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アタタカイヤミ 50

 時雨(しぐれ)の気候が僕たちを閑静(かんせい)とさせる。僕たちは学校に着くとグラウンドに集合させられ。そこから波田(はた)さんの家に移動した。波田(はた)さんの家は瀬野町旭が丘にあるのだ。


 そこへ僕たちはバスを使って移動して、波田(はた)さんの家に行った。

 波田(はた)さんの家は今風の建物の一軒家で壁の外装が白色に塗られていただろうと思うが、今は灰色にくすんでいた。

 まず、先生が僕たちを家の前に足させて、教頭先生と一緒に中に入っていった。そのとき。


 風が聞こえた。風と言ってもそれは自分たちは進んでくれる風ではなかった。洞窟の隙間(すきま)からすごい強風が、ぉぉぉぉぉという風に猛っていることが遠くにいてもわかった。

 かんがえてみればがぼくが聞いた最初の人の慟哭(どうこく)だったかもしれない。遠くからではその全容はわからなかったけど、その怒りはよくわかった。

 クラスのみんなは静かだった。さすがにみんなも緊張をしているようだった。

 その時間は短かったのか、長かったのか僕にはよくわからない。ただ、糸を張り詰めているように、何か周りの状況を張り詰めながら観察していたのだ。正直言って、それがどのくらいの時間なのかよくわからなかった。

 しかし、三枝先生は出てきて、僕たちにこう言った。

「みんな、よく聞いてもらいたいんだけど、家に入ったら、遺影におじぎをしてそれで帰って欲しいの。わかった、みんな?」

 それに僕たちは頷いた。それでやっと三枝先生は安心したように安堵の吐息を漏らす。

 そして、今度は教頭先生が言う。

「さ、おまえ達、中に入るんだ。くれぐれも粗相(そそう)のないようにな」

 それで僕たちは家に入っていく。ぼくはみんなのあとをついていく。まず、はじめのグループが入っていく、それでそのグループが出終わったときに、次のグループが入る。そのグループは4,5人ずつ入っていくのだ。

 それがどんどん行われていった。ぼくはその中で傘を持っていたとはいえ、時雨(しぐれ)雨に打たれながら、手と足が暗い冷気にじわじわと冷やされて、体の震えが少しずつ出てきたのだった。


「はい、次のグループ」

 三枝先生の言葉で気づいた。もうぼくはこの集団の先頭に立っていたことを。それで移動する。

 玄関に到着した。そこに行くと柳が泣くようなすすり声が聞こえる。僕たちはそのすすり声に向けて歩き出す。玄関から正面に行き、左側に一つの扉を見つける。ぼくの前を歩いていた長道君がその扉を開けた。そうすると………。

 そこに遺影と泣いている女性と、そしてこちらをにらみつけてくる中年の男性に出会った。

 特に髪がはげかかった一人の男性がこちら射殺せるほどにらみつけてきた。僕たちは家に頭を下げて、狭い道に逃げ込むネズミみたいにこそこそと去っていった。




 これで僕たちは波田(はた)さんの家に行った。その帰り道はもう、別に書くほどのことではない。みんなぐったりしていた。

 いや、違う。フレイジャーだけはぐったりしてなかった。別にこれと言って平静な状態でいた。

 ぼくはそれを見てこいつは何を思っているんだろうな、と思った。

 あんな、葬式があったのに、こいつは何事もないような平然な表情をしている。僕はそのときウジ虫のような暗い炎を心の奥底でくすぶりさせながらフレイジャーを見た。そして暗い炎をさらに大きくした。

 でも、そういう炎を燃やすことはやめて座席にもたれかかって天を仰いだ。

 はぁ、今日は疲れた。まともに謝らずに終わったしまった。これで良かったのか?

 そういうことを考えながら僕は目をつむった。だが、そんななかで脳裏には疑心(ぎしん)の鐘がいつまでも鳴り響いていた。




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