおかげで。だから、私は感謝をしているし、もし、あなたが彼女と仲直りしたいというなら私は協力してもいい。まあ、あなたが彼女の(うわさ)話を許せれば、だけど』

 そうフレイジャーはいった。僕はそのフレイジャーの言葉になんだかびっくりした。フレイジャーはもっとクールで人のことには干渉しないと思っていたから、そんなことを言うなんて驚いた(おどろいた)のだ。

「ああ、ありがとうフレイジャー。分かったよ、仲直りしたいときには言うから、心配しないでくれ」

『ええ、そうね。今日は私の用件につきあってくれてありがとう。それじゃあ、仲直りしたいときには言ってちょうだい』

「ああ、さよなら」

 それで電話が切れた。フレイジャーがそんなに僕たちのことを心配してくれるとは意外だった。僕はふと窓を開けて満月を見る。満月は広く黄色い光を放っていた。





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