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アタタカイヤミ 52

 早朝の清新たる時間の中、僕たちは瀬野駅に着いた。

「じゃあ、私らはここら辺でおいとまするわね」

「ああ、そうだな」

 そして、こう真部たちは言った。まあ、そういう約束だからな。

「え〜、一緒に行こうよ〜、リンちゃん。それに光も〜。一緒に行こうよ〜」

 しかし、案の定これに寺島さんがだだをこねた。

「ほら、寺島さん、だだこねない。二人にも予定があるんだから、迷惑をかけてはいけない。さ、行くよ」

「え〜」

 それでぼくは寺島さんの裾を引っフレイジャーって駐輪場に行こうとした。しかし、寺島さんは抵抗する。子供が嫌々するように抵抗してきたのだ。

 これにフレイジャーもぼくを援護射撃(えんごしゃげき)するようにこう言った。

「美春。これはあなたたち二人の仲直りのためのイベントなんだから、二人で行動しなきゃ、意味ないでしょう?私たちが行っても私たち同士が遊んで、それであなたたちの仲直りができなければ、どうしようもないわ。だから、二人で行ってくれなきゃ困るわ」

「その通りだ」

 これには真部も口を出した。

「俺たちがお膳立て(おぜんだて)をしても、それに守られる関係は脆弱(ぜいじゃく)だ。やっぱり、最後は二人自身の力で関係は修復した方がいい。それが健全な関係につながる。だから俺たちは二人の関係の手助けははしない。それにこっちも笹原の言うように用事があるからな。だから、二人だけでがんばれよ」

 そう言って、真部は来た道へ戻るべくターンをした。

「じゃあ、美春。がんばってね」

「リンちゃ〜ん」

 フレイジャーもターンをして、真部と一緒に帰っていった。ぼくはしょげかえっている寺島さんにこう言った。

「さ、二人もああ、言ってたわけだし。行くよ、寺島さん」

「は〜い」

 渋々(しぶしぶ)ながらも何とかついてきた寺島さんと一緒にぼくは駐輪場に向かった。あとは無事、このイベントを成功させるだけだ。ぼくはそう思った。




 がたんごとん、がたんごとん。

 寺島さんと二人で電車に揺らされながら、ぼくは寺島さんに今後の予定を言う。

「寺島さん、今日の予定を言います。まず、岡山駅に着いたら、バス乗り場に行って、後楽園行きのバスに乗ります。今は9時半だから向こうには10時20分頃には到着するだろう。そこで1時間ぐらい散策して、帰りのバスで城下におります。城下の近くのイタリヤン店に行きます。そこで昼食を取って、シネマクレールに行き、15時に上映される映画を見ます。そのあと17時ぐらいになるから、メルパの近くにある、ゲームセンターに行って、遊んでそのあと帰る。今日の予定はこう言うものです。わかった?」

 こくり。

 寺島さんは頷いた。僕はそれを見て。

「よし、ならいいか。あとは今日はめいっぱい遊ぼう、寺島さん」

 そうぼくは明るく言ったが、寺島さんは……。

「うん」

 と、こくりと頷いただけだった。

 ぼくはまだ仲直りに乗り気ではない、寺島さんを見て肩に石が乗っかったような重荷を感じた。まだ、仲直りする気はないのか。というより、これからのことを考えるとクラゲでにもなったような倦怠感(けんたいかん)を感じる。体が弛緩(しかん)してとにかくだるい。

 しかし、それをぼくはたたいてへこませる。何とか、このイベントを成功させないとな。

「ああ、あと、映画なんだけど、今ある映画って、メルバの『海蛸(うみたこ)』か、シネマクレールの『ローラーファイト』か、どちらがいい?。ちなみに『海蛸(うみたこ)』が感動ものみたいだし、『ローラー』は一人の少女の成長物語、かな?」

 寺島さんはふふ、と微笑みを見せた。それはよく女性がする、人を幼子に例えて、自分は上から見てダメな子を笑うという、あの笑みだった。

「どうしたの、寺島さん?」

「ふふ、何でもないよ」

 そう言って、寺島さんがふふ、と笑っていた。

「あ、私、これにする。『ローラーガールズダイヤリー』」

「うん、わかった。それは15時20分開演だから、後楽園には少し長い時間いられるか?と、まあ、そんなところで、寺島さん」

 改めてぼくが言うと、寺島さんがいきなり改まった空気になったことでびっくりしているようだった。それに構わず、ぼくは言う。

「今日は一日よろしく。二人で一緒に楽しめるイベントにしよう」

 そう言ってぼくは寺島さんに手を差し出した。寺島さんはぼくと手を交互に見ていたが、やがて得心したように頷き、微笑んで(ほほえんで)こう言った。

「うん、こちらこそ、よろしく笹原君」

 そして、僕たちは朝の燦々(さんさん)とした光の大翼の中で握手をした。




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