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アタタカイヤミ 47

 僕たちは会計を済ましてキューブから出て行った。さすがに八人ともなると金額がすごかった。でも平日と言うこともあって、一人一人だと何とか払える額だ。まあ、何はともあれ、終わった。いや、終わっていない、ぼくの中ではちっともこの事件は終わっていない。

 もし、波田(はた)さんが自殺をすればどうなるんだろうか?そのことを聞いた瞬間からぼくの生活の根本が変わってしまうだろう。

 魔の時間の始まりである夕刻を見ながらぼくはそう思った。

 まあ、そう思っても、今は家に帰ろう。そう思い、ぼくは駐輪場と呼べないほど、小さな自転車置き場に自分の自転車を取ろうとした。

 それで見るとぼくの自転車のそばに寺島さんの自転車があった。ぼくの自転車の左側にあるのだな。ぼくは普通に取ろうとしたが、しかし、ぼくが前に出るよりもイタチのようにすばしっこい影がぼくの前を横切る。

 しゅた!しゅたたた!

「やあ、今日はありがと、ねぇ、みんな。今日は楽しかったよ」

「私たちも楽しかったよ、美春ちゃん。また今度もいっぱいおしゃべりしようね」

「うん、そうだね。やっぱり友だちは女性同士に限るね。どこかの偏狭(へんきょう)な男子じゃあ、やっぱり友だちにはなれないよ」

 イタチはおしゃべりな(たぬき)と一緒に帰って行った。

「ねえ、笹原。あなた美春とけんかしたの?」

 さっきの美春の行動を見ていた、フレイジャーがそう聞いてくる。ぼくは考えるが、何だろう、最近波田(はた)さんのことしか考えてなかったから、何かあったか?

「あ!ああ」

 思い出した。そういえば、(うわさ)のことでちょっと言い合いをしたな。

「思い出した?」

 フレイジャーがぼくの目をのぞき込むように聞いてきた。

「ああ、思い出したよ。そういえば、ちょっと言い争いみたいな物をした」

「ふ〜ん」

 ぼくがそう言うと、フレイジャーはいつもみたいに眼を細めて、冷静な観察眼を持ってぼくを見てきた。

 それでまたフレイジャーには似合わず、少し口ごもるようなことをしながらこう言ってきた。

「ねえ、笹原。あなたにお願いがあるんだけど、美春のことなんだけど、彼女と仲直りして欲しいのよ。なぜかって言えば、口に出すのは難しいけど、美春にとってあなたが必要だと思うから仲直りして欲しいの。


 美春にとってあなたは必要な存在だわ。美春には男友達がいるし、真部もいるけど、でも、あなたが必要なのよ。美春にとってほかの男友達はそんなに仲良くないし、真部は幼なじみだし。幼なじみってそれはそれでいいのだけれど、でも長年一緒にいる分、お互いのことがわかっているからダメなのよ。


 それだと、美春にとって新しい他者との出会いではないわ。幼少の頃から知ってる幼なじみもそれでいいのだけど、あの子のさらなる成長のために恋人ではない、新しい、ほかの男友達が必要なの。笹原君。だから、あなたには美春の友だちになって欲しいのよ。お願いできるかしら?」

 そうフレイジャーは言ってきた。なんだか意外だった。フレイジャーがそんな風に友だちのことを気にかけるなんて。

「俺からも頼むよ」

 今度は真部もそう言ってくる。

「美春には長年つきあってきてるけど、あいつにも、違う男の友だちが必要だ。やっぱり、同姓だけでつきあっていくと視野が狭くなるからな。フレイジャーが言ったとおり俺たちだと何でもわかるから新しい発見はないんだ。


 だから、おまえが必要なんだ。今回のことでもだいぶ美春が自分とは違う考えを持つ人にだいぶ揺らいでいるからな。こう言うことはこれっきりにするんではなくて、もっと長い時間にあいつを揺らす必要があると思うんだ。だから、友人にやってくれ」

 そう言って、真部はぼくの肩をぽんとたたいた。真部とフレイジャーの言いたいこともわかった。ただ………。

 ただ、ぼくには波田(はた)さんについても考えなくてはいけない。寺島さんだけに構ってはいけないのだ。

 ふと空を見ると、ドス黒い闇が自分の光をどこまでも吸い込んでいた。




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