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アタタカイヤミ 30

「よかったね!」

「ああ、確かに」

 僕は肯いた。一を狙撃した犯人の追跡、逮捕などはあったが、やがて釈放された犯人をほうの手で寄らず自分たちの力で倒す姿は圧倒された。

 この話にだいたいみんなも満足していた。じゃあ、そろそろ帰るかな。

「じゃあ、真部、そろそろ帰るわ。僕ら」

「ああ、そうだな。また来いよ」

 そして、僕らは帰りの支度をして真部の家から出て行った。

「さようなら、真部。また来るよ」

「さようなら、今日の賑やかな時間は忘れないわ」

「さよならっす!また、明日この家に集合ね、みんな!」

 その言葉にみんなが肯いた。また、ここでみんな集合。それは甘美な響きだった。漫画やアニメで友人同士で集まる時間を確認するということは長年の夢でも合ったが、実現できるとは思わないことでもあった。だから、こんな甘い(なし)のような甘美な時間を過ごせるとは思うことはできなかった。

「じゃあ、みんな気をつけて帰れよ」

 それにみんなが肯いた。そして、僕達は思い思いに真部の家の玄関をくぐっ家路についた。




「うい〜す、今日もコーラはうまいね〜」

 そんなことをいいながら寺島さんはコーラを飲んでいた。今日は7月29日。僕たちがこつこつやってきた勉強もこれで最後になった。そのお疲れ会と明日から何をして遊ぶかで僕たちはこうして集まった、はずだ。しかし、寺島さんはそんな事情を覚えているか疑問に覚えているほど端から見て、はしゃいでいた。

「飲んでるな、美春」

「おーす、そりゃ飲みますよ。やっと、これで勉強が解放されたんだもん。これは祝杯でしょう」

 真部の言葉に寺島さんは飲んだくれ親父のような回答をする。このまま、飲み会みたいなのりになるかと思いきや、やはりフレイジャーと真部は冷静だったようで今後のことを話し合った。

「それじゃあ、次回のことはどうする?」

「そうね、私は特にこれがやりたいというのはないけど…………」

 そうやって二人の話に加わろうとすると、ぼくの所へ、寺島さんがよってきた。

「寂しいね、笹原君」

「何が?」

 いったい何を言ってるんだ?寺島さんは捨てられた子犬のような目でこちらを見ながら、こんなことを言ってきた。

「私たち、おばか二人組じゃあ会話に加われないよ」

「寺島さんが馬鹿なんて、そんなことないよ。だって成績いいじゃない」

 そう言うと寺島さんは穏やかな目をした、おとなしめの寺島さんになってこう言った。

「ありがとう、笹原君。笹原君は優しいね」

「よしてよ。そんなことないよ」

 思わず照れてしまった。だけど、実際に言われると何だろうすごくむずかゆい気分に襲われるのだ。

「ううん、そんなことない。笹原君は優しいよ。だから………」

「?だから?」

 いったいこの台詞(せりふ)のあと、何を接続するのだろう。寺島さんは優しげな目をしていたが、次の台詞(せりふ)でぶっ飛んだことを言い放った。

「持久戦、コーラ一気のみをしよう!」

「何だ、それは!」

「説明しよう。コーラ一気のみとはそれぞれ同じグラスにコーラを注いで一気のみをします。それでげっぷを早くした人のほうが負けるという物です!」

 ぼくの疑問を答えず、寺島さんはゲームとかアニメとかで登場するような説明をする変な人のように一気に説明をした。

「えーと、それしなくちゃあならないの?」

「もちろん!え〜、これは優しい笹原君は絶対に参加しないといけません。別に参加しなくてもいいけど、私の辞書の中では参加がもう決定されていますからね!」

 寺島さんはぼくのためらいがちな異議をばっさり切り捨てた。

「さあ!笹原君!男ならこれに挑戦しなさい!」

「そ、そう言われても……」

 ぼくはためらった、こういう会話をしたことがないのでぼくは戸惑ってしまった。どう言えばいいんだ?

「どうした?笹原一樹!チャンピオンだったおまえが逃げるなんて、見損なったぞ!」

 ぼくがしどろもどろになってるうちに、寺島さんはこんなことを言い出した。そして、フレイジャーと真部もこっちが何かをしていることに気づいた。

「え、え?」

「岡山の虎と言われたおまえがこんなところで逃げるだなんて。それではおまえを信じていたファンはどうなる?そして、おまえの背中を見て育った息子になんて言うんだ!」

「そうそう、そうだわ」

 僕たちの話にギャラリーも乗ってきた。

「魔神グリチャシフを倒したあなたが逃げるなんて、そんなの末代までの恥だわ」

「そうそう」

 真部も乗ってきた。

「魔術師、魔木真一郎のあの熱きバトルは今も目に焼き付いて離れない。そんな君が逃げてどうする?どんな敵でもたたきつぶすというのが岡山の虎、笹原一樹ではなかったのか?いや、むしろたたきつぶせ」

「そうそう、これで逃げたらチキンやろうと呼ぶぞ!笹原一樹!」

 ぼくに向かってびしっと指を指して、寺島さんは言った。寺島さんの目はもうノリノリでこう言う役を演じているのが見て取れた。

 しかたない。

「よーし、やってやろうじゃないか!その、コーラのみ!負けたらあとで缶コーヒーをおごること!」

「おー!いいね。望むところだ。よーし、物を出せ!」

「了解」

 フレイジャーがコップを取り出す。そしてフレイジャーがそのコップにコーラを注いだ。

「よ〜し、用意はいいか?チャンピオンの座も今日限りだぜ、岡山の虎!」

「ああ。じゃあ、真部、開始の合図をしてくれ」

「ああ、わかった」

 真部はそれを了承してくれた。

 それで僕たちはコップを持ったら真部が二人の間に座り手を上に上げ言った。

「レディー」

 ぼくと寺島さんはにらみ合う。冷房が効いた部屋の中、しかし心なしに背中に熱を帯び、それがコップの中にも伝わったのか、氷がかこんと沈んだ。

「ゴー!」

 ごくごく!

 一気に飲む。それで机にコップを同時に置いた。

「おおー。二人ともいい飲みっぷりじゃない」

 そのあとフレイジャーがコーラを注ぐ。結露をまとったコップが自分の青春を発散している風に見えた。

 そして、自分の体も異変が起きていた。胃がごろごろする。本来ぼくは胃が強くないのでコーラなんて飲んだら、二口、三口でげっぷをしてしまうのだ。それが今は一気飲みという無茶なことをした物だからおなかの中が大変なことになっている。

「お、おい、そろそろ、ギブアップ、しないのか?あれだけ、早く飲んだら、きついだろう?」

 ぼくが途切れ途切れに言うと寺島さんも途切れ途切れに返した。

「な、何の、これしき。それより、岡山の虎よ、こんな初戦でこうまでダメージを受けているのか、地に落ちた物よの。老いには勝てぬか。……っ!…………」

 寺島さんは台詞(せりふ)のあとに口を押さえた。寺島さん………。

 寺島さんも強くなきゃ、やらなきゃいいのに。

 でも、そうは思いつつ、強くないのにこれをする。寺島さんもすてきだな、と思いつつあった。

「はい、注いだわよ」

 フレイジャーがグラスにコーラを注いだ。僕たちはそのコップを持った。真部が間立てをあげる。コップが大量に汗をかきながらその青春を燃やしている。

「ゴー!」

 真部が手を下ろす。僕たちは一気にコーラを飲んだ!

「っ!」

 コーラを飲んでまず、体が異変を感じた。これまでは2匹の犬が争っていたのが一気に10頭ぐらいの犬が大乱闘をしている風に胃が暴れていた。必死に押さえ込もうとしているが、ダメだった。このまま、放っておくとまずいことが起きるという体の信号を感じてしまったのだ。

「げぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!、ぷ」

 ぼくがたまらず、げっぷをすると、寺島さんもすぐにげっぷをした。

「げぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!ぷ!見た!みんな、見た!私、笹原君に勝ったよ!」

 寺島さんは両手をVの時に上に上げてガッツポーズをして、すごくはしゃぎ回った。

「よかったな、美春」

「うん。よかった〜!」

 寺島さんは満面の笑みで答える。ぼくはげっぷをしてもまだ、何か蛇が這いずり回っているような、そんな感じをおなかに感じた。

「岡山の虎、初めての黒星。これをどういう風に説明しますか?どうして負けたのですか?」

 フレイジャーがエアマイクを持ってこっちに話しかけてくる。

「え?敗因?ああ、あれだね。病床に倒れている妻を思うとどうも身が入らなくて」

 ぼくは、そう言った。もう何でもいいから口にした。

「そうですか、病床の妻を思いましたか、それは負けるはずです。それで虎、これからどうしますか?」

「そうですね。引退でもして解説員としてテレビにでも働きますかね」

 そんなことを言うとみんなが爆笑した。自分でも、こういう風に人を笑わせることができるのかと思うとなんだか不思議な気分に襲われた。

 




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